第6話 滅亡
ヒサイシさんは早朝、自宅近辺を散歩していた。太陽はまだ昇ったばかりで、空気は澄んでいた。少しひんやりとしていた。でも何かがいつもと違う気がした。いつもより外が暗かった。
いつもの公園に向かおうと空を見上げると赤黒い大きな惑星が地球に接近していた。外が暗いのはこのせいだ。今にも衝突しそうで、これはやばいと思った。ヒサイシさんの息が荒くなってきた。自分は死ぬのではないか。人類は滅びるのではないかと思った。
ヒサイシさんは一旦自宅へ帰ってテレビをつけた。
テレビでは緊急特番が放送されていてなぜかアメリカの大統領が物憂げな顔で演説をしていた。今日が人類は最後の日ですと言っていた。ヒサイシさんの予想は当たった。
どうやら人類は本当に滅亡するらしい。
ヒサイシさんはまた家を出て公園に向かった。最後はハトさんと共に過ごそうと思ったのだ。
ヒサイシさんは公園に着いた。公園ではハトさんたちが集会を開いていた。
「おい、あの空に浮かんでいる赤黒いのはなんだ?」
「わたくしは知りませんわ」
「ぼくたちは死ぬのでありましょうか?」
ハトさんたちはパニックになっていた。
ヒサイシさんがハトさんたちにゆっくり近づいていき、語りかけた。
「おはようございます。ヒサイシです。申し訳ありませんが、今日はコーンフレークは持ってきていません。なぜならもう今日で地球上にいる生命体の未来が失われるからであります。もう今日で我々の魂は昇華し、天国へと行きます。あとニ時間もないでしょう。それまで共に過ごしましょう。生き物というのはある日突然死ぬものです。それが自然の摂理であります」
そしてヒサイシさんたちは決して取り乱すことなく、温かな談笑をしながら、最後の瞬間まで笑顔を絶やしませんでした。
ハトさんとヒサイシさん 久石あまね @amane11
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