第2話 思い出は過去に。感想は新しく。



 2話目


 あのダンスバトルが終わった後、私はつかれて座り込んでしまっていた。だけど、何も考えていなかったわけではない。頭の中はダンスの事でいっぱいだった。


 これからダンスどうしよう。


 私はその事について悩んでいたのだ。それは別にやめたいと言う訳では無い。ただ、この学校にダンス部が無かった事によって、ダンスをする場所が身近にないなと思ってしまっていたのだ。


 どっかのチームに入ったりすればいいのかも知れないけど、そんな伝手はないしな〜。引っ越す前に関わっていた人は居るけどその人は、東京にはいないだろうし。


 ……今日は別に考えなくてもいいかな?


 それよりも、今はダンスを踊っていたいし。


 難しい事を考えるのは運動後の頭には難しかった。正直今すぐ決めたい事と言う訳でもないので、後にすることにした。


 そう思いながら、私は荷物を持った。


 さっき大きな音を出しちゃったから、そろそろ先生が来ると思うんだよね。転校初日にそんな汚点になるような失態をしたくないので、先生が来る前に帰ろうと思う。出来ればもう少し踊りたかったけど……下校中に良い場所探してみようかな?


 私は頭を冷やしながら帰るのであった。


 ☆


「はい前に書いた問題。海応えてみろ。」


 それはただの一日になった日。

 昨日のダンスバトルで出した音について先生から何か言われるのではないのだろうかと言う、恐怖心があったが、学校に来てみればそんな事を言われる事は無く、先生は普通に挨拶をしてきた。


 もしかしたら、昨日の事はバレていないのかも知れない。まあ、バレないようにすぐに帰ったから大丈夫だとは思っていたけど……今日の登校の時に急に思い出して少し怯えていたの。


「えっと……」


 まあ、今はそんな事は気にしないで普通に授業を受けているんだけどね。


「正解だ!結構難しかったと思うが途中式も全部合っていたぞ。」


 元々勉強は嫌いではなかったおかげで難しい問題も難なく応えられる。だけど今は少し危なかったかもしれない。それは頭の中がダンスの事でいっぱいだったからだ。


 登校の時に感じていた恐怖心と一緒に昨日のことを思い出してしまったのだ。そして、恐怖心が無くなってしまったので、今はあの男の子のダンスは凄かったな……何て言う脳味噌になってしまっている。


 今すぐにでも教室を飛び出して踊りたいけど、流石にそんなことは出来ない。


 ただ今はこの退屈な時間が過ぎてくれるのを待つだけ。


「海さん凄いね。私あんな問題全然分からないよ。」


 すると、私が先生の無茶ぶりを解き返した後に隣の席の女の子が話しかけてきた。名前は……清美だったっけ?


 流石に昨日の今日でクラス全員の名前を覚えきる事は出来なかったので、うろ覚えになってしまうけど、多分間違ってない。


 そんな清美さんは昨日はあまり喋らなかったので、どんな人か印象に残っていない。分かるのはラインのアイコンくらい。でも、そのアイコンがダンス系の人と一緒に取っている写真だったから、多分ダンスをやっている人だと思う。


 だから、話したことが無かったのにもかかわらず、名前は覚えていた。


 同じクラスにダンスをやっている人がいてくれて嬉しいからね!


「私も急に指名されてびっくりしちゃった。」

「そっか〜。あの先生結構指名してくるから気を付けておきなよ?」

「そうする。」

「そうだ!今度勉強教えてよ。私勉強苦手で今度の期末ヤバそうなんだよね。」

「いいよ。勉強は得意だし!」


 すると、東京特有のコミュニケーションなのか、軽いフットワークにより今度勉強を教える約束をしてしまった。だけど、それは清美と友達になるチャンスだと思い、快く了承する。


「お~い。そこ何を話してるんだ?授業中だから静かにしろよ。」


 すると、コソコソ喋っていたのだが先生に見付かってしまい注意されてしまった。


「やべ」


 まあ今話さなければいけない事はないので、直ぐに前を向いた。だけど、そんな先生にバレないように話すのは少し楽しかったりした。でも、今は授業中なので静かにしよう。


 そう思ったが、清美から一枚の紙を渡されてしまった。なんだろうと思いその二つ折りにされた紙を開けると、そこには「ダンスの事も教えてね!」と書いており、清美もダンスが好きなんだなと思った。


 先生の目は気になるが少しだけその手紙に付け加えて直ぐに清美にかえす。


『もちろん!だけど、先生に怒られちゃうよ!』


 すると、それを見た清美は少し笑ったあと授業に向き合ってくれた。

 その後何事もなく授業が終わり休み時間になった。隣の席の清美はすぐに私に話しかけてくる。


「海やっぱりダンスやってるんだ!」

「うん。清美もラインのアイコンがダンスの奴だったよね。」

「私が入ってるチームのメンバーなんだよね~。」


 予想していた通り、ダンスをやっているみたいで、加えてチームまで結成しているみたい。そんな飲み私は良いな~何て思っていたりする。転校するまでは私もとあるチームに入っていたけど、東京に行くから脱退させてもらっちゃったんだよね。


 だから、今はチームに入っている訳では無いから……

 ダンス友達が欲しいのもあるけど、一緒に大会に出てみたいからどこかのチームに入れてもらいたいな~なんて思ったりしている。


「海は入ってる所とかあるの?」

「いや~最近こっちに来たばっかだから、まったくなんだよね。出来れば早くどっかのチームに入ったり、結成したいって思ってるけど、伝手が無いからそう簡単に行かなそうだし。」


 そう。今の私にはチームを結成するための手段が見つからないのだ。最近東京に来たばっかだから、実績なんてないも同然だし。


「へ~。確かに私も結成した時は知り合いに教えてもらったな~。」

「いいな~。私も早く入りたいよ。」

「ん~、それなら今度知り合いのダンスレッスンが有るから一緒に行かない?多少は融通してもらえると思うからさ。」


 それは本当に嬉しかった。どうするか考えていた中で一番良さそうだからである。


「え!お願いしたい!」

「それじゃあ、後で日程と場所を送っておくから見ておいてね。」

「うん。ありがとう!」


 そう言い話し終わるとそれぞれ、帰るのであった。


 ……あ、そう言えばあの男の子どこに居るんだろう?ちょっと探しに行こうかな?


 だけど、その人はもう帰ってしまったのか見つける事は出来なかった。そもそも学年も組も名前も分からないので探すことは無理だったのかも知れない。それは数分探したときに気付いた。




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