第2話
day2
梨花の家の近くに、2DKのアパートを借りた。彼女に相談したら「君はそんなことしなくていいのに」と寂しそうに笑った。
「僕が一緒にいたいんだ」と言うと「じゃあ一年限定だから良いとこ住んじゃおっか!」とはにかんで笑った。
2人で物件を探した。そんな時も無情にもタイマーは梨花の時間を奪っていく。
僕が仕事に行っている時間、梨花を1人にさせたくなかったから梨花の実家の近くの家のアパートに決めた。
仕事を辞めて梨花とずっと一緒にいたいと言ったらこっぴどく怒られた。
「あなたにはまだまだ先の人生が待ってるんだから!ちゃんとしないとお嫁さんに行けなくなっちゃうよ?」
お嫁さんって…なんか古い言い方だし僕は男だしと思ったけど梨花の目が潤んでいて、だから小さく「はい」と頷いた。
家賃は折半で他の諸々も折半することに決めた。梨花の方が圧倒的に家にいる時間が少ないんだから3分の1でいいよと言ったけど「あと一年で1000万も使い切れないんだから気にしないで」と笑った。
「梨花貯金そんなにあったんだね」
驚いて咄嗟にそんな言葉が出てしまった。
「ワーキングホリデーとか行ってみたかったから。でもあと一年で死ぬんだったら別に英語とかできなくてもいいし、一流企業に勤める意味もないし。そりゃあね、普通にちょっとだけ長生きできるなら色々頑張ろうかなって思うけど私にはリミットがあるから。目先の幸せを大事にしようって決めたんだ。終わりが見えてるってあながち楽だし悪くないのよ?」そう言ってまた梨花は寂しそうな笑みを浮かべた。
梨花のやりたかったこと、全部やりたいと思った。梨花がもし僕の前から消えてしまったとしても。
内見が終わり、今日から新生活がスタートした。「ベッドの枠はいらないからマットレスだけでよくない?」梨花がそう言った。僕もそう思っていた。「だよね、枠にとらわれないって最近よく聞くし、それに1番大事なのはテレビだよ!YouTube見れるテレビ欲しかったんだ〜」梨花が嬉しそうだ。YouTube恐るべし。ファイアTVを導入するだけでこんなに喜んでくれる彼女はそうそういないだろう。
僕が洗濯機のセッティングをしている間に梨花が夜ご飯を作ってくれた。
今まで付き合ってきてどちらも実家に住んでいたので彼女の手料理を食べるのはこれが意外にも初めてだった。
どうやらオムライスを作っているようだ。りんかちゃーんとからかいに行くと「邪魔しないでよぉ」と可愛くあしらわれた。
どんなドラマにもあるように僕はケチャップ担当大臣に任命された。
とりあえず「りんかだいすき」と書いた。
そうすると、梨花が今度は僕のオムライスに「わたしも」とケチャップでなぞった。
なにそれと笑い合っていただきますをした。
味はなんだか美味しくて、なんだか分からない涙が伝った。
ずっと梨花のごはんが食べたい。ずっと梨花の笑顔が見たい。それだけなのにどうして何も悪いことなんてしてないのに叶えてくれないんだろう。滴る涙は決して梨花に見せてはいけない。「涙が出るほどおいしいよ」そう言ってこの感情を誤魔化し笑った。
今日は土曜日なので明日から家具や雑貨の買い出しに行こう。
梨花の前では爆弾のことなんて一切忘れさせるように振る舞おう。
ずっと一緒にいたかった @hinano0213
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