第8話 繊細な すれ違い

春翔と瑠花は付き合って2年が過ぎた。

春翔は21の歳を迎え、瑠花は大学に通いながらヨガのインストラクターの資格を取った。それでもヨガのインストラクターにはならず、1度は就職をすると言い就職活動をしながら情報収集と人見知りを克服する為にサークルに入った。



春翔は「サークル」とやらが嫌いだった。チャラチャラした大学生が出会いを求めて集うただの暇つぶしだから。

というのは大学に行けない春翔の僻みだった。そして何より瑠花の事が心配であり、他の男達との交流に良い気がしなかった。



春翔は「サークルには入らないで欲しい」と何度も瑠花に伝えようと思った。


でも.....春翔は思いを言えなかった。


瑠花に自分の気持ちが言えなかった。



何故かは解らない。

嫌われるのが嫌だったのかもしれないし、瑠花を信じていない理解の無い男だと思われたく無いというプライドからか.....



春翔は初めて瑠花に対する気持ちに蓋をした。




それは些細なすれ違いなのかもしれない。


大した事では無いと自分に言い聞かせた。





ある日、日課になっていたメールが来ないので電話を掛けてみると、お酒の弱い瑠花がほろ酔いの状態で電話に出た。


時計の針は23時30分を過ぎていて、後ろでは楽しそうに騒ぐ仲間達の声が聞こえた。



それは春翔の知らない瑠花の笑い声だった。


0時15分が電車の最終時刻だと伝え「気をつけて帰るんだぞ」そう瑠花に言うと瑠花の返事を聞かずに春翔は電話を切った。


(これ以上を考えても仕方がない)


そう解っていながらも消化の出来ないモヤモヤを吐き出したくて



もう一度、スマホを手に取り着信履歴を押した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

まだ誰も知らない @kotonoha-tsumugi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る