第3話 期待は目の前に。心配はまた後で。




 3話


 あ~、、ヤバいこれ結構大変かも。


 それは清美が誘ってくれたレッスンに来ているのだが……そのレッスンが結構大変なのだ。私が予想していたレッスンでは初心者の人が多いイメージだったのだけど、このレッスンは何というか、結構経験者が多くてレッスンの内容も難易度が高いのだ。


 それに、このレッスンを主催している人が誰もが知る有名なダンサーと言う事もあり、緊張して体が上手く動かないおかげで大変と言う事もあるかも知れない。。


「はい!一旦休憩しな。ここでぶっ倒れられたら俺が困っちゃうからね~。」


 やっと合わせが終わり、休憩に入った。

 はぁ~。東京ってこんなに凄いんだ。私は地元でしかダンスをしていなかったおかげで東京のダンサーの実力に慄いていた。


 正直、田舎だとこんなに凄い人は全然いないし……何というべきか「井の中の蛙大海を知らず」という言葉が合っているなと思ってしまう。私はこんなに戸惑っているのに皆楽々とこなしているように見えるのだから。


「かい~大丈夫?」


 すると、私の様子を見計らってなのか清美が来てくれた。


「はは。流石に疲れた……よ。」


 なので、普通に返事をしようとしたが、思わぬ人が目の前にいたおかげで言葉が詰まってしまった。このレッスンの主催者でさっきから私たちにダンスを教えてくれている人……慎吾さんが清美と一緒に来てくれた。


 思わず立ち上がって一礼をしてしまう。


「お、おはようございます!」

「・・・ははは!そんなに緊張しなくてもいいんだよ。」

「ハハハ。あ~。海すっごい緊張してるじゃん。大丈夫だよ、慎吾おじさんは優しいからほらこの前言ったでしょ?」

「いやそんな事言っても……凄い人の前だと緊張しちゃうよ!」


 やっぱり、緊張してしまうのはしょうがないと思う。


「そんな事言って、海さっきのダンス中も緊張してたでしょ?動きが悪くなっちゃうから、体の力抜きな!」

「え、見てたの?」

「まあ、気になっちゃうじゃん。」


 気y身はダンスが上手いからなのか、一番前で見本として踊っている。だから、最後尾に近い私の事は見えていないと思っていたんだけど……


「海こういうの初めてだったの?」

「いや、前はチームメンバーと一緒に行くことが多かったからこんな緊張はしなかったんだけど……1人だから緊張しちゃって。」

「あ、そういえばメンバーがいるって言ってたね。」

「へ~、それなら一緒に招待してあげればよかったかな?」


 慎吾さんも私が緊張していることに気が付いていのだろうか。


「いえ…私が引っ越すときに解散しちゃったので、」

「あ~、それなら心細いね。まあ、頑張ってよ」


 すると、慎吾さんは他の人に声をかけに行こうと思っているのかどこかに行ってしまおうとしていた。正直、もっとできるんです!って今の緊張してる私を否定してもっと注目してほしいんだけど、そうは行かないだろう。


「……そうだ、その時のダンス見せてよ!録画とかしてない?」

「え、あるけど。」

「慎吾おじさんちょっと待って!せっかくだし、一曲だけ見てよ!」


 すると、清美は私の感情に気付いてくれたのか引き留めてくれた。その事に気付いたので私は直ぐにスマホを取り出して動画を探す。


「まあ、一曲だけだよ?」

「えっと……これです。」


 私はダンスフォルダから私が一番上手く踊れたと思うのを取り出して、大画面にしてながす。


 ……そのダンスは何回も見ているおかげで難病から踊りだすのか、そして、私が踊っているからどんなダンスを踊るのかてとり足取り全てわかる。


「へ~……いいねえ。」


 そのダンスを少し見せた後、慎吾さんは賞賛してくれた。


「早々これだよ!」


 その曲を聞いていると、体が勝手に動きそうになる。何回も練習して何回も失敗した、メンバーにとっても干渉深いであろう曲だから胸が熱くなってくる。


「……海さん?」

「はい?」


 すると、慎吾さんが声をかけてきた。なんだろうと思い目線を動画から慎吾さんに移すと、動画に夢中になっている慎吾さんがいた。


「このダンスを踊っていた時のネーム……教えて。」

「え、えっと。AKARIって名前で活動してました。」


 AKARIはメンバーの頭文字を組み合わせて作った名前なんだけど今でも結構好き。


「やっぱり!いや~、地方の方でAKARIっていう凄いチームがいるって聞いた事が有るからさ。凄いねこのダンス。」

「あ、ありがとうございます。」


 こんな真正面で褒められるのは恥ずかしいものだ。だけど、頑張っていたのもあって凄く嬉しい。


「そっか~。」


 すると、慎吾さんはルンルンで興奮しており、さっき私から離れていく時とは大きく違う目線を送ってくれた。


「……今度さ、少数のレッスン開くんだけどこない?こんな大勢だと緊張しちゃうかもしれないけど、少数なら大丈夫だと思うしさ!」


 私の心は大歓声を送った。だってあの慎吾さんの少数でのレッスンに私も行けるなんて思ってもみなかったから!


「お願いします!」

「うん。じゃあ清美伝手で日程は送っておくね。」


 すると、慎吾さんは行ってしまった。


「良かったね!」

「うん。清美もありがとう!」

「いいよ。それよりもこの後のレッスンも頑頑張ろう!」


 すると、自然と体に入っていた力が抜けて緊張がほぐれてきた。このレッスンでどうにかチームを結成するための伝手を手に入れなければいけないと思っていたから、その分気持ちが軽くなったからだと思う。


 この後のレッスンは全力で出来そう。


「……そう言えば清美なんで私が踊れるって知ってたの?まだ見せた事無かったと思うけど?」


 そんなとき私に一つ疑問が出てきた。


「いやいや、見たことあるよ。そうじゃなきゃクラスメイトとはいっても誘わないよ。」

「え、いつ見たの?」


 私は覚えていないので凄く驚いた。だって学校で踊ったのなんて……あの男の子の時以来ないし。それに、それ以外で踊っている場所は人気が少ないし。


「ほら、海が転校してきた日の放課後に踊ってたでしょ?」

「え!見てたの。」


 それは完全に予想外であった。だって、誰もいないと思い込んでたし。誰もいなと思っていたから踊っていたし。


「あの時の海は凄かったよ!だから、誘ったんだよ!」

「えへへ。ありがと。」


 だけど、やっぱり褒めてくれるのは嬉しい。


「そろそろ、再開するから気合入れて行こっか!」

「そうだね!」





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