第14話 団結
とうとう決戦の日を迎えてしまった。
武器(玩具)をなにも持たないわたしたちは
ただ逃げることしかできない。それか、早々に撃たれてリタイアするか。
「気休めにしかならないけれど。A組はーー」
いきなり誰かが言い始める。「勉強では中等部1なんだからね! みんな、気を強く持って戦闘に挑みましょう!!」
ーーあ、この人確か…
わたしたちの食事のお世話をしてくれていた…先輩?
「…はあ……」
元気よく言ってはいるけれど。
気休めにしかならない。
「そうですね…先輩……」
次の言葉を言おうとして口を閉じた。
ーーえ? 先輩……?
慌てて見ると
普通に隣りの席に座っている。
「なんでここにいるんですか? ここって1年生の教室ですよっ?!」
「ええっ、いまさらぁっ? ちょっと、この子って鈍感!」
その先輩は呆れていて。
「知らなかったの?」
またコイツ=紗織に説明される。
「ここは中等部、高等部ってそれぞれ1年生から3年生はみんな同じクラスなのよ」
ーーそういえば…
普通に行う新入生同士の自己紹介はなかったような?
紗織の説明はさらに続く。「寮は…知ってるでしょ? A組はA棟、B組はB棟、C組はC棟。…で、F組はーー」
「…知らないわよ」
柚月の投げやりな答えに
「ふーん。 かなり、いいところみたいだけど」
紗織は意味深な表情を
彼女に向けた。「全校生徒の憧れのF組がどこに住んでいるのか。気にならない?」
「別に。だから昨日、会った人たちは……」
『頑張ってA組は脱出しろよな。これが2年生や3年生、高等部になってもA組ならここにいる限りずっとーー』
「…負け組……」
つい口から出てしまった。
それに
「やだあっ! 『負け組』…って言わないでぇっ?! ショックで倒れるぅっ!」
いきなり先輩が両手を頬に当てて
悶絶をする。
ーーなにこの人…なんで悶絶してるの?
「先輩はねえっ、人一倍、言葉には敏感なんだからっ!」
紗織が先輩をかばった。
ーーそりゃ、本当のことを言われてショックなんだろうけれど……
「…その人、男じゃん」
その言葉にも
「だから?」
「だから?」
ふたりが柚月を睨んでいる。
「見かけは男だろうが心は乙女よっ!」
ーーなんだそれは……
そして紗織さん、なぜかばう?
これでは自分がいじめたようで。
「わたし、いじめっ子みたい……」
しかし
そんな柚月の気持ちは無視して
「とにかくいつものように、逃げて逃げて逃げまくるのよっ?!」
先輩の声が教室中に響き渡る。
「おーっ!!」
「おーっ!!」
「おーっ!!」
それぞれが拳を振り上げた。
「…どこがショックで倒れるんだ? それに……」
ーー逃げて逃げて、逃げまくる?
まあ、一致団結することは大事だけど……
「…で、最期にはいつものように、派手に散るわよっ!!」
私立 SG学園 F組 入江 璃 @Ryou1964
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私立 SG学園 F組の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます