第18話 最終話

「出来上がりましたわ」

「本当ですわね」

籠瀬学園3年1組。

そこの教室にはピンクのメイド服に生徒が身をつつんでいた。

彼女達のクラスの文化祭での出し物はメイド喫茶。


勿論、彼女達はメイドにお世話をしてもらう立場で、実際には縦のものを横にもしないお嬢様集団。

これは普段、メイドから世話を焼いてもらう立場である彼女達がメイドの仕事を学ぼうという勉強が目的。

静真は鏡の前で全身をみながら、少し考える。

魁吏には事前に言っておいた方がいいか・・・。

誰かのいう事を効くメイドになっていると知れば、文化祭当日に嫉妬で発狂するかもしれないし。

静真を誘拐してしまうかもしれない。



―――朝 6時60分。

静真は文化祭で使うメイド服をきて、花房の協力の元。

魁吏の私室を訪れた。


「静真。朝からどうした?」


天蓋付きのベッドで、魁吏はうつ伏せで眠たそうに声だけを部屋に入って来た静真に掛ける。

「なぜ分かるの?」

「足音」

「本当に人間?驚かそうと思っていたのに。残念」

そう言うと、魁吏は起き上がり静真の姿を見ると一瞬固まった。


「驚いた。今日の静真は俺専属のメイドか?それとも、いたずらっ子の妻?」


魁吏は静真をベッドに引きずり上げると、そんな彼女の上に膝を立て、その姿を見ながらまるで赤ずきんちゃんをオオカミが品定めをするように眺める。


可愛い。

お手製だろうか?

俺の為にわざわざ作ったという事は静真の性格ではないだろうが・・・。

「その選択肢の違いは?」

「質問に答えろ」

質問の意味が理解できないから聞いているのよと思いつつ。

静真はうーんっと考え。


「メイド」


その回答に魁吏は静真を抱きしめた。

「ちょっと、朝よ。変態」


「メイドがご主人様に口答えをするな」

耳元で囁かれ。

選択肢を間違えたと全身が真っ赤になる。

「じゃあ、妻!」

その瞬間、魁吏は抱き締めていた手を静真の頭、頬と手を滑らせる。

「ちょ!お誕生日が来るまで“お預け“!この痴漢、変態、セクハラ大魔王」


「いかがわしい所は触っていないのだが。まぁいい。お預けか」

魁吏はくすくす笑うと頬にキスをする。

「早く俺の物にしたい」


「もう魁吏の物よ」


幾度となく不健全性的行為を回避してきた魁吏だが。

静真のメイド姿は刺激が強すぎる。

花房は廊下でドアに耳をあけ会話を聞いており、そぉっとドアを開けた。


「殿下。おはようございます」


「おはようございます!花房さん。全然、魁吏は驚かなかったわ」

そんな静真に花房は、十分に驚いていますし。

この上なく機嫌が良いです。

大成功ですよと思いつつ、ベッドから出ようとする静真を眺める。

「逃げるな」

魁吏は静真のスカートを掴んで放さない。

「魁吏の痴漢っ!スカート掴み反対。花房さん、この人、何とかしてください」

静真は花房に助けを求めるのだが。


「自分が手を出せば、事態を深刻化させますよ?30分後に一緒に朝食を食べられるように用意しておきますので失礼します」

花房はそう言うと、部屋を出て行き静真はベッドに引き戻された。

「お前は俺以外に助けを求めるのか」

低い声にぷるぷると静真は首を振る。

「トンデモゴザイマセン。魁吏以外に、助けなど求めません」


***

「静ちゃん、おはよう。メイド姿も可愛いのぉ。文化祭の招待状をありがとう」

朝食の間には国王、王妃が着席しており。

「俺。招待状を受け取ってない」

魁吏は不満そうに静真を見る。


「しょ、招待状を渡さなきゃ。来てくれないの?」


行くに決まっているが、静真から貰えるものならなんでも欲しい。


渡し忘れていたわ。

魁吏は呼ばなくても来るだろうから。


「今。渡し忘れたという顔をしただろう」

「いいえ」

なんで分かるのかしら?

読心術?驚く静真に・・・。

「静真。なんで、分かるか教えてほしいか?」

「結構です」

怖いわ。

この痴漢、変態、セクハラ大魔王。

「静真。今、悪口言っただろ」

そんな魁吏に静真は呆然と魁吏を見る。

「仲良しさんねぇ。私も昔を思い出すわ」

王妃はそういうと、静真と魁吏の写真を撮る。


「なんで。今朝は朝食に国王夫妻がいる」

魁吏は花房に声をかける。

「私が声を掛けたの」

静真はそう言うと、魁吏は余計な事をっと呟きつつも4人で朝食を食べだした。


***

―――3月9日。

今日は高校の卒業式で、今日は私の誕生日。

卒業式が終われば王宮に行き私は魁吏の妻になる。

左手の薬指にきらりと光る一粒ダイヤの指輪をみながら、学校に行こうと八嵜公爵家を出ると門には真っ赤な薔薇の花束をもった魁吏がいた。


「お誕生日、おめでとう」


花束を渡され、静真はじっと薔薇の花を見つめる。


「学校まで送る」

静真は花束をみつめ、返事をしない。

「なんだ?俺の運転で登校したくないのか?」


「・・・指輪」


そう。

それは注文しようと思っていた結婚指輪。

「あぁ。ずっと見ていたから、昨日、出来上がってとって来たんだ」


「あぁ。今日、卒業式が終わり次第。入籍しよう」


「はい」


静真はにっこり微笑み車に乗り込んだ。

                            完

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ちょっぴり意地悪王子の溺愛事情 林檎の木 @ringonoki4111

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