進む道

影束ライト

進む道

 多くの人は義務教育という敷かれたレールの上を歩いてきた。

 中には自ら私立に行ったり、理由があって学校に行かなかったり、行けなかったりする人もいただろう。

 そんな義務教育、敷かれたレールを歩くだけの道が今途切れようとしている。


 俺は今中学三年、その夏休み。

 中三の夏休みと言えば、親や教師から受験勉強をしろと言われ休みとは?と言いたくなるものだ。


 だが俺はまだ行きたい高校すら決まっていない。

 それで勉強をするモチベーションが上がるはずがない。

 だが家に居ると勉強をしろと言われるので図書館に行くという言い訳のもと散歩をする。




 _________


 現在散歩中なわけだが、そう遠くまで行くわけでは無い。

 だからこそ知り合いに偶然出会うということもあるわけで……。


「あれ、奇遇だね」


 そう言って近づいてくるのは幼馴染で同級生の女子。


「よう。なんでこんなところに?」


「私はコンビニにでも行こうかなって。そっちは…」


「散歩。家にいると勉強しろって言われるからな」


「はぁ~。まぁ君らしいか。どうせならついてきてよ」


 断る理由もないので、俺は幼馴染についって行き、コンビニに着いた。


「せっかくだし、何かおごってよ」


「……俺がおごるのか?」


「別にいいでしょ?」


「まぁ、アイス一個くらいならいいが」


「やった!じゃあ……これに決めた!」


 幼馴染が選んだのは二つに分けるタイプのコーヒー味のアイス。


「……これでいいのか?」


「うん。大丈夫、心配しなくても分けてあげるよ」


 そんな心配はしていないが、俺はアイスをレジに持っていき金を払う。


「じゃあ近くのコンビニにでも行こうか!」


 幼馴染の言葉で公園でアイスを食べることになった。



 __________


 俺たちは公園のベンチに腰をかけ、手と太陽の熱によってアイスを少し溶かしながら食べている。


「うん。おいしいね」


「あぁ、さすが冷たいしな」


「…そういえば君は今日は散歩してたんだよね」


「あぁ、そうだが?」


「しかも勉強したくないからっていう理由で」


 こいつは人が気にしてることをズバッと言ってくるな。


「あ、あぁ。けどお前にだってそういう日あるだろ?」


「そりゃあるけどさ、君それだけじゃないでしょ。なんか悩んでる感じがする」


 こいつは人の心でも読めるのか?


「お前人の心でも読めるのかよ」


 おっと、思わず口に出してしまった。

 俺の言葉を聞いた幼馴染はなんかにやにやした顔をしてる。


「へぇ~。そういう言い方をするってことは悩んでるんだ。今なら幼馴染の私は聞いてあげるから話して」


 聞いてあげるから話してって、上からなのか下からなのか分からない言い方だな。

 まぁこいつになら別にいいか。


「なるほど。まだ進路が決まってないから勉強のやる気が起きないと…」


「あぁ。まだ進路を決めてな奴なんて俺以外にもいることは分かってはいるが、なんというか……」


「先が決まってないと不安?」


「そういうことだ」


 幼馴染は話してるうちにアイスを食べ終えゴミを袋に入れる。


「う~ん。とりあえずさ、進学と就職のどっちかくらいは決まってるの?」


「それは、一応進学の予定だが…」


 なるほど確かに就職という手もあったか。

 だが中卒での就職か、やってる人はいるだろうがあまり給料はもらえないだろうし、高校生活というのを捨てるのもなんかもったいない気がするし……。


「それは、進学がダメだった時の最終手段だな」


 俺の言葉に幼馴染はため息をつく。


「今はダメだった時の話はやめよう。まだ時間はあるんだし前向きに行こうよ。とりあえず進学なんだね」


「あぁ、進学の予定だな」


「じゃあ次は、進学校か専門校かかな。君大学は行くつもりあるの?」


「大学……。高校もまだなのにそこまで考える余裕は無いな。だが、進学校か専門校かなら進学校だろうな」


 専門校、ようするに工業や商業、他には保育や料理なのどの専門的な分野を勉強するのだろう。


 まぁ俺は別に専門的な分野の才能があるとは思えないし、今回はパスだな。


「ここまでくるとだいぶ絞れて来たんじゃない?ようするに君は進学校を選ぶわけだよ」


 そうだな確かに俺は進学校を選ぶというとこまで絞り込めた。

 だが、


「進学校ってかなり数があるだろ。そこから絞るとなると…」


「絞るための最初の項目は、学力だよね」


「だよなぁ……。ってもいまいち分からないんだよな」


「だよね。それに学力は勉強すればいいし、次は場所とかかな?」


「場所か、まぁ近ければ近いほどいいとは思うが」


「そうだね。君はそういう人だ。でもここから一番近いところでも電車の距離なんだよね」


「そうか、ならあんまり変わらないか?」


 電車の距離、と言ってもその中で近いところを探すか。

 だがやはり学力の問題はついて回るし、ダメだな考えれば考えるほど分からなくなる。


「ほかに絞れるものは……何かあるか?」


「まったく、君は最後まで私任せだね。他にかぁ………あ!」


 幼馴染は何か思いついたようだが、なかなか言ってはくれない。


「どうした?何か思いついたみたいな声だしたのに」


「いやー、まぁ、何というか……」


 どうにも歯切れが悪いな。

 俺はそこまでして言おうとしないことがっどんあことか気になり、言いよると、あきらめたように口を開く。


「はぁー。言っても引かないでよ」


「あぁ、それはいいが。それでなんなんだ?」


「えっとね、好きな人がいくかどうかっていうのも選ぶ理由に出来るんじゃないかなって」


 なるほど好きな人か。


「なるほどな。好きな人に限らず友達がいるかどうかでもいいよな」


「そ、そうだね」


「そういえばお前はどこに行くんだ?」


 俺が聞くと、幼馴染は一瞬ビックとなったがすぐに答える。


「えっと、一応近くの進学校」


「なるほどな、そこなら俺でも行けそうか?」


「え?う、うん。勉強すれば行けるはずだよ」


「そうか……。じゃあとりあえずそこを目指そうかな」


「え、でも、いいの?」


「いいの?ってお前が言ったんだろ?」


「え!?それって、つまり、あの……」


「友達と一緒の学校を選らぶのもいいって」


「え、あぁそういうこと……」


 幼馴染はがっかりしたように肩を落とす。


「それに、お前と一緒のほうが楽しいだろうからな」


「……!そういうことなら仕方ないな!なら私と一緒の学校に行けるように勉強教えてあげるよ!」


 幼馴染は笑いながらそういう。


 まぁ勉強はしたくないが、教えてもらえるならありがたく教わろう。

 せめて、こいつと一緒の学校に入れるように。






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