犬に転生するらしい

プゴ吉

第1話

白い壁紙と床

安いパイプ椅子二つに折り畳み式の長いテーブル

殺風景な部屋、面接会場と言えば分かりやすいだろう

男が一人

その向こうにはドアが


あと、5...4...3...2...

心の中で彼は数える

1と唱えた瞬間

テーブルを挟んだ向こう側には

女子高生が現れた


ブラウスの上にジャージをはおり、短めのスカート屋内用の運動靴を履いていた


男は「裁きを始める」と部屋中に響き渡るような声で言った


少女は豆鉄砲を食らったような顔で男を見つめるがすぐにその視線は部屋全体へと移り辺りを見回している

男はそれを気にしてなのかそうではないのか少女に着席を促す

少女は会釈をし促されたままにパイプ椅子に腰を掛ける 


少女「すみません、一ついいですか?」


男「はい」


少女「これってドッキリですか?」


男「いいえ」



少女は戸惑いながらもう一度



少女「これって、ドッキリ、ですよね?」


男「いいえ、これはドッキリではありません」


少女はこの訳の分からない状況を理解することに務めるようだ



少女「ここはどこですか?」


男は

正確ではないような気がするがマニュアルにはOKとあったしこの表現を使うか

などと考えながら一言



男「ここは地獄です」


少女「冗談ですよね?」


ちょっと小馬鹿にしたような、もしくは苦笑いなのか

そんな笑顔を浮かべながら

少女は聞き直す


男「残念ながら冗談ではありません、そして俺はマジです」


少女「あなたは誰ですか?」


男「閻魔です」


少女「あの閻魔大王様ですか?」


男は

複数いるが....

と申し訳なさそうに心の中で謝りつつも


男「そうです、俺があの閻魔大王です」


ちょっと見栄を張った


少女「なぜ私はここにいるの?」


男「それはあなたが死んだからです。思い出してみて下さい」


少女は席をたちパイプ椅子の周りをグルグルと歩き回る

そして、ひらめきが一閃

電球に光が点るように


少女「思い出したっ」


死んだとは思えないくらい明るい表情を浮かべた

そして白いブレザーは赤くそまり身体はぐちゃぐちゃになっていく


男「あなたは車に轢かれて死んだ、ですよね?」


少女「そう!私は車に轢かれて死んだ!」


少しの間をおいて

少女は軽い口をまた開く


少女「死ぬには若すぎた」


男「お前がそれを言うのか!?、まぁ、分からない訳ではないが...平等に訪れるものだし」


少女「私天国行きでしょ」


とわかったように少女は言った

返ってきたのは少女の予想に反した

「いいえ」

この一言だった


少女「なぜ!?」


男「確かにあなたは生前、ほとんど悪行を起こさなかった。けど最後に罪を犯した」


最後...


少女は思い返す


私、靴をなくして、家に取りに帰ろうと運動靴を履いて

それで学校をでて

赤信号を待ってて

楽になりたいなぁなんて

思って

前に二、三歩踏み出して

車に轢かれそうになって

生きたい

って思ったけど

遅かったんだ

あれ?でも悪いことはしていないよね


少女「嘘だ」


取り乱した少女は男の胸ぐらを掴み叫ぶ

その力の強さに男はぐらついたが

少女の掴む力は弱くなる 

力が抜けたように腕をおろし席に着く


男「話を変えよう、あなたの未来の話だ」


男「あなたは生まれ変わる」


男はバインダーを手に取り彼自身が描いたであろう絵を見せながら


男「ハエ、カエル、イヌの中から選んでいいよ」


優しい表情で言う

ハエの絵は普通に上手かった、見たくないくらい

カエルの絵は鳥獣人物戯画の模写だったツッコミたかった

犬の絵はなぜか2本足で立っていて子供が描いたようなけどどこか愛らしいそんな感じだった


少女は

「犬」

と即答する


男「オススメしようと思っていた、いい選択だと思う。ドアの向こうで指示を待って下さい」


少女と男は立ち上がる


男「もっと自分を大切にした方が良かったな、来世でまた会おう、幸運を祈る」


少女「バイバイ」





























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