第34話 おもてなし




トワイライトの崩壊から数週間後が経った。



今日はリタリー、コルネ、ミアナ、ミシェルの強い希望により、マルティナを送る会を催す日だ。


もちろん、相談された妾も大賛成で協力を買って出た。



しかし、トワイライト崩壊からの数週間は、ヴィクトルやトワイライトの使徒と名乗るものからの呼び出しが絶えず、今日まで送る会の準備ができずにいた。



まったく、トワイライトの復興やら、姫として戻って下さいだの、意味のわからない話をされて、えらく邪魔をされたわい。



ともかく、今は会の開催準備を急がねばならん。


料理はミシェルが用意しているし、後は会の中身を考えればよいのかのー?




『ダリア、会に必要なのは何じゃ?』

『はい、です。やはり、おもてなし、の心です』

『おもてなし??』



妾は頭の中で『人間マニュアル』を展開し、おもてなし、の意味を調べた。




▪️おもてなし

モテ要素がまるでないこと。

モテない男女の来賓者に対し、心を込めてサービスすること。




『こ、これは、も、もしや•••』


《ま、まずい、です。おもてなし、と、モテない、がごちゃ混ぜになってる、です》



妾は心がトキメクのを抑えられなかった。

これは、漫画で読んだアレに違いない。



『合コンなのだ!!』




妾は急いで出席者を確認した。

マルティナと特に仲の良かった騎士10人と、学生時代の友人10人。


男10

女10


完璧なる合コン、いや、おもてなし、ではないか!!



直ぐに会場である妾の家の外に大きな長方形のテーブルを亜空間から出す。

この大きさなら対面で座れるはずじゃ。




「あ、あの〜、リリーナ様。これは?」


会場の準備をしていた妾にミアナが訪ねてくる。


『おもてなし、じゃ!!』

《現実:おもてなち!!》


「おもてなち??」



ミアナは首を傾げると、横からリタリーが話しかけてきた。



「ミアナ、きっと、家の中ではなくて、外、表で送る会やりたいのだと思うわ」

「なるほど。さすがリタリー様。コルネ様とミシェルにも伝えてきますね」



ミアナが急いで家の中に入ると、今度は慌ただしくコルネとミシェルが外に出てきて、テーブルの設置や料理を運び出している。





それからマルティナを送る会の準備が殆ど終わった頃、参加者である騎士と友人20名が家を訪れてきた。



「リタリー様」


騎士達はリタリーを前にして、片膝をついた。



「もう、私は王妃ではないのよ。それに、今日の主役はマルティナだから」

「はい。マルティナ様は私のお手本となる優秀な騎士でした」

「そんなマルティナ様を送る会、呼んでいただき、嬉しいです」



騎士達は次々にリタリーに挨拶し、学生時代の友人達も同じように挨拶していた。



リタリーは庶民のくせに、意外と知り合いが多いのじゃな。



リタリーへの挨拶が終わると、今度は妾の所へ来て跪こうとしたため、それを慌てて止めると、強引に合コンテーブルに誘導した。



「これは、一体?」

「こういう手法の会なのでしょうか?」



向かい合って座る騎士と友人は、どことなく落ち着かない様子でキョロキョロしている。



ほう、ほう


初々しくて良いではないか




全員が着席したところで、グラスを手にしたリタリーがみんなの前に立ち、共に歩んだマルティナのことを話した。


リタリーの目からは涙が溢れ、会場からも啜り泣く声が聞こえた。



「すみません。私の大好きなマルティナのこととなると話が止まらなくて•••。まだまだ語り尽くせませんが、いったん乾杯したいと思います」



リタリーはグラスを掲げる。



「我が最愛の友に」


リタリーのその声に、参加者全員がグラスを掲げ、「乾杯」と言った。



乾杯が終わると、騎士は騎士達同士、友人は友人同士でマルティナとの思い出を一斉に話し始めた。




マルティナは、こんなにも愛されていたのだな。



妾は感慨に浸りながらも、おもてなし、を忘れてはいなかった。



乾杯から15分ほど経過した時、妾は合コンテーブルの真ん中に立った。




『席替えじゃ!!』

《現実:ちぇきがえ!!》


「り、リリーナ様?」



男女20人が首を傾げて妾を見てくる。



やれやれ

てれておるのだな



『お前は、そこ、お前は、あっち』

《現実:ちょこ、あっちぃ》




妾の適切な指示により、先程まで対面で座っていた男女が、隣同士に座る。


始め、戸惑いや照れなどから男女は顔を赤くし、下を向いていたが、『マルティナ』という共通の話題があることで、すぐに会話が盛り上がり始めた。



「えっ!?マルティナ様にそんな趣味が??」


「マルティナは、ああ見えてかわいい物が大好きで」


「マルティナ様がスカートを履いていた!?」


「マルティナは、困っている私を助けてくれて」



マルティナのことを話す騎士と友人は、時には笑い、時には泣いて、思い思いに語っている。



中々、良い雰囲気だ。







それにしても、人間とは笑ったり、泣いたり、怒ったり、本当に感情豊かな生き物だな。



お互い思ったり、助けたり、忙しくもある。





まぁ、そんな人間も悪くはないな。






もう少しだけ、人間を続けてみるかの。









★★★★ ★★★★ ご挨拶★★★★ ★★★★


本作を読んでいただき、ありがとうございました。


まだまだ書きたいストーリーはあったのですが、いったん、ここまでで終了したいと思います。



本当にありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神様より偉い悪神様の人間転移 〜付人が本棚を倒してしまい、人間マニュアルがごちゃまぜになったことを知らずに転移スタート〜 いそゆき @jamp0217

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ