伍
(
千晶は焦る。
(拙い拙い拙い!)
咲が連れて行った少女――の姿をした
(このままでは死んでしまう――――……
「【
千晶は残存ヱ―テルの全てを込めて、防護結界を発動させた。
❖ ❖ ❖
「あはっ、あはハはハハっ!」
少女の姿をした
少女の額から、ヤギのようなねじれた二本のツノが生えてくる。
「上手くいった! 上手くイッタ! ――新鮮な処女の心臓よ!」
「…………アレ?」
心臓を喰い破ってから、気が付いた。
人間の心臓とは、こんなにも青白いものだっただろうか?
やけに左胸が痛い。
見れば自分の左胸が、真っ青な血で濡れている。
「……あ、コレ……私ノ心臓ダ――」
「――――コン」
背後で、鳴き声がした。
「
少女――
「――――
真っ赤に燃え上がる少女の瞳と、目が合った。
途端、赤黒いヱ―テルが暴風となってエントランスに吹き荒れる!
「ヒッ――」
ヱ―テルが灼熱の炎と化して、
❖ ❖ ❖
「けふっけふっ……」
気が付くと、咲は屋外で一人、座り込んでいた。
いや、屋外ではない。
自分の周囲だけ、石造りのタイルが残っている。それ以外は、屋敷だったらしきものの、燃えカスがあるだけ。
「あぁ……九尾狐のやつが出てきたのか」
見下ろせば、自分は全裸だった。
左胸がズキズキする。
触れると、確かな鼓動が返ってきた。
「また派手にやりましたねぇ」
「――!?」
背後から千晶の声が聴こえてきて、咲は縮こまる。
大慌てで髪を下ろし、背中を隠した。
「何はともあれお疲れ様です、咲」
「……服が燃えてしまった」
「ええ、屋敷ごとね」
千晶がフロックコートを肩にかけて
咲はコートをかき抱き、そっと匂いを嗅ぐ――が、血と硝煙の臭いしかしなくて、げんなりする。
「……その人たちは?」
肩を貸し合ってよろよろと歩く四人の女性たち。
「行方不明になっていた
「
空から、声が降ってきた。
とんがり帽子に真っ黒なローブ、箒――如何にも典型的『魔女』風の恰好をした童女が空から落ちてきて、綺麗に着地し、その箒で
「屋敷が!」ゴン!
「燃えて!」ゴン!
「なくなっちまったんだよ!?」ゴンゴンゴン!
「痛い! 痛いですって師匠!」
この見た目は五、六歳にしか見えない童女は、『東洋の魔女』とか『
千晶の師匠でもある。
「はぁ~……咲や、儂ゃこの
「え? でも――」
「咲、先に行ってライスカレーの大盛を頼んでおいてください」
「む。トッピングはどうする?」
「
「「――エビフライ!」」
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