ニワトリ

ニワトリがいない

これは友達の家に遊びに行った時のお話です。

友達には小学二年生の真実ちゃんという可愛い女の子がいます。

ちょっと人見知りで、お母さんの後ろに隠れてしまうようなピュアな女の子です。

何度か遊びに行っていると、だんだん距離が近くなって私とも一緒に遊べるようになりました。

ある日のこと、友達は料理中で私はお手伝い。真実ちゃんはリビングのテーブルで宿題をしています。

突然リビングから｢わあーん｣と泣き声が聞こえてきました。

｢おかあさーん、あーん、あーん｣

｢わからなーい！いなーい！｣

真実ちゃんは宿題のプリントを見ながら泣いています。

｢どうした？どうした？｣

とお母さんは聞きました。

｢何があったー？｣

と私も心配で近寄ります。

それでも真実ちゃんは泣くばかり。

宿題は算数プリントでした。

プリントを手にして

｢どこが分からないの？｣とお母さんが聞きます。

｢ここ！｣

真実ちゃんが指さした問題は、

《太郎さんのおうちには、おんどりが3羽、めんどりが4羽います。ニワトリは全部で何羽いるのでしょう？》

そして、真実ちゃんはこう言うのです。

｢ニワトリがいなーい！｣

｢ニワトリがいないから計算できないよー！わーん｣

えっ！ニワトリ、いるよ？

私と友達は一瞬ポカーンとしてしまいました。真実ちゃんはニワトリがいないと言い張ります。

ほら、真実ちゃん、ここにおんどりとめんどりがいるよ…と指差して教えると、

｢それは違う鳥だよ、ニワトリじゃないもん！ニワトリって名前じゃないもん！｣

…………

私と友達は真実ちゃんがニワトリがいないと言った理由を初めて理解しました。

真実ちゃんはおんどりとめんどりを知らなかったのです。

ニワトリはニワトリじゃなきゃダメだと思っていたのですね。

真実ちゃん、可愛いー！

私は思わずギュッと真実ちゃんを抱きしめました。

そして、おんどりはニワトリのオスでめんどりはニワトリのメスだということ、友達と一緒に丁寧に教えてあげました。

これでやっとニワトリの計算ができて、真実ちゃんは無事宿題を終えることができました。

めでたし、めでたし。