第009話 機核欠乏症《きかくけつぼうしょう》
「ラ、ライナ…!」
倒れる相棒にカズキは手を伸ばした。
けれど指先すら届かない。
その間にも
まるで死を運び来るかのよう。
白い腕がカズキ目掛けて振り上げられた。
跳ね上がる心臓。
足の裏から血液が這い上る。
沸き上がる負の感情が心と体を鈍らせる。
「う……ぅあああああああああ!!」
耳を劈く咆哮と共にカズキは右手の
宙を舞う
全身に宿る
蒼い手甲が光を湛えると同時に落下が始まった。
そして
――ドゴォオッ‼
拳が、
輝く
腰が抜けたのか立つこともままならない。その場に座り込んだカズキは、気の抜けた様子で
すると見計らったように、
けれど誰一人、へたり込むカズキに声さえ掛けようとしない。
そんな中でスカイライナーだけがヒョコヒョコとカズキの傍に寄った。
「ライナ……ケガ、ないか?」
『グル』
「そうか……ゴメンな」
疲れ切った笑顔を浮かべ、カズキはスカイライナーを抱きしめた。
硬く冷たい金属の装甲が、頬に触れる。同じなのに違う感覚。
思い起こされる断片的な記憶が、締め付けるように胸を痛めた。
苦虫を噛み潰したように顔を顰めていると、不意に肩を叩かれる。
「大丈夫かい?」
振り返ると、
香水だろうか、上品な甘い香りが同時にカズキの鼻腔をくすぐる。
「すみません。俺、うまくやれなかった…」
「いや、上出来だよ。暴走した
「ダルいです。なんか頭もボーッとして…」
「だろうね」
嘆息混じりに微苦笑を浮かべ、
「
「そうですか……」
「いくら
とりあえず、学校に戻ったら直ぐに
陽気な
停止する
白い装甲に優しく手を触れたかと思えば、神妙な面持ちで額を触れ当てた。
「……ごめん」
苦虫を嚙み潰したようなカズキの横顔に、
「なぜ謝るんだい? キミはちゃんと
「でも、ケガさせたから……」
「怪我?」
「コイツ、痛かったと思います。俺がもっと、ちゃんと
「それは仕方ないことだよ。外科医だって手術の時には患者の体を切るし、看護師だって注射の時には針を刺す。私なんて、前に血液検査した時は2回も刺し直されたよ」
冗談交じりに肩をすかしてみせるも、カズキは何も答えなかった。表情に影を落としたまま、
「君のその優しさは美徳だよ。でも、理想と現実のギャップを嘆くなら技術を磨かないとね。
それにはまず体調が戻すこと。次に
「……はい」
答えながらもカズキは一層と背中を丸めた。
そんな彼の背中を強く叩いた
模型のように動かなくなった
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