みんなとは違う
オウヅキ
第1話 みんなとは違う
道
家から目的地までは歩いて十分。
土日にこの道を歩いても何も思わないけど、今は別だ。
行きたくない。そう思っても、行かないなんて選択肢は選べない。
早く歩かないと遅刻するけど、早く歩いていくことは、どうしてもできなかった。
私の横を自転車が通る。横並びで二台。
私と同じ制服を着た彼女たちは、自転車をこぎ、明るく笑いながら通りすぎていく。
その眩しさに、私は目を細める。
いいな。と思う。
友達という存在がいる人たちは、学校というところに喜んでいける人たちは、私とは違う人種だ。
信号が赤になって、信号待ちをする。同じく信号待ちをしているスーツを着た男の人は、顔に疲れが出ている。
私と同じように、会社に行きたくないって思ってたりするのかな?
信号が青になる。横断歩道を渡っていると、まっすぐな目をした男の人とすれ違う。
楽しそうにしているわけではないけど、充実した人生を送ってきた人しかしないような表情をしているように感じられた。
反対側の歩道、私と同じ学校の制服を着た男の子が信号待ちをしている。彼の顔とかはあまりよく見えないけど、彼が辛そうな雰囲気を出しているのは感じ取れた。
少し嬉しい気分になる。私と同じように学校が嫌いな人がいる。それだけで、少しだけ心が軽くなった。
学校の門付近、近づくにつれて雑音がどんどんひどくなる。
生徒たちの笑い声、話し声。
少しだけであれ軽くなった心は、すぐに黒くぬりつぶされていく。
私よりもバカなくせに。私よりも価値がない人間なくせに。
そう心の中で呟く。
「あっ、あの、これ、落ちましたよ」
門の前、声をかけられて振り向くと、さっき信号待ちをしていた男の子がいた。
緊張しているのか顔がこわばっている。
「ありがと!ねぇ、あなた名前はなんていうの?お礼したいから、良かったら教えて欲しいんだけど」
ちょうどいい。この子と学校で話すことができるようになれば、他の人の目もきっと変わるだろう。ワースト最下位っていう感じの子なのがネックだけど。
「え、あいえ、そんな、ただ物拾っただけですし」
男の子は軽く動揺する。その顔には動揺と同時に期待が見える。私と友達になるチャンスだと思っているのだろう。
「あーあ、かわいそうに」
同じクラスの女子数人が私たちの近くにくる。
「目つけられちゃってるじゃん。あの男の子」
「ねー、かわいそう」
聞こえてないと思っているのか、聞こえてもいいと思っているのか、くすくすと笑いながら彼女たちは通りすぎる。
なんなのあいつら。男の子がかわいそうって何それ?私と友達になれればこの子だって嬉しいだろうに、なにがかわいそうなの。集団でしか行動できないやつらのくせして。
気分悪い。
「ねぇ、一緒に校舎行こ」
腕を掴んで、男の子と一緒に校舎に向かう。
気分悪いけど、とりあえずちょうど良い子がいてよかった。これから少しだけ、少しだけだけど学校行くの楽しくなりそう。
みんなとは違う オウヅキ @sakuranotuki
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