こころの窓ですねん 🪟

上月くるを

こころの窓ですねん 🪟




 ヤッベッ!(/・ω・)/

 またやっちまった~。


 斜向かいのボックス席の若いカップルが、交互に意味ありげな視線を送って来る。

 女性になにか囁かれた男性の方なんか、わざわざこちらに首をめぐらせ、ニヤッ。


 メイコが自分の世界に没入しているとき、しばしば自然発生的に起こる現象だ。

 その気はまったくないのに、だれかの顔を、穴のあくほど凝視しているらしい。



 

      ☕




 自分には変わった癖があることを思い知らされたのは、中学一年の夏休みだった。

 駅の自転車置き場の付近を歩いていたら、ガラのわるい男子高校生にスゴマレタ。



 ――おい、おまえ、おれのツラに、なんかついてんのかよっ?!"(-""-)"



 正直、脂ぎったニキビ面なんぞに一片の興味もなかったので、ただただ驚愕した。

 それからだれかの顔を見ることに恐れを抱くようになり、うつむいてばかりいた。




      🚴




 ときは流れ(どんだけ~(笑))三十代後半ぐらいのこと。

 メイコは夫と共に起業した土産品卸業の専務取締役だった。


 折からの観光ブームで事業は順調に展開し、営業を中心に社員が増えていったが、夫の趣味が若いパート主婦の品定めにあることには、迂闊にも気づいていなかった。



 ――社長の誘いに応えたいけど、専務のあの目が怖くて……。( *´艸`)



 そんなことを言っている主婦がいると耳打ちされたときの衝撃、いまも生々しい。

 十数人に増えたパート間にヘンな競争意識が芽生えていたこともショックだった。




      🦃




 さらにときは流れ(どんだけ~(笑))、観光ブームが去って事業が傾くと、莫大な負債を残して夫は出て行き、十数年かけて借金を完済したメイコは事業を畳んだ。


 初老と呼ばれる齢に至ったメイコは、サービス笑顔や愛想とすっぱり縁をきった。

 心の底から大切な、愛しくてたまらない人たちのために微笑みを出し惜しみする。


 仕事時代、存分にイタブッテくれた人たちに出会うと、ぐいっと顎を持ち上げる。

 一歩も引かない双眸は猛禽のそれのように尖っているはず。おおコワッ!!(笑)

 

 

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