第2話 力の研究
その力が世界にもたらした衝撃は大きかった。その日の夕方、ニュースは巨大怪物体の出現と、それを倒した謎の少女のことで持ちきりだった。多くのメディアでは巨大怪物体の出現のことよりも、巨大怪物体を迅速に倒し、自衛隊の到着前にことを済ませてしまった謎の少女のほうが特集の比重が圧倒的に高かった。ネットニュースでも、ヴィデオニュースでも、彼女は大きく取り上げられ、それを見た彼女は新たなやること(心の居場所)ができたように感じると同時に、自分が他の人の役に立てることを知った彼女はとても嬉しくなっていた。
彼女が昨日の出来事の余韻に浸っているうちに、世界は大きく動いていた。数多くの研究機関が巨大怪物体とともに出現し、巨大怪物体を迅速に倒した謎の少女について研究を始めると宣言し、大量の研究室が設置されたのである。各研究室は昨日の戦いの際に録画された防犯用の高解像度カメラの映像を頼りに、様々な検証、考察を行った。そして、その防犯カメラに収録された映像データに入っていた音声から名前がキュア/であることが各研究室およびメディアの間で共通認識となった。以後、彼女はメディアからも、研究機関からもキュア/と呼ばれる。そのことをもちろんメディアは取り上げたので、大衆からも巨大怪物体を倒した謎の少女はキュア/であると認識された。
学校に足を運ぶと、友達を持ったスクールカーストの中流層から上流層のクラスメイトたちは皆キュア/のことを話していた。複数の内輪グループに分かれて会話が行われていたが、そのグループも話題はキュア/のことだった。このとき、彼女は自分お存在を確立できるほどの力を手に入れたと認識した。そして皆、キュア/に対して憧れやロマンを感じていた。自分があこがれの対象になったことも認識し、彼女のやること(心の居場所)は本当に勉学だけではなくなり、彼女は勉学の呪縛から開放される事になった。
学校が終わり、家に帰る途中、彼女の元に浮遊する小さな生物がやってきて、巨大怪物体の出現を知らせた。すると彼女はその生物にこう伝えた「わかった。変身したらここに戻ってくるから、戻ってきたら場所を案内して!」「賢い判断だ。人目のつかないところで変身して、なおかつ、巨大怪物体の目の前で変身するのではなく、今返信することによって、駆けつけるのにかかる時間も短くなる。何せ、キュア/はとても早いもんな。」そう言って彼女を見送った。この会話の様子は近辺に防犯カメラがないことを確認した上で、妖精がこのことを知らせる場所を選んだので、録音されることはなかった。
彼女はその場を後にして、妖精に見送られながら少し離れた場所にある公園の公衆トイレに入って、その中でポケットからデバイスを取り出すと、それを耳に装着した後、拳を天に突き上げこう言った「プリキュア、セットアップ!」その後、トイレから出てきたのは紛れもなくキュア/だった。彼女はお得意の超高速移動で先ほど小さな生物と話した場所へ戻った。彼は約束通り、場所の案内をしようと思ったが、よく考えると、彼は自分自身がキュア/ほどのスピードで移動できないことに気がついた。そこで彼は彼女の手元の端末に、巨大怪物体の出現が確認された座標を送ることでその約束を果たした。「君の手元の端末に巨大怪物体が出現した場所の座標を送ったよ。手元の端末で確認してくれ。」すると彼女は先日、クラスの担任に遅刻の旨を伝えるメールを送る時と同じように、掌が顔に向くようにして手首軽でをそうように縦長の仮想画面を出現させ、指でそれをなぞるように操作して、地図アプリを開いた。「わかった、そこね!」そういうと彼女は一気に加速し、車よりも、はるかに早いスピードでその場所へ向かっていった。カーブでも、スピードをほとんど落とすことなく綺麗に曲がる(両肩と右腰と左腰についた平行四辺形の板が力の出力をリアルタイムに調節することで、それが可能である。また、両肩の板はダウンフォースを発生させるように板の向きを変えているので、意図せず飛び上がる心配はない。)彼女はまさしく、この間だけは地上最速の生物だったと言えよう。
ものすごく離れた距離だったが、彼女の移動速度ではたったの5分足らずで巨大回物体の元へと駆けつけることができた。すると、彼女は報道や周りの人の会話などから自信が持てたのか、何の迷いもなく左後頭部に浮いているツインテールの片方を掴み、手前に持ち出した。するとその髪はライフル銃に変形。すぐさま彼女は巨大怪物体の頭を狙い、引き金を引いた。その玉(玉は物理的なものではなく、非科学的なエネルギー弾)は命中し、巨大怪物体の頭にダメージを与えた。
すると今度は巨大怪物体が彼女に向けて拳を振り下ろしたが、彼女はそれを避けながら、手元のライフルを投げ捨てすと同時に、右後頭部の浮いているツインテールの付け髪を手に取って振り下ろされた拳にその付け髪が変形した剣を振りかざすと、その拳は綺麗に切断された。投げ捨てられたライフルは、投げ捨てられた時に髪の毛に戻り、左後頭部の定位置に戻っていた。
彼女は地面を思い切り蹴り上げ、高く飛び跳ねると、両腰の平行四辺形が彼女の足の横に移動し、足に沿うように向きを変えると、その平行四辺形から地面に向かって力が放たれ、彼女はその反作用で飛行。さらには、彼女が思った通りの高度で静止することまでできた。巨大怪物体は空中にいる彼女に残った一つの拳と、拳のない腕を振りかざしたものの、彼女の持つ剣によってそれらは綺麗に切断され、彼女が頭の前に来ることを阻止することが出来なかった。
巨大怪物体の頭の前に来ることが出来た彼女は、剣を投げ捨てた。その投げ捨てられた剣は髪の毛に姿を戻し、右後頭部の所定位置に戻っていった。彼女が握り拳を作り、無防備になった巨大怪物体の頭に殴りかかる構えをすると、右肩の平行四辺形が彼女の拳の横に移動し、後ろ向きに力を放出した。その反作用で、拳はとんでもないスピードで前に突き出され、恐ろしいほどの威力の殴りで巨大怪物体の頭を吹き飛ばすと、残った首から下と、吹っ飛んだ頭はそれぞれ粒子の塊になり、ミルミルうちに消滅していった。
彼女は今回の戦いでやったこともないし、彼から知らされてもいなかった飛行とパンチに挑戦した。結果、彼女はこの力についてあることに気がついた。その時彼女は嬉しそうにこういった「この力、私のしたいことをサポートする力なのね。私がやろうと思ったことに対して、この力は協力してくれる、いや、私がこの力をコントロールしているのであれば、私が使う力、すなわち私の力であると考えていいのかしら?私はこれだけの力を手に入れたのね!だったら…」
一方その頃、その戦いの様子を記録した防犯カメラからメモリーカードが警備会社に回収され、その警備会社から彼女を研究する数多くの研究機関に向けてその映像が送信された。(その警備会社は研究機関にキュア/の映像を提供する契約を締結し、とても儲かっていて、本業の警備よりもこちらでの収益が大きかった)今回の映像はとてもみのりが大きかった。なにせ、前回の映像では観測できなかった飛行と、超高速なスピードて突き出される拳が確認されたからである。これはすぐさまニュースに取り上げられ、キュア/に飛行能力と、強力な格闘技(殴り)があることはすぐさま世に知れ渡った。
地球上の人間にとって脅威である巨大怪物体が出現すると、キュア/はそこに現れ、次々とそれを倒していく姿は多くの人にとって、希望であったが、一部の研究機関は、キュア/の力は人類の脅威であると考え、早急にその能力を解明し、それを再現した兵器を準備する必要があると考えた。
戦いがあるたびにその映像は研究機関に送られ、各研究機関には多くの映像が蓄積されたのだが、その戦いがあった地にはキュア/に関する資料が何一つ残っていない上に、映像からは数々の能力が明らかになるが、その原理を特定するにはとても資料が足りなかった。そのため、研究は進展を見せず、しばらく停滞していた。研究の成果が見込めないことを悟った研究機関は、この分野の研究から撤退し、キュア/への世間及び研究機関からの注目度は以前よりも低くなった。(それでも依然として高い注目度をキープしている)何よりも謎とされ、多くの研究者を悩ませたのが、キュア/が目撃されるのは巨大界物体が出現した時だけであるということだった。そのため、戦っているところの映像しかなく、生体について研究する資料も極めて少ないのである。
超人的な力を持ち、現時点の手がかりでは生体において不明な点が多く、その上、その力は現在の科学を明らかに超越していることから、国連はキュア/を人間ではなく未確認生物であるという見解を発表すると同時に、キュア/が人間の味方である可能性は高いものの、いつしか人間の驚異にもなりうるという見解も示し、人々のキュア/への認識も大きく変わり、そのその存在は、未来の人類の危機であるというのが一般認識となった。
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