最終話 日本
「イク! イク! またイッちゃう。そこダメぇええ!」
キキョウが叫ぶ。
バックから突かれ、クリトリスには電マを当てられている。短くカットされた彼女の陰毛は、汗と愛液と精液でベチャベチャになっている。
あれから一時間ほど。電マを当てられながらのフェラ、騎乗位、寝バックなどいくつもの体位でセックスを行い、いよいよチン之助の好みの体位であるバックになった。
赤いラインが入った見事な金色の尻尾。その付け根から頭にかけての白く艶めかしい女の背中。彼女が身を捩るたびにチラチラと見える乳房。すべてがチン之助の性欲を最後の人絞りまで出そうと訴えてくる。
ああ、もっと頑張ろう。この女をもっともっと気持ちよくさせよう。そう思いながらチン之助は腰を打ち付けた。
電マの凶悪なモータ音、二人の肌がぶつかる音、キキョウのあられもない嬌声が部屋をうるさく彩る。
彼女をもっと感じていたい。そう思うチン之助だが、やはり限界はある。
「あぁぁああ! ンン! もうダメ、もうダメ、わたしもうだめぇえ!」
「キキョウ、イクぞ」
「来て! 来て! チン之助! 私の膣内(なか)に出してえ!!」
背後から突かれながら、キキョウが叫ぶように言う。一階で出会ったときの、凛とした雰囲気からは考えられないほどの乱れっぷりだ、
そのギャップを、征服感を、なにより腰がとろけるほどの快感を味わいながら、彼女の一番奥でチン之助は射精をした。
キキョウがのけぞって白いのどをさらし、言葉にならない声を出す。
役割を終えたエネマグラがチン之助の尻から外れる。
二人はともにベッドに倒れ込んだ。
イッた余韻からか、キキョウの背中と膝は痙攣している。ゆっくりと寝返りをうつと、チン之助の首を愛おしそうに撫でた。
「貴方に、セフレが何人もいる理由がよくわかります。こんなにされるんじゃ、一人だととても身体が保ちそうにないですから」
「仕事も大してできない、金の匂いもしない俺に、あの娘たちはすごく良くしてくれてるよ」
「でも、それだけじゃ満足できず、風俗店にも通われていると」
チン之助様は体を起こすと、ベッドの上に置かれたグラスの水を飲む。今度は口移しではなく、二つ目のグラスに水を入れてキキョウに渡す。
「毎日一人だとついやりすぎちゃう時があるから日に二、三人で来てもらっているんだ。でもそれだと空いた日が出ちゃうからね。どうしても下半身が落ち着かないのさ」
「素晴らしい。それほどに精力が強い殿方は私が今までに見てきた中でも、ほんの数人。そしてその方たちは皆、歴史に名を刻む傑物でした。ありあまる精力を、自身の野望を叶える推進力に変える術を身に着けておりました」
「俺はつまらん男さ。君が望むようなことはなにもないよ」
「本当にそうでしょうか」
キキョウがチン之助の目を覗き込む。
「確かに、命をかけて死亡お遊戯に挑戦したのは、後輩の方を救うためだったかもしれません。しかし、二重でカナエに勝利してからは、ご自身のために塔を登っていった。それは、チン之助様が今の自分から変わりたいと思う現れだったのではないでしょうか」
チン之助はわずかに口をつぐむと、やがて喋りだした。
「君の言う通り、確かに俺は変わりたかった。何者かになりたいと思っている。もっと世の中をよく出来るような、そんな人間に。……でも、だめだった。かろうじて会社にしがみついているような、ちっぽけな人間だよ俺は。女遊びだけが得意な、どうしようもない三十八歳の親父さ」
「まだ三十八です!」
キキョウは大声を出した。
「自分を変えることに、何かを始めることに遅すぎるということはありません。チン之助様。その類まれな精力。相手を思うお人柄。そして人に好かれる性質。貴方は必ずや大義をなされるお方だと、私は確信しています。もしもチン之助様が変わりたいと思うのならば、一言私に『頼む』とおっしゃって下さい。貴方が変わるきっかけを、自分の足で歩き出すきっかけを、何者かになるきっかけを、必ず私達アヤカシ屋が見つけて差し上げます。それが、死亡お遊戯を制覇したチン之助様への報酬でございます」
妖狐という妖怪には、気に入った男のもとに嫁ぎ、その男を立身出世させることを生きがいにしているものがいる。そのことをチン之助が知っていたのか、いなかったのか。どちらにせよ、彼の答えは変わらなかっただろう。
眼の前の美しい女の心からの言葉に、己が体と人徳のみを誇りとする男、チン之助はたった一言だけ答えた。
威風堂々たる五重塔に夜明けの光が投げかけられ、朝が訪れる。
この街から少し離れた公園では、後輩が目を覚ます頃合いだろう。彼がチン之助に会い感謝を告げる機会はついぞ訪れなかった。
チン之助が会社に辞表を提出し、行方をくらませたからである。
その後数年の間、彼がどこで何をしていたのか知る者はごくわずかだ。
ただ、経済改革、教育再生、福祉の見直しを掲げ彗星の如く現れた政治家が日本国首相となり、一夫多妻制を可能としたことは我々の記憶に新しい。首相は法改正の後、陰に日向に内助の功を発揮し彼を支え続けた十二人の妻を娶った。
他国のトップたちは皆、彼の外交手腕と一ダースの妻を平等に愛し満足させるバランス感覚、強靭な精神力に敬意を払った。
また、件の首相は日本文化と自然の保護に力を入れたほか、働き手が傷つかない形での性産業の立法に努めたという。
その男の名前は、夜利チン之助といった。
死亡お遊戯 ~ヤリチンVS.妖怪娘 勝利しないと命がない五重塔~ 春風トンブクトゥ @harukazetombouctou
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