第7話 初めまして
春翔は1人になりたい時、心がモヤモヤした時は決まって喫茶店に顔を出した。
エスプレッソを啜りながら本を読んだり音楽を聴いて過ごした。
気持ちが晴れる日も有れば何も解決しないこともあったが、不思議と嫌な気持ちになる事は一度も無かった。
それが心地よくて春翔は度々この場所を訪れた。
1度だけマスターと色濃く話した事がある。
春翔が携帯電話を喫茶店に忘れてしまった時のこと。着信がある度に電話の待ち受けには彼女との写真が映し出された。
携帯の持ち主が春翔だと直ぐに分かったと言ってマスターは笑った。
春翔は待ち受けを瑠花にしている事を後悔していた。心内を見られてしまったであろうと恥らう春翔の気持ちを察してマスターは笑った。
マスターはそれ以上を聞き入って来なかったが、春翔は初めてお店を訪れた日の事や父親が淹れる珈琲が美味しい事を話していた。
マスターは嬉しそうに聞いていた。
その日以降、お互い特別な話はしなかったが言葉を交わす事の無い安心感が漂っていた。
春翔はその距離感がとても好きだった。
そして、この心地よい場所に悠也を連れて来たいと一瞬思って躊躇った。
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