第5話 過去は未来へ。遅延は過去へ。
5話目
「ふぅ〜。終わった~」
大変だったレッスンが終わり、各自帰宅の準備をしていた。なので私も荷物を纏めていたのであった。やっぱりこんなに上手い人たちが多いレッスンには来たことが無かったから、緊張して上手く踊れていなかったな~って反省するとことが多かったけど、最後らへんは全力で踊れたからよかったな。
ただ、その緊張のおかげで自分は緊張するとどれだけ踊れなくなるか分かったから良かったかもしれない。今まで地方でしかダンスをしていなかったおかげで、大会とかに行っても知り合いが多かったから緊張なんてした事は無かったんだよね。もちろん失敗とかそういう緊張感はあったけど……さっきの緊張はそれとは違ったし。
失敗しないようにって思う緊張感はいい感じに体を活性化させてくれて集中できるんだけど、人見知りって言うか、初めての人が多い場所だとこの技で本当に合っているのか? とか、もしかしてみっともないダンスになっていないかな? って周りの目線を気にしちゃって上手く動けなかったんだよね。
だけど、後半は自分の事しか考えていなかったから上手く踊れたんだよね。
他人の事なんてどうでもよくて自分がどれ程上手く踊れているのか。自分の動きは鏡でいっぱい確認してきたから、どれだけ腕を上げればいいのかとかそういう事は自分が一番分かっていると思った。だから、緊張しなかった。
……ダンスは好きで大会に出ても頑張って全力で踊れていたから分からなかったけど、私って意外と人見知りなのかな?
自分の意外な性格に気が付いたその時、声をかけられた。
「海さん少しいいかい?」
「はいっ!」
慎吾さんであった。
声をかけられるとは微塵も思っておらず、その声に体を振るわせるほど驚いてしまったが直ぐに、返事を出来ただけ良かったとおもう。正直結構疲れているから慎吾さんでなければ返事なんて出来ていなかったと思う。
まあ、例外として誘ってくれた清美にはちゃんと挨拶をすると思うけど。
「はは。ゆっくりしてもらっていいよ。」
「ありがとうございます。」
私の様子を笑われてしまったので、少し恥ずかしかったけどそれが分かったのか配慮してくれた。
「さっき誘ったレッスンの事なんだけど、もう少し話しとこうと思ってね。時間は大丈夫?」
「大丈夫ですよ。」
私は時間を確認するまでもなく大丈夫と言ってしまったが、このレッスンが終わったのが午後20時と少し遅いのであった。まあ、東京の治安はいいって聞くし少しくらいなら大丈夫だと思うけど。
それに、誘ってくれたレッスンの事は凄く行なるから事はるなんて選択肢はそもそもなかった。だから、多少遅くなるくらいはいい。
「それでねそのレッスンが少数って言ったけど、そのメンバーが俺のナンバーに出すメンツでね。」
「え、そこに行って良いんですか!」
ナンバーとはダンスイベントや、発表会に出すダンス作品のこと。つまり俺のナンバーと言う事は、慎吾さんが振付をしたダンス作品を出すと言う事。
そんな大切な場所になぜ私が言って行っていいのか分からないけど……でも、慎吾さんが決めたメンバーを間近でみてみたいかも。
「うん。来てもらおうと思ってるのは軽い交流会的な感じのときだから。いい刺激になると思うしね。海さんにとってもメンバーにとっても。」
「ありがとうございます!」
凄い人たちなんだろうな~って思いに浸ってしまう。だって、今日のレッスンでも色々な事を学ぶことが出来たのに、そこに行けばどれだけ成長できるのだろうか。
だけど、交流会と言う事はまだ念バーの練習は始めていないのかな?
「だから一応言っておこうと思ってね。」
「ありがとうございます。そのメンバーの所で練習させていただけるだけで嬉しいです!」
でも、右も左も分からない私にとってその誘いは本当にうれしかった。だって、慎吾さんにさそってもらっちゃったんだよ!
「よかった……そうだ、清美もそのナンバーに出るから一緒にくればいいよ。」
「え!清美がナンバーに出るんですか?」
「うん。あの子意外と実績あるし、実力もあるからね。」
実力、実績。それは私の心の中に残った。だって、今の私は地方で細々と活動していたAKARIのあるかもわからない実績しかないから。そんなんでは、東京で活動して行こうと思った時誰にもオファーされないんじゃないのかな?なんて。
それに、実力に関してはこのレッスンでも凄く感じた。東京のダンサーたちは凄くダンスが上手いって。このレッスンの中で私よりも実力がない人を見つけようと思ったとき、指の一本も経たないくらいには実力差を感じた。
「そっか~。実績と実力か~。」
思わず、上を向いて虚空に問いかけてしまう程度には考え込んでしまう。だって、私と同い年の、清美にはその二つが合って私には無いのだから。
地元で活動していた時は楽しく活動できればいいと思ったけど、実績の事も考えなきゃいけなかったかな~。
AKARIのメンバーならそれなりの実績を残すことは出来たと思うし。
「……実績は作るのが大変だからね。」
すると、慎吾さんは遠い目をしながらはなした。
「そうなんですね……」
あれ? でも慎吾さんに私のダンス動画を見せた時AKARIの事を知っていたような?
「そうだ、レッスンの時に教えたルーティン撮ってみる?」
「え?いいんですか!!」
「うん。一緒に踊ってみたかったし。」
すると、慎吾さんがペアで踊ってくれることになった!
それは心が高鳴る様な事で、慎吾さんと踊れるなんて思わなかったから、凄く気合が入る。
えっと、レッスンの時のルーティンだからこんな感じだよね・
私は一緒に踊ってもらえると思うと、振りを確認するために体を動かしていく。だけど、全身から感じる高揚感で凄く楽しい。それに、さっきまで凄く疲れていたのに、今は疲れなんて気にならないで凄く体が動く。
「……ダンスが好きなんだね。」
「はい!」
ダンスの事に集中していて慎吾さんに何か言われた気がしたが、何も考えずに返事をしてしまった。けど、まあいっか。
「それじゃあやろっか。」
ふぅ。慎吾さんに恥をかかせないように頑張ろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます