火村悟里の、異世界トリップ報告。【幽霊祓いが飯の種。祓い屋OL、火村悟里の事件簿】

『幽霊祓いが飯の種。祓い屋OL、火村悟里の事件簿』より。

 https://kakuyomu.jp/works/16816700427292309818



 このお話は先日、タカナシさん、肥前ロンズさん、紅掛天音さん、兄と一緒にやったTRPGのその後の話となっています。

 簡単に説明しますと、異世界に召喚された悟里さんが仲間と協力して敵をやっつけるというストーリーでした。


 なんやかんやあって敵を倒し、異世界から帰ってきた悟里さんが、家に帰った所からスタートです。



 ◇◆◇◆




 ちょっと外に出ただけでも汗だくになる、暑い夏の日の夜。

 あたし、火村悟里は愛の巣、もといダーリンの待つアパートへと帰宅した。


「ダーリンただいまー!」

「悟里さん、ずいぶん遅かったですね。電話しても繋がりませんでしたし、心配しましたよ」

「ごめんごめん。今日はちょっと……いや、だいぶすごい事件に巻き込まれてね」

「すごい事件? 悟里さんがそう言うくらいですから、相当なものだったのでしょうね。いったい何があったんですか?」


 お、聞いてくれる?

 あたしはリビングへと移動して、ダーリンが用意してくれた麦茶を飲みながら、話始める。


「今日は子分のカッパと一緒に海に行って、海坊主と船幽霊の連合軍と戦ったんだけどさあ」

「それは、幽霊や妖怪が大渋滞していますね。そりゃあ大変だったのも頷けます」

「いや、それが問題なのは、そいつらをやっつけた後なのよ。倒したと思ったら突然光の玉が現れて吸い込まれ、気がついたら異世界トリップしてたの」

「異世界トリップ? 漫画やラノベである、アレですか?」


 そうなの。

 気がついたら見知らぬ部屋に閉じ込められていたんだから、驚いたわ。


「女装したクレリックの男の娘や、背は低いけど渋い顔したイケオジも、あたしと同じように部屋に閉じ込められていたわね」

「渋い顔したイケオジ、ですか」

「やだもうダーリンってば、そんな面白くなさそうな顔しないでよ。確かにイケオジではあったけど、あたしはダーリン一筋なんだから♡」

「悟里さん……。すみません、ついヤキモチ妬いてしまいました」


 いいっていいって。ヤキモチ妬くダーリンも、可愛くて素敵だもん。


「あと他に、あたしと同じくこの世界から召喚された子もいたよ。『黄昏堂』っていう、あたし達祓い屋と似たような組織、退治屋に所属している子。で、部屋から脱出したあたしはそいつらと一緒に、閉じ込めた不届き者を、懲らしめることにしたの」

「祓い屋に退治屋に、男の娘にイケオジですか。個性豊かなパーティーですね」

「あたし達がいたのは広い館で、あれこれ調べながら探検してたんだけど、閉じ込めたやつはあたしらを、生贄にしようとしてるって事がわかったの」

「生贄!?」


 まあ、驚くよね。

 けど安心して。今あたしがここにいることからも分かるように、無事だったから。


「生贄にしようとしてたやつ、教授とか言ってたかな。そいつはあたし達の命を捧げて、どっかの神様を呼び出そうとしてたの。神様の名前は『なろう』……じゃない、ナーロって言ったかな」

「とんでもないやつですね」

「激しい戦いだったけど、カクヨム教ってところのトリ神様が力を貸してくれて、何とか勝利を納めたってわけ。ああ、でもあのアホ教授に、除霊キックを食らわせ損ねたのが悔やまれるわ」

「助かっただけ良いじゃないですか。けど異世界トリップなんて、本当にあるんですか?」


 あ、ひょっとして、信じてない?


「嘘じゃないって。ほら、これが証拠。パーティー組んでた人達から、別れ際に貰った物よ」

「これは……女の子のフィギュアに、糸ですか?」

「なんでもそのフィギュアは、あの世界の聖女らしいよ。で、その糸には霊力が込められている。例の退治屋の子から貰ったの」

「信じますよ。悟里さんが嘘をつくわけないですからね」


 そう言って、優しく微笑み掛けてくる。

 さっすがダーリン、わかってる。


「もしかしたらアイツらとは、いずれまた会うこともあるかもね。けど、さすがに今日は疲れたわ」

「お疲れ様です。お風呂入れておきますから、ゆっくりしてください」

「ん、ありがとう」


 湯に浸かって、疲れを取ろう。

 て、思ったけど。


「それとも……一緒に入ります?」

「入る!」


 ダーリンってば、あたしが断らないって分かってて聞いたな。

 もう、イジワルなんだから♡


 ん、余計に疲れないかって?

 大丈夫。あたしは若いから、ちょっとくらい平気だって。


 と言うわけで、あたしは昼間の大事件なんて忘れて、ダーリンと甘い夜を過ごすのだった。

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