第3話 滅獣の理
それは内なる魂の外殻。
或いは、神が人間に与えた知性とも。
アルマは
故に、発現に成功した者は、誰しもこの退屈な訓練を
「まだまだ形がばらばらだ。最初のイメージを思い出しな」
通常の剣の稽古は兄弟の数からジルケが付かないことも多いが、こればかりは付きっきりで見ている。ジルケ以外に教えられる人間がいないのだ。その技も、その恐怖も。
これは、二人きりの秘密の稽古だ。本格的な稽古を始める際のジルケの言葉に、アルマは心躍らせたものだが、それはとても地道で退屈なものであった。その退屈が1時間も2時間も続くのである。まだ遊びたい盛りの少女はときに歩きながら、走りながら、ときにくるくると回りながら発現させる。
その
「ほら! 寝るんじゃないよ! 死にたいのかい!」
理由は説明してくれなかったけれど、刃物なのだから、それは当然、危ないわよね、とアルマは思う。大きくなって聞いたときには違う理由もあったのだが、今のアルマには開示されない。
さて、
「
そう言ってジルケはアルマの頭を撫でまわし、話し続ける。
「少ししか教えてないのに、動きながら具現化させるなんて、本当にお前は
褒められたアルマは得意満面といった笑顔で、興奮気味に返事をする。
「はい!
「うん、良い返事だ。次の稽古だけどね、実は
「滅することが出来ないケモノがいるのね! 分かったわ! ……え? 倒せないの? そうしたら、私、どうすれば良いの?」
先ほどまでの元気が、目に見えて急速に
「これも、……そうだね。見せてから説明するのが早いか。いいかい? これからあそこにある
「はい」
ジルケが指さした高さ180センチほどの
「貫け。ハーツアウスシュタール」
そして、切っ先を
「闇に眠れ。
それはいつもより静かで、そして気迫のこもった
するとジルケの大剣の剣身がいくつもの細かい四角形に分かれ、それぞれがばらばらに回転しながら消滅していく。同時に
「
「今のがケモノを滅する技、
「
「ああ、本当だとも。
「だから、
「そうだよ。それでだ、
「
「ナハトルーエが基本で、そして最強だからだよ。よほどグズグズしない限りは、あの箱に囚われたケモノは抜け出せずにそのまま消滅するんだ。しかも箱の大きさもイメージ次第で変えられる。ただ、動き回るケモノにはなかなか難しいのだけどね」
「分かったわ。私、やってみるからやり方を教えて」
「やり方自体はとても簡単だよ。まず、
「動作はいらないの?
「いらないよ。あれは
「分かったわ」
アルマはそう言って
「響け! ドナ・フルーゲ!」
「闇に眠れ! ナハトルーエ!」
しかし、ドナ・フルーゲは何も変わらず、
「闇に眠れ。ナハトルーエ」
今度はジルケと同じように切っ先を
「流石のアルマも苦戦しているようだね」
ジルケはそう言いながら、近くのコブカエデに近づき、根本に落ちていた大きめの葉を拾ってきた。
「私としたことが、教え方を忘れるなんてね」
何をするのかと見ていれば、アヒルの水かきのような葉を器用に指で
「
手の中で着々と形作られるおもちゃに興味津々のアルマが思わず聞くと、小型ナイフで箱の表面を薄く傷付ける作業を続けながら、ジルケは答えた。
「これはね、アルマが成功するためのお
そう言ってジルケが指さした面には何やら模様が出来ている。
「これは
「うん、正解だ。よくできました。……と、これで完成だ」
6面の全てに紋様を刻んだ葉っぱの箱を、潰れないようそっと手渡すと、アルマは色々に回転させながら楽しんでいるようだった。
「あ、分かったわ!」
「何が分かったんだい? 言ってごらん」
「この箱がナハトルーエなのね!」
「……その通りだ。それをよく目に焼き付ければ、上手くいくかも知れないよ」
「
先ほどまで浮かない表情だったアルマの顔は瞬く間に輝きを取り戻した。そして瞬きもせずにじっとその箱を見つめた後、再び彼女は剣を突き出し静かに
「闇に眠れ! ナハトルーエ!」
出来た、アルマは
しかし、まだ完成ではない。
「縮ませるんだ!」
ジルケの声にはっとした。苦労の末に出来上がった箱ではあるが、お手本通り、今度は急速に
そして
「1日目で成功させるなんて、アルマはやはり只者じゃないね。ただし、ナハトルーエが
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