第4話 頑張りは報われない。頑張らなきゃ報われない。
4話目
気合を入れられて緊張がほぐれたからだと思う。
今の私はこのスタジオで一番輝いている。
1、2、3、4、
体にしみこまれているそのリズムと共に私は踊っていくのだが、その瞬間だけなぜか私は今までで一番動けているような気がした。それが東京に来て心意気が変わったからなのか、成長期で知らぬ間に成長していたからなのか。もしくは緊張感あるこの場所だからなのか……分からないけど、それは引っ越す前にダンス友達と踊った時よりも、のびのびと踊れていた。
ほら……その腕の動き一つとっても鋭くて迫力がある。
本当に今動いているのは自分なのかと思ってしまうほど、動きのlevelが上がっていた。
楽しい。
私はそのダンスを踊っている時、出来ない事が出来るようになった時のように、自分の技術が上手くなったことで楽しいと心のそこから思っていた。それと同時に、ずっと踊っていたいとそう思った。
この感覚を忘れないように、体にしみこませたい。今この瞬間を逃してしまうともうこんなダンスは出来なくなってしまうかも知れない。
だけど、曲はずっと続くわけではない。
いつか終わってしまう。それは覚えているダンスムーヴが言っている。
それなら今自分に出来る全力を最大限を出して、出し切って踊り終わるんだ。
「やってやる」
それは凄く小さな小さな声である。誰にも聞こえないように、周りの踊っている人たちの邪魔にならないように。
私は気合を入れて、この後のムーブを全力で踊るんだ。
☆
「あ~だめ。くらくらする。」
体力が無くなってしまったから壁際で休んでいた。今私が出来る全てを出して踊ったおかげで、全身が疲れてもう少し休まなきゃ立てないと思う。それくらい頑張った。でも、それだけ頑張っただけあって一段上のダンスが出来るようになった気がする。そんな手ごたえがあった。
まあ、それだけ頑張ったけど、私は最後尾で踊っていたから誰にも見られていなかっただろうけど……こんだけ凄い頑張ったのだから「海さんのダンス凄かった!」って言ってくれる人が一人くらいいても良いと思うだけどな~
まあ、レッスン中だから皆自分の事で精一杯だと思うけど。
「早く踊りたいな~」
全力で踊って体力が無くなってしまったけど、今の私のモチベーションは爆上がり中。
前は苦手で練習もしようと思わなかった技も練習したいと思ってきたし、ソロでもいいから早く踊りたかった。でも、出来れば複数人で踊りたいけど。
すると、そんな事を思っている私に話しかけに来てくれた人がいた。
「さっきのダンス凄かったね!」
清美だ。
「え!見てたの?」
さっきは全部通しで踊っていたので清美と言え最後尾にいる私を見ている余裕なんて無いと思っていたんだけど。
「見てたっていうよりは、そっちに目線が行っちゃってね。」
「え、そんな事があるんだ。」
「凄かったんだからね!慎吾さんも凄いって言ってたよ!」
「ほんと!それなら真正面から言ってほしいな~。」
「まあ、忙しいみたいだしね。」
そう思い、慎吾さんを探すと何やら作業をしていて忙しそうであった。でも、人伝であれ、プロから凄いって割れるのは嬉しかった。
「あ、いたいた。清美誰と話してるの?」
すると、清美に遅れてくる感じでクール系のカッコいい女の子がきた。
「凛!そうだ紹介するね!私と同じ学校の同級生の海だよ。」
「あ、海です。よろしくお願いします。」
私とその凛さんの間に入って私に手を向けながら清美が紹介してくれた。なので、失礼が無いように、立って挨拶をしようとする。だけど、疲れていた足では上手く立ち上がることが出来ず、プルプルなるだけであった。
「私は凛だよ。よろしくね。」
凛さんカッコいいな~。
そんなふうに思いながら……何と言えばいいのだろうか。そのカッコよさは付き合いたい男性の想像にばっちり当てはまっている感じ。だからなのか思わず頬を赤らめてしまいそうになる。
「疲れてるでしょ?さっき有んな凄いダンスしてたから座ってな。」
「ありがとうございます。」
その優しい言葉に甘えて座る事にした。頑張ればたてるだろうけど、この後の事が気になるし少し休んでおきたいからね。
「それにしても、清美の同級生に踊れる人がいたなんてね。」
「ほら、前に転校してきた人がいるって言ったでしょ?それが海だよ。だから最近までいなかったんだよね。」
「あ~。だから知らなかったのか。」
「つい先日引っ越したばかりだから東京の事とかまったく分からなかったから、清美には助けられたんですよね。このレッスンも清美に紹介してもらったんです。」
清美本人の前でこういうのは少し恥ずかしいけど、言いにくい事では無いから素直に言ってしまう事にした。清美には本当に感謝しているしね。
「あの清美がねぇ。あれだけ自己中心的で周りを振り回す化身だった清美が同級生とは言え嫌だって言っていたコネまで使うなんて。」
すると、清美は嬉しかったのか恥ずかしかったのか頬を赤らめており、その様子を見て私は言ってよかったなと思った。言葉にしないと分からない事はあるだろうし、言葉にした方が良い事が有ると思って言ったけど、ここまで喜んでくれると思わなかった。
それに、頬を赤らめている清美に追撃するように言葉をたたみかけている凛さんは何というか楽しそう。
「もう!そんな真正面から言わないでよ!それに凛もそれは結構前の事でしょ!」
すると恥ずかしさが爆発したのか、少々大きな声で爆発してしまった。
私と凛さんの言葉に反論してから、少し力が入った体でどこかに行ってしまった。
「ふふ……海ありがとね。それじゃ。」
「え、はい。ありがとうございます?」
私は何に対して感謝されたのか分からないけど、清美についていくらしかったので直ぐに挨拶を返した。
「ちょっと清美待ってよ!」
凛さんは清美についていってしまった。
なんか同じチームの人だけあって清美は楽しそうだった。あんなチームが結成できるといいな〜と、改めて思ったのであった。
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