第3話 力の正義
彼女は以前の戦いで自覚した。その力が全て自分の思い通りに動く「自分の力」であることを…
あれ以降も幾度となる戦いをこなし、そのたびにニュースになった彼女は、自分の新たな心の居場所が巨大怪物体との戦いであると感じ、学校に行く必要性を見いだせなくなり、学校には行っていなかった。最後の戦いから5日が立った頃、彼女は巨大怪物体が出現しないことに退屈を覚えたのか、かつて唯一の心の居場所となっていた学校へ足を運んだ。しかし、彼女は学校に来なくなる前と大きく心境は異なっていた。あの頃は学校しか心の居場所がなかったし、勉強しかやることがなかったため、どんなに馬鹿にされようと、どんないじめに会おうと彼女は渋々学校に足を運んでいたのだが、今は自身に満ち溢れていたのだ。あの力は彼女に自信を与えたのだった。
彼女が教室に入ると、教室は皆彼女に1度目をやると、すぐに話していた友達に目を戻し、雑談を再開した。授業が始まると雑談していた中流層と上流層の人は雑談していた口を止め、自分の席についた。彼女は以前の彼女では無くなっていた。以前はとても静かで、授業中の発表も自分から積極的にする人間ではなかったのだが、今日の彼女は先生が発表を求めるたびにほぼ必ず手を上げ、自信満々に発表した。他の生徒からは彼女がとてもでしゃばっているように見えた。突然のキャラ変に多くの人が困惑した。
そんな調子で、今日の授業が終わり、帰りのホームルームも終えて放課後になった。すると早速彼女は上流層の人間に話しかけられた「何でしゃばってんだよ。しばらく休んで久しぶりに姿を表したら、いきなり自信げに手を上げ続け、目立ってるじゃねぇか。調子乗るな!何があったのかは知らんけど、あんたみたいなのは目立たないくらいがちょうどいいんだよ!目立つのはわたしたちでいいの。わたしたちを目立たせるのが周りの仕事だし、みんな手を上げない理由は意見がなかったり、緊張しているからというよりも、そうゆう暗黙の了解があるからなのよ、この世間知らず!あなたは今までなんで意見を発表しなかったのかと思ったら、自信がなかったとかそうゆう理由だったわけ?それが、学校休んでいる間に何かしらの原因で自信を得て、学校に復活したら、何よあれ!もう少し身の程をわきまえることね!」そういうと続けて別の上流層の人間が彼女胸ぐらを掴み、こういった「今、そんなの知らないし、あなたが勝手に作った決まりでしょ?とか言おうと思ったわね?当たり前よ、力あるものが常識を作るわけだからね。私たちが常識よ。」そう言われた彼女はにやついてこう言った。「その言葉、そのまま返していい?あなたたちは非常識。なんでかって?今、ここで一番力があるのは私だから、私が常識を作るのよ。つまり、私が非常識と言えば、あなたたちは非常識なの。」そう言われた上流層のクラスメイトの人は胸ぐらから手を離し、彼女を地面に下ろすと、すぐさま彼女の顔に殴りを入れた。
「うっ!」それを食らった彼女は地面に倒れ込んだ。変身していない状態で攻撃を喰らうことは久しぶりだったので、想像を超える痛みだった。彼女は痛みを堪えながら立ち上がり、ポケットからデバイスを取り出すと、それを耳に取り付け、すぐさま拳を天に突き上げて「プリキュア、セットアップ!」と声を上げた。その声を聞きつけた他のクラスの人間がこの教室の外へと集まって、教室の中を覗いた。彼女らの視線の先には移った彼女の姿は紛れもなくキュア/そのものだった。教室の外の野次馬の気配に気がついた彼女はすぐさま教室の外に出て、集まった野次馬たちにこう告げた。「今、通報したり、SNSに上げようと考えていたよね?それをしたら容赦なく殺すわ。力あるものがルールを作るなら、上流層の人間が力で地位を築いたなら、私も同じことをするわ。私には力がある。今、ここのルールは私が決めるし、それに反した者には容赦なく実力を行使するわ。ニュースを見ているなら、私の力を知っているはずよね?」すると上流層の人や、彼女の声を聞きつけて駆けつけた野次馬たちは怯えながら教室から出ていった。彼女は力を行使することなく、その言葉と、姿だけで今まで不可能だった上流層の人間を脅かすことができたのだ。ことが済み、彼女は自分の周りから誰もいなくなったことを確認すると、返信を解除し、デバイスを耳から外してポケットにしまった。
家に帰ると彼女はすぐにSNSをくまなくチェック(エゴサーチ)したが、今日の学校での返信をリークする投稿は見つからず、安心した。
その時、彼女の元に、あの小さな生物がやってきて、巨大怪物体の出現を知らせた。彼女はそのまま家で変身を済ませ、家の外へ出て飛行し、手元の端末に送られた座標へと急いだ。いつも通り、その知らせから5分もたたないうちに巨大貝物体の元へと駆けつけることができた。
今回の巨大怪物体はいつもよりも手強かった。なにせ、彼女の放った銃弾(非科学的なエネルギー弾)が当たっても、5秒ほどでその傷は再生するし、剣で腕を切り落としても、10秒程度で切り落とされた部分が新たに生えて元どおりになってしまう。その10秒の隙に頭に近づいて、殴りを食らわせても、頭は吹っ飛ぶが、その頭もすぐに生え変わり、元どおりになってしまうのだ。彼女はとても戸惑った。
するとそこにようやくあの小さな生物がやってきた。彼は彼女にこう告げた「キュア/、この敵は部分的にダメージを与えてもすぐに再生してしまう。この敵全体を焼き払う必要があるんだ!君に備わっているクアッドパラレログラムスラスターには、超高出力な広範囲ビーム機能が備わっている。敵を焼き払うことを考えながら、両手を敵に向けて伸ばしてみて!」「クアッドパラレログラムスラスターってなに?」彼女は彼に質問を投げつけると、彼はこう答えた「君に両肩と両腰についている平行四辺形の板状のスラスターのことだよ、それの正式名称だ!」「あれってそんな名前だったの?!わかった、とにかくやってみるわ」彼女はそう返事をすると、飛行して敵よりも高いポジションを位置取ったのちに、両手を敵に向けて伸ばした。すると彼女についていた四つの平行四辺形が彼女から離れ、彼女の右上、左上、右下、左下に移動すると、前方の敵に向かうようにそれぞれ向きを変え、前方にビームを放った。4つのビームは途中で合流し、とても太い1つのビームとなって敵に向かって一直線に放たれ、それは命中した。ビームの照射を終えた時、もうそこには敵の姿はなかった。
戦いを終え、彼女は再び施設へ帰宅した。心配だったのでもう一度念入りにSNSをエゴサした。しかし、今日の教室での返信をリークする投稿は一つも見つからず、安心した。彼女は気がついた。「力はいくらでも使っていいんだ。バレると危険だけど、もし私のことを知った人がいるのなら、この力で情報を止めればいい。この力はなんでもできる!」心の中でそう声をあげて、彼女はとても喜んだ。今まで勉強することでしか自分の存在を示すことができず、勉強することしか知らなかった彼女が初めて勉強以外のことに目覚めた瞬間でもあった。この世の中が、力の正義によって成り立っているということを悟った瞬間でもあった。
あの出来事以来、彼女へのいじめは一切なくなった。 皆、彼女の力におびえて、彼女に手を出すことができないからだ。彼女はもう、その力が自分に与えられた自分のものであると自覚し、その力を使えばどんな理不尽な要求も通せてしまうことや、人の意見を曲げることができることを十分に理解し、何かしたいことがあれば、すぐに力を見せつけ、人を従わせるようになっていった。この様子については、学園外に漏れることはなく(少なくともネット上では)、学園内だけにその情報は留まっていて、キュア/の正体がメディアや研究機関に知られることはなかった。次第に彼女の行動はエスカレートし、彼女は力をちらつかせて人を屈服させることに快感を覚えるようになっていった。キュア/が人類の希望から、人類の脅威へと変わる瞬間ともいえた。
ある日、いつものように上流層の人間が、自分よりも下の地位の人間に力を振るって屈服させているところに乱入して、その力で上流層の人間を屈服させていたとき、教室の窓から一人の少女が飛び入ってきた。その少女は、前髪は七部分けで、後ろ髪は腰までの長さがあり、極端に長いもみあげは、後ろに流れ、後ろ髪に合流すると言った独特なもので、とても特徴的な髪型をしていた。服装はとてもかわいらしく、派手に装飾され、上半身は華奢に見えるように細身に作られていているのに対して、下半身には大きなスカートがあしらわれていた。その服は全体的に落ち着いた、高級感のある蒼色をしていて、所々に水色で可愛らしい装飾が入れられたかわいらしい衣装と、特徴的なその青い髪は、場にいるすべての人間の目を釘付けにした。彼女は教室に入るとすぐさまキュア/にこう告げた「あなたは自分の持っている力の恐ろしさを、自覚しているのかしら?これはそんな安易に使っていいものではないわ。最悪、世界の秩序を乱すことになりかねない。このままいけば、あなた自身が世界を征服し、独裁世界を作りかねないわ。今のあなたは私たち人類にとって、脅威でしかないのよ。その力は、すべてを終わらせることができるほどに強力だから。」その言葉を聞いたキュア/は、その言葉に対する答えよりも先に、彼女にこう訪ねた「あなた、誰?どうやってここに入ってきたの?教室3階の窓から飛び入るなんて、常人にはそんなことできないわ。」
【新解釈】Precure by Yuzuki @RRENN
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