次の旅人へ

これで、この世界のことと、この世界で出会った少女の話は終わりだ。隣の部屋に、持ちきれなくて置いていった土産があるから、是非活用してほしい。


ルア…ハウの父、ハルはこう語った。


「ハウと一緒に、この世界で生きていきたい。ここまで一緒だった君たちに頼むのは酷だが、どうか、ハウを返して欲しい。―いや、返して欲しいのは彼女じゃないな。僕が、僕と妻がハウと共に過ごすはずだった時間を、返して欲しい。」


私たちは、それを受け入れた。元より私たちの度の目的はこの世界のことを知ることで、彼女を連れ回すことではない。


私たちは、自分でも驚くほどあっさりとルアと別れた。彼女は、とても幸せそうだった。


私たちの旅はまだ終わらなかった。ずっとずっと、歩いては新しいものを探して、世界を旅した。その度に知らない物、事、人に出会い、沢山の知識を得た。


詳細に語ると全く紙が足りないので、省くが、まぁそこは自分の目と足で調べて欲しい。


最後に、この世界は残酷でもある。旅をして、知れば知るほど自分を大切にしてくれた人を思い出し、二度と会えないことを思い知らされるからだ。私たちのような知性と理性を持たない、機械や道具や宝石なども全部そうだ。


だが、だからこそ彼らは新たな出会いを求めている。寂しいこの世界で、また自分を大切にしてくれる人を求めて。


どうか、君もそうあって欲しい。自分を大事にしてくれる人を、自分が大切にしたいと思えるものを、探して欲しい。


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忘れじの地 鈴音 @mesolem

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