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授業の開始のチャイムが鳴った。
どうやら転校生の二人はそれぞれのペットの奪還に失敗したらしい。
「うぅ……とーかぁ」
「とーかくんって言うの?あの狐」
「貴方は……」
「あ、僕
何となく声を掛けてみたらしい。
あ、ここからは天才名探偵の
「
「よろしく!」
「ところで、
「ああ、行方不明みたいなんだ……。」
そう言いながら顔を伏せる
「……私知ってるの。
「ほ、本当に!?」
へぇ、さやちゃんもやっぱり名探偵なんじゃないの。僕には敵わないけどね。
ん?でも……。
「それ先生には――――」
「まだ話してない。先に貴方に話した方がいいと思ったから」
ふーん。そんなにそいつが大事なんだ。
「でもここじゃあ他の人に聞かれちゃうわね」
「あ、だったらさ。放課後家においでよ!独り暮らしだし何も面白いものはないけど――――」
ん?
「あら。ありがたいわね――――じゃあ放課後にまた」
「うん、またあとで!」
おい
『俺』は許さないぞ。
――――――――――
「
「
放課後、
「さぁ、行こう!」
「あ、待ってとーか……」
「この学校の先生厳しいから一週間くらいしないと返してくれないよ。大丈夫、動物とかならちゃんと面倒見てくれると思うよ」
「……」
怪訝そうな顔でその後ろ姿を見つめる
「家、学校から割と近いからもうすぐ着くよ!」
「そう……」
そして5分くらい経った頃、一軒家が見えてきた。
その家は大きすぎず小さすぎない一般的な造りをしていた。
「さあ入って!」
「お邪魔します」
玄関には家族写真が置いてあり、親らしき人物と
「この奥の部屋がリビングだよ。お茶出すから待ってて!」
「……ありがと」
リビングは綺麗に片付けられているが、本人の言う通り物は少なく殺風景だ。
「はい、お茶。麦茶でいいよね?暑いし」
「……
一息。これを言うともう後には戻れなくなる事を彼女は知っていた。そして今回は”何かが違う”という事も。
「今は夏じゃない。冬よ」
「――――え」
リビングに置いてあるカレンダーは2月になっていた。そう、学校の掲示板の数字も確かに2月だったのを確認した。写真も撮ってある。
「今は2月。普通に考えて冬よね?なのに夏なのは貴方の仕業ね……『主人公』」
続ける。
「そして
「殺したよ」
何でもないようかのように答える。罪悪感など全く感じられなかった。まるで『主人公』なんだから当たり前だとのように。
「だって僕主人公なんだよ?ヒロインがいて当たり前。
「……殺した?」
やっぱりおかしい。過去に出会った
「父さんと母さんもだよ。僕には必要なかった。むしろああしろこうしろうるさかったから殺した」
「貴方……」
「僕冬嫌いなんだ。寒いの苦手だし病気流行るし、汚いだろ?不衛生だ。咳してるやつ見るとイライラするんだよ」
何か嫌な予感がする。まず
今回は守ってくれる人が居ない。自分の身は自分で――――。
「っ……」
「ああ、そのお茶ね。薬入れといたんだ。大丈夫睡眠薬だからちょっと眠くなるだけだよ」
薄れゆく意識の中で何とか抵抗しようとするが、上手く体が動いてくれない。
「ねぇ君かわいいし頭もキレるみたいだからさ、新しい『ヒロイン』になってよ」
駄目だ、これはいけない。刀架、早く――――。
「残念、その子僕のヒロインなんだ」
不意に聞こえる声。よく聞き慣れた声。
――――私はその声が好きだった。もう聞けないと思ってたのに。
「……何でいるのかなぁ
「さやちゃん、相当焦ってるだろ。君の
そうだ、イレギュラー続きなのと眠気で全く頭が回っていなかった。
――――教えたつもりないのに。そう思いながら鍵を握り締める。
「
「なに?邪魔なんだけど」
「邪魔なのはお前だよ」
顔が見えない、彼は今
だが声の圧が凄い。こんな彼の声を聴くのは”2回目”だ。
「いいか
……あの人も自分の事を”俺”って言ってたっけ。
何気なく鏡に映った姿は別人のように見えた。
「無理だろ。何故かって?僕がこの物語の『主人公』だからだ!」
「はいはい、そう言ってられるのも今のうちだよザコキャラクン」
双方構えた。
「待ってアンタ戦えるの!?」
「安心しなさい、僕を誰だと思ってる?」
――――『僕の夢は』
「
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