大団円
聖一に言われたように智晴はパパ活をやめた。やめたものの、聖一食事に誘われたり、晴美にねだられて女装してデートしたりと、女装とは縁が切れなかった。
この日も聖一と食事の約束があり、金曜の授業がおわると女の子に着替え始めた。着替え終わり家を出ようとしたと玄関のドアを開けたところ、晴美が立っていた。
「晴美、なんでいるの?」
「借りてたノート返し忘れたから、持ってきたよ。バイトって言っていたのに、なんで女装してるの?」
ごまかしようのない事実を見られたことで、晴美にはすべてを話した。お金がなかったので女装してパパ活をしていたこと、それで晴美の父親、聖一と知り合ったこと、聖一は智晴であることをしっているということ。すべてを話すと、
「そうだったんだ。今からお父さんに会いに行くの?お寿司食べるんでしょ、私も行く。」
「父親がパパ活していたことは、気にしないの?」
「でも、相手が智晴でしょ。いいんじゃない。娘とご飯食べてお小遣い渡すようなものでしょ。智晴だけずるいから、私も美味しいご飯食べさせてもらうの。」
待ち合わせ場所に二人で一緒に行くと、聖一は案の定驚いていた。
「晴美、なんでここに?」
「智晴じゃなかった、今は智美か。智美に全部聞いたよ。智晴だけ美味しいもの食べて、ずるいから私もきたの。実の娘でもいいでしょ。」
「そうだな。」
パパ活していた後ろめたさもあり、あっさりと聖一が受け入れたので3人での食事となった。
「私、つぎ赤貝ください。」
聖一と智晴はそれぞれの秘密がバレてしまったショックで落ち込んでいるのと対照的に、晴美は遠慮なくお寿司を食べている。
「前から聞きたかったんですけど、どこで気づきました。智美が智晴であることに。」
「初めて家に来た時、お箸並べてもらった時にお箸の向きが左向きだったところかな。初対面なのに左利きということを知っていたのに違和感があって、晴美に同級生に松尾智美っているかって聞いたら、いないって言ったから気づいたよ。」
智晴の左側に座っている聖一は、にやついた笑顔で答えた。左利きの人特有の気遣いで、聖一は並んで座るときは左側に座る。
「まあ、これからもよろしくね。新しい息子と娘が一緒にできて嬉しいよ。」
「よろしくお願いします。」
そう言って、智晴は聖一のお猪口に日本酒を注いだ。
パパ活のパパは、彼女のパパでした 葉っぱふみフミ @humihumi1234
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