11章 入院1日目 その1
前日の打ち合わせで、入院する時間は午後1時に決まっていた。朝7時過ぎに朝食をとるもまだ眠気が残っている。とはいえ入院に備えて持っていくものの準備をしなければならない。持ち込めるものは限られるので、小さめのトランクに3、4着の着替えとタオルなどを詰める。気が乗らないため、少しやっては休み、別のことをしてまた続きを行うという感じだった。
午後になるともう出発する時間だ。入院する病院は電車で20分程度とさして遠くない場所にある。駅からはタクシーを使い5分程度だ。付き添いというか保証人という形で父親が一緒だった。
精神科のみを扱う閉鎖病棟と聞いていたので、小さい病院を想像していたが、思っていたより大きく、キレイな病院であった。病院の雰囲気をみて、少し落ち着いた感じで受付をすませる。しばらく待つと、直接先生と話をする前に予診が行われた。そこではこれまでの病歴や家族構成など身辺的なことをひととおり聞かれた。この話のあと主治医との対面となったが概ね同じことを聞かれた。予診の意味はあったのか不思議に思ったが、こういう手続きを踏む必要があるのだろうとあまり難しく考えることはしなかった。ただ、ひとつだけ違うことに気づいていた。主治医は、私の口調や受け応えを慎重に見ていたのだ。私個人としては、気持ちの落ち込みはあるにせよこの段階で希死念慮はあまり高くなかった。1日経って落ち着いたのと入院することで実質的に自殺などさせてもらえない環境にあるという妙な安心感があったのだ。そして最後に主治医は私にこう言った。
「入院するにあたり自殺(未遂)をしないと約束できますか?」
もちろん私の答えは決まっていた。
希死念慮に打ち克つ精神科閉鎖病棟入院記 真田タカシ @Ardan0821
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