あとがき
《前作品の伏線とティファニア》
恵花の妹・ティファニア(花蓮)は前作品『ふたり』の時に一度だけ名前が出てきています。
――『ティファニアがいないからか? それも全部! 私のせいなんだろ?!』
(『ふたり』 前編 第五章 第四話『恵花の過去』)
前作の『ふたり』ではティファニアが恵花の妹ということはあえて明言しませんでした。
また、麻世が自殺未遂を起こし始めたころの恵花が過剰なまでに恐れている様子に、翠妃が「何か他に理由があるんじゃないんですか?」と問いかけるシーン(『ふたり』 後編 最終章 第一話「届かない声」)があります。
そして最後の方では翠妃の涙の切実な願いに恵花は「これはいつか乗り越えなければならない〝試練〟なのかもしれない」と呟いています。
恵花にとっての〝試練〟〝理由〟とは言うまでもなく、ティファニアを亡くしていたという過去のことであり、そのことを続編であるこの作品のプロローグ第三話にて明かしています。
ちなみに続編であるこの作品は、『ふたり』の「後編 ~ 終わりの始まり ~」のころから構想ができ始めていました。
《当初の構想》
麻矢に完全な別れを告げられて半ば放心状態となった氷樹が、一時的に恵花に依存し始める場面があります。
一時は恵花と関係を迫るところまでありましたが、彼女の言葉で氷樹は思い直します。
けれども当初の構想では麻世を亡くしたという心の傷を負った氷樹が、学校にやっと通い始めたころから恵花の家に入り浸るようになり、やがて彼女も氷樹の心の傷が癒されるのならと男女の関係を受け入れてしまう展開を考えていました。
完全に恵花に依存し、彼女なしにはもう生きる気力もない氷樹を心の中で間違っているとわかっていても恵花が全て受け止めるという泥沼の流れに……
けれどもそれでは恵花が麻矢のことを傷付けてしまうことになり、恵花の「みんなの心を救う」という決心に大きな矛盾が生じてしまうのでボツにしました。それに紫の存在もあり、泥沼過ぎる展開になってしまうので……
その先の展開はまだ考えていませんでしたが、恐らく翠妃とかえでが彼女に対して行動を起こしたでしょう。
《天界編》
後編は死後の世界での麻世を描いています。
本来は前編の『葬送』パートだけで完結する予定でしたが、彼女が後悔しているという描写を書きたかったので作られたパートです。そして自然とティファニアと出会うということも決まっていました。
しかしラストシーンについてはかなり悩みました。
最後は二人ともパラレルワールドに「転生」する――『このif世界~』のアマネを登場させたことも影響していましたが、単純に麻世の心が救われて成仏して終わりでいいのだろうか、という思いもあり、このような形になりました。
素直に成仏させて、全く別の世界でティファニアと共に転生して全くの他人として出会う――多分その方が綺麗に収まったのかもしれませんが、それはちょっとありきたり過ぎるかなあという思いもあり……
《最後に》
前作の『ふたり』のあとがきにも書いた通り、麻世が絶命するシーンを結末として最初に構想を描いた作品でした。けれども『ふたり』を読み返した時に、麻世の通夜で恵花が号泣するシーンが自然と浮かんできてしまいました。
恵花は麻世のことを本当に心から大切に思っており、麻世がいなくなってしまったら立ち直れなくなってしまう――その上彼女は過去に妹を亡くしているのにあまりに過酷すぎる運命だという思いから続編であるこの作品を書き始めました。
本作品のサブタイトルの「Tränen eines Engels」(天使の涙)の〝天使〟は恵花のことを表しています。
誰も救われないバッドエンドの予定でしたが、恵花という存在が続編を生み出したと言っても過言ではありません。
これで『ふたり』は改めて完結になります。
続編までお付き合いいただいた方ありがとうございました。
滝川エウクレイデス
ふたり ~ Tränen eines Engels ~ 滝川エウクレイデス @Taki_Euclid
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます