第11話 エピローグ

 一宮は事務次官、下田は局長へと昇進した。JBが高校を卒業し、大学等への進学や就職していくテレビの特集が組まれ、少子化対策の成功と今後の日本の展望について総理大臣が語った。国民は、この制度に対しする賛成の意を示し、政権は安定していた。しかし、親を知らないJBの心の問題、そして、学校生活や社会におけるJBへの差別事案が頻発していた。にもかかわらず、ほとんど報道はされなかった。政府の圧力があったと思われる。

 ハナは法学部の大学生になった。何かある度に須藤医師相談し、心の平静は保たれていた。匿名で顔にぼかしを入れた形でハナの特集も放送された。

 ハナは思った。


「私は幸せなんだろうか。将来社会に出て、結婚もするだろう。そのときに親になれるだろうか。収容所以外の普通の家庭をほとんど知らない。」


 ハナの思いは複雑である。未来に対する不安もある。ただ、自分だけではない、数十万人の同胞がいることがハナの心の支えになっていた。

 少子化が解消される見通しが立ったことで人々の未来に対する不安は薄れつつある。闇をかかえたJB制度は現在も続いている。数年後には違った日本になっていることだろう。

 時は流れていく。

 ハナは夕焼けを見ながらつぶやいた。


「『明日と言う字は明るい日と書く』と昔の歌にあると先生が言ってたなあ。」


 大きな夕日が沈もうとしていた。


(エンドロール「夕焼けきれい」Jumping Stnes)

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国有ベイビーズ @omoridai

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