志半ばで逝ってしまったタツキの無念さを体現するかのようなハルニレの木。
生きる支柱を失ったかのような大学生のヒロ。
だが、人生が暗転したかのようなその時間は、まるで芽吹くまでの間、タネが地中で眠っていたかのようだった。
どのような存在もひっそりとタネを残す。
それは必ず芽吹くとは限らない。
でも、仮にそこが乾ききった大地でもいつかは雨が降るだろうし、思わぬところへ流され運ばれてきっかけが生まれるかもしれない。
そしてそれを育む温かい苗床は、人の心の中にこそあるかもしれないのだ。
植物も人も、強く逞しい。
これは有終の美と、生命の起源の物語だ。