陸
「分かってるね、莫迦弟子?」
咲と
「はい。燃えカスみたいに微弱ですが、確かに」
「お前さんの
「え、いいんですか?」
「ここまで派手にやっちまったンだ。もう誤差だよ」
「あ、あはは……本当、いつもいつもすみません」
「知ってるかい? 反省だけならサルでもできるんだ。見限られたくなけりゃ、行動で示しな」
師匠が千晶の左肩に触れる。
フロックコートを脱いだ千晶の、
「【
師匠が詠唱を始める。
千晶の左肩に装着された甲冑が、ふわりと輝きだす。
「【
甲冑がパタパタと開いていき、翼のようになる。
黒ずくめの千晶が、血のように真っ赤な片翼を背負う。
中から出てきたのは、病的に白い腕。健康的な千晶の顔や肌からは似ても似つかない、壊死しているかのような腕だ。
腕には、蛇が絡み合ったような、あるいは喰らい合っているような悪魔的な紋章が刻まれている。
「ギャハハッ!」
急に、甲冑が喋った。
「俺様の出番か!?」
「久しぶりですね、
「さ、行っておいで」
「はい」
焼け落ちた屋敷の奥へと、入っていく。
❖ ❖ ❖
(何なのだ何なノダ何ナのだアレは!?)
その
処女たちの悲鳴を集め、それを
そんな計画の途中で、如何にも美味しそうな処女がやって来たから、味見してやろうと一芝居打った。
それだけのはずだった。
それが何故、こんな。
胸を貫かれても死なない体。
『地獄のような』と表現するのも生易しい、灼熱の炎。
今まで何人もの
(アレは、人間じゃアなイ)
それにしても、このままでは
命からがら逃げることには成功したが、ヱ―テルを消耗しすぎていて、己の体はもはや消滅寸前である。
辛うじて少女のような姿を取っているが、よく見れば薄っすらと透けている。
(何か……何か喰えるモノはない!? この際、男でも構わないから――)
そのとき、
「それにしても、師匠は人使いが荒い……こんな死にかけの弟子にやらせず、ご自分でやれば良いでしょうに」
焼け落ちた屋敷の陰から、年若い男性がやって来た。
全身怪我をしているらしく、ひょっこりふらふらと歩いている。
(アイツは――アタシの可愛い息子たちを皆殺しにして
(よクも息子タちヲ……喰っテヤルゥゥゥゥゥウウウウウッ!!)
物陰から飛び出し、
「見ぃつけた」
男と目が合った。
途端、男の左腕が人体にあるまじき動きでのたうち、
「……え?」
蛇のようだった。
いや、蛇そのものだった。
男の左腕から生えた蛇が
「ギャァァアアアアアッ!?」
苦痛のあまり地面を転げ回っていると、今度は頭部に噛みつかれた。
「あ、悪魔め……」
目にいっぱいの涙を溜めて、
「悪魔?」
全身黒ずくめの男が、冷たく微笑む。
「懐かしい響きですね」
少女の視界が闇に覆われる。
少女の髪が、目が、耳が、鼻が、頭蓋が、脳が溶けていく。
『痛い』も『苦しい』も『怖い』も『悔しい』も何もかもが溶け果てて、後には無限の闇だけが残った。
明治のヱクソシスト 明治サブ🍆第27回スニーカー大賞金賞🍆🍆 @sub_sub
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