男子スカートプロジェクト【スカートを履いた幼馴染】

『スカートを履いた幼馴染』より。

 https://kakuyomu.jp/works/16816700429263276544



 ボクの名前は市原舞人。幼馴染みの彩からは、マイちゃんって呼ばれている。


 そんなボクは今日も、スカートを履いて中学校へと通う。

 スカートを履いてるってことは、女子なのかって? 

 ううん、違うよ。正真正銘男の子。スカートを履いているのは、デザインが好きだからだよ。だって可愛いじゃない。


 男なのにスカートを履くのは変だって言ってくる人もいるけど、良いじゃない。

 ボクは好きな服を着てるだけ。誰にも迷惑なんて、かけてないんだしさ。

 それにね、便利な時もあるんだよ。



 それは暑い暑い夏の、昼休みのこと。


「あぢー。マジ死ぬー」

「今すぐプールにでも飛び込みたいー」


 クラスの男子が数人、暑さでへばっている。

 確かに今日は暑いよね。


 するとその中の一人が、ボクに声をかけてきた。


「なあ市原、スカートってどんな感じだ?」

「えっ? どんなってそりゃあ、ヒラヒラしてるけど……」

「ズボンより涼しいか?」

「まあたぶん、ズボンよりは」


 スカートだと下が開いてるから、風通しが良い。

 対してズボンだと、中に熱がこもっちゃうからね。


 ためしにスカートをバサバサとはためかせてみたけど、風が通って気持ちがいいや。


「やめろ。お前がスカートをバサバサやると、変な感じがする。俺が何かに目覚めちまったらどうするんだ!」

「何かって?」

「それは……どうでもいいんだよそんなこと! けど今なら、お前がスカート履く気持ちもわかるわー」

「別に暑さ対策で履いてるわけじゃないけどね。けど確かにズボンよりは涼しいし、みんなも履いたら?」

「バカ野郎。お前はともかく、男がスカートなんてそうそう履けるか」

「そうかな。普通に男性が履いてるくにもあるし、日本でもみんなが履くようになれば、違和感もすぐに消えると思うけど。そのうちクールビズの、定番になるかもよ」

「そんなわけ……いや、意外とあるかもな。そんな未来、ちょっと来てほしいかも」


 あ、ちょっと心が動いてる。

 もし本当にそんな未来がくるなら、ボクだって大歓迎だ。


 すると、他の男子が口をはさむ。


「けどよう、逆に冬は寒くならないか?」

「その時は下にジャージでも履けば良いんじゃないの」

「それもそうか。冬に生足なんて出してると、見てるこっちが寒くなるしな」

「俺だったら絶対ジャージ履く。けど状況に応じてジャージも履けるなら、スカートって結構便利かもな」


 お、だんだんとこっち側に傾いてきてる。


 このままもっと素直になれば、男子が普通にスカートを履くようになるのも、そう先の話じゃないかもしれない。


 なんて思っていたけど。別の男子が、話に加わってくる。


「けどよう。やっぱ男がスカート履いても、気持ち悪くないか? 脛毛とあるし」

「そんなの処理すればいいじゃない。ボクの足を見てみなよ」

「やめろ、いくらお前がかわいくても、男の生足なんて見せるな。やっぱり見るなら、女子だよな」


 そんなことを言いながら、彼は横を向く。

 そしてその視線の先にいたのは……げ、彩だ!


 そこにいたのは、幼馴染の彩。

 彩も暑いのか、スカートが若干短い気がする。

 そしてそこからは、すらりとした足がのびていた。


「やっぱり男子より女子……ぎゃあっ!?」

「彩を変な目で見ないでよ!」

「うおーっ! 目、目がー!」


 彩を見ていた邪な目を、指でブスリ。まったく、油断も隙もあったもんじゃない。


 夏はズボンよりスカートの方が涼しくて良いけど、好きな女の子が無防備になっちゃうのは、考えものだなあ。


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