第2話

 🔖 重要ポイント

 安藤と清範は藤原に連れられて長茂川近くにある烟田かまたって小さな街にやって来た。

 廃墟に宿泊することになった。藤原は用事があるらしく帰ってしまった。

 真夜中、安藤が壁をすり抜ける女性の幽霊を目撃し、屋敷の中を調べてみると、書斎に恵子がいて催眠術の本を読んでいた。

 清範の正体はスパイであり、秘密を知った安藤に催眠術をかけ、自分はゾンビだと思い込ませる。一方で、清範は永長橋を渡った先にあるジョイフル本田で仁科から情報を手に入れようとする。

 仁科は義経から命を狙われており、さらにその依頼人が侍渡ということも清範は知っていた。


 同じ頃、ガソリンスタンドの伯耆マネージャーが殺されてゾンビにされる。

 伯耆は深夜のスタンドで背中を刺されて殺された。伯耆は妻や娘から無視をされ、スタンドでエロいビデオを見てウサを晴らしていたのだ。

 スタンドにやってきた義経は床を思わず見た。『11』と血でダイイングメッセージが残されていたのだ。

 

 女将、住田温子のおかげで催眠が解けた安藤はAK47で伯耆ゾンビを射殺した。

「女将、ありがとうな?」

「礼はいらない、金よこせ」

 女将はお金大好き人間だ。

 安藤はサッカー選手の中に犯人がいるんじゃ?と、推理した。  

「藤原は昔、サッカーをやってたらしい」と義経。

「どこを守ってたんじゃ?」

 安藤は頼朝になりきってるからか口調がおかしい。

「フォワード」

 主にゴールを守る『GK(ゴールキーパー)』、GKの前で主に守備を担当する『DF(ディフェンダー)』、ハーフウェーライン付近で攻守に渡って活躍する『MF(ミッドフィルダー)』、攻撃の最前線で得点を狙う『FW(フォワード)』の4つに大きく分けられる。

「藤原悪夫、略してFW」

 安藤は妖怪退治を無理強いする藤原を嫌っていた。

「センス無いわね〜」

 温子は苦笑いしてる。

「藤原は何で伯耆を殺したのかな?」と、安藤。

「おまえ、マジでアイツのこと疑ってるの?」

 義経は鼻をほじりながら言った。

「きたねーなぁ」

 安藤は怪訝そうに義経を見た。

「俺はさ〜、侍が怪しいと思うんだよね?伯耆から怒鳴られてたところ見ちゃったんだ」と、義経。

「そうだったんだ〜」と、温子。  

「西向く侍って聞いたことないか?」と、義経。

 温子は首を傾げた。

 1ヶ月が31日じゃない月、2月、4月、6月、9月、11月は31日までない月で、それを覚えるための語呂合わせとして言われる。 なお、「十」と「一」を縦書きすると「士」に見え、「士」は侍の意を持つことから、「西向く侍(に・し・む・く・さむらい)」となった。

 1日はあっという間に過ぎた。


 4月1日

 薬剤師薬学教育6年制へ移行。


 大阪府堺市が、政令指定都市へ移行。


 国会議員互助年金が廃止される。


 M&Aブームに伴い問題となった、のれんの一括償却が禁止される。


 地上デジタルテレビ放送の1セグメント放送「ワンセグ」が開始。


 ハイウェイカードが廃止される。


 川崎市多摩区内の9歳の男子児童が転落死したマンションで68歳の女性清掃員が突き飛ばされた事件で、川崎市麻生区内に住む無職の男を殺人未遂容疑で逮捕。


 京阪宇治交通・京阪宇治交通田辺、京阪バスを存続会社として吸収合併を行い21世紀初のバス事業者の大型合併を実施。同時にスルッとKANSAI協議会加盟会社初の会社解散となる。


 侍は職場に姿を現さなかった。伴は眠い目を擦って現場を調べた。昨夜の酒が残ってるせいで頭が回らない。

 その頃、義経は『すみだ』でぐーすか寝ていた。

 全裸で列車に乗った夢を見た。

 

 義経は8時頃起きて、バイキング形式の朝食を食べた。🍞🥖🥪🥗🧆☕

「あ〜食った食った」

 ロビーでくつろいでると山田孝之に瓜二つの青年が近づいてきた。1月〜3月までTBSで『白夜行』をやってるところで、なかなかの俳優だ。

「どこから来たんですか?」

「水戸から」

「何だ、近いじゃないですか」

「そちらはどこから来られたんですか?」

「埼玉県の春日部です」

「クレヨンしんちゃんって春日部が舞台ですよね?」

「僕的にはボーちゃんが好きだな〜」

「鉾田には何をしに?」

「僕、歴史小説家なんです。義経って弁慶とどこで出会ったんでしたっけ?」

「さあな?」

「清水寺です」

「分かってるのに質問するなんておかしな奴だな?」

「おかしいのはそっちですよ。源義経が弁慶と出会った場所を忘れるなんて……」

 義経は青年に只ならぬオーラを感じた。

 義経伝説の中でも特に有名なのは武蔵坊弁慶との堀川小路から清水観音での出会いだ。(後世の作品では五条大橋)

『義経記』では熊野別当の子で、紀伊国出身だと言われるが詳細は不明。元は比叡山の僧で武術を好み、清水寺で義経と出会って以来、郎党として彼に最後まで仕えたとされる。講談などでは、義経に仕える怪力無双の荒法師として名高く、ほか創作の世界でも義経と並んで主役格の人気があり、怪力の者や豪傑の代名詞としても広く用いられている。

 

 熊野別当(『義経記』では「弁しょう」、『弁慶物語』では弁心)が、二位大納言の姫を強奪して生ませたとされる。母の胎内に18ヶ月(『弁慶物語』では3年)いて、生まれたときには2、3歳児の体つきで、髪は肩を隠すほど伸び、奥歯も前歯も生えそろっていたという。父はこれは鬼子だとして殺そうとしたが、叔母に引き取られて鬼若[注釈 2]と命名され、京で育てられた。


 鬼若は比叡山に入れられるが勉学をせず、乱暴が過ぎて追い出されてしまう。鬼若は自ら剃髪して武蔵坊弁慶と名乗る。その後、四国から播磨国へ行くが、そこでも狼藉を繰り返して、播磨の圓教寺の堂塔を炎上させてしまう。


 やがて、弁慶は京で千本の太刀を奪おうと心に誓う。弁慶は道行く人を襲い、通りかかった帯刀の武者と決闘して999本まで集めたが、あと一本というところで、五条大橋で笛を吹きつつ通りすがる義経と出会う。弁慶は義経が腰に佩びた見事な太刀に目を止め、太刀をかけて挑みかかるが、欄干を飛び交う身軽な義経にかなわず、返り討ちに遭った。弁慶は降参してそれ以来義経の家来となった。この決闘は後世の創作で当時五条大橋はまだなく、決闘の場所も『義経記』では五条の大橋ではなく堀川小路から清水観音での出来事とされている。また現在の松原通が当時の「五条通り」であり、また旧五条通西洞院に五条天神社が存在し、そこに架かる橋であったとも言われている。決闘の場所を五条大橋とするのは、明治の伽噺作家、巖谷小波の書いた『日本昔噺』によるもので、『尋常小学唱歌』の「牛若丸」もこれにしたがっている。


 その後、弁慶は義経の忠実な家来として活躍し、平家討伐に功名を立てる。兄の源頼朝と対立した義経が京を落ちるのに同行。山伏に姿を変えた苦難の逃避行で、弁慶は智謀と怪力で義経一行を助ける。


 一行は加賀国安宅の関で、富樫介(能の『安宅』では富樫の何某なにがし、歌舞伎の『勧進帳』では富樫左衛門。富樫泰家に比定される)に見咎められる。弁慶は偽の勧進帳を読み上げ、疑われた義経を自らの金剛杖で打ち据える。富樫は弁慶の嘘を見破りながら、その心情を思ってあえて騙された振りをして通し、義経一行は無事に関を越える。


 義経一行は、奥州平泉にたどり着き、藤原秀衡のもとへ身を寄せる。だが秀衡が死ぬと、子の藤原泰衡は頼朝による再三の圧力に屈し父の遺言を破り、義経主従を衣川館に襲った(衣川の戦い)。多数の敵勢を相手に弁慶は、義経を守って堂の入口に立って薙刀を振るって孤軍奮闘するも、雨の様な敵の矢を身体に受けて立ったまま絶命し、その最期は「弁慶の立往生」と後世に語り継がれた。


 なお、義経主従は衣川館では死なず、平泉を脱して蝦夷地へ、あるいは西国に逃れたとする、いわゆる「義経北行伝説」にも、弁慶に関するエピソードは数多く登場する。


「鋭い推理力だ。金田一少年みたいだ」

 彼の言うとおり俺は源義経じゃない。俺は仙道源太せんどうげんた、1982年生まれの24歳だ。高校卒業後、陸自に入ったがキツくて辞めた。陸自に入ったのは国を護るって理由じゃない。銃を撃てるって理由からだった。

「君の名前は?」

 思い切って義経は尋ねてみた。

「仁科だよ」

「下の名前は?」

「海介」

 こりゃあ願ってもないチャンスだ。


 午前10時、仁科は『すみだ』を出た。俺は尾行することにした。仁科は鉾田市北部にある鈴和ビーチランドってところにやってきた。🏖鹿島灘が一望できる。大きなタンカーが沖の方に見えた。

 すぐ近くには別荘地がある。

 ビーチで缶ビールをたくさん飲んで、尿意を催したのか仁科は木陰に入って立ち小便をはじめた。

 ジョボジョボ音がしてる。俺はスマホみたいな形のものをジーンズのヒップポケットから出した。

 マグプル社のマシンガン、FMG-9だ。グロック18の機関部を採用しており、折り畳めることが出来るのだ。ドットサイトを装着するレールや、フラッシュライトの挿入口もあり暗闇でも問題なく行動できる。

FMG-9を組み立てると仁科の背後から撃った。

 🔖偽義経、3人悪い人間を殺すと不死身になる。

 

 4月4日 - 第78回選抜高等学校野球大会で、横浜高等学校が優勝。

 安藤は鉾田市北部にある涸沼のヨットハーバーに来ていた。もうじきで午前11時になるところだ。すぐ近くには、ホテルや野球場、大谷川などがある。

 警察車両が安藤を取り囲み、あっという間に確保された。

「俺がムショに入ったら怪物を倒せる奴がいなくなるぞ!?それでもいいのか!?」

「ギャアギャア騒ぐな、往生際が悪いぞ」

 伴刑事はニヒルに笑った。


 4月9日 - 鹿児島県佐多岬沖の海上を航行していた高速船トッピー4が、海洋生物と思われるもの(のちに流木と判明)に衝突。その振動で、110名(乗客全員)がけが。


 俺は鹿嶋市にある潮騒はまなす公演にやってきた。沿道にはメロン売店が軒を連ねていた。

 鹿島灘は白波が立っていた。

 尿意を覚えて公衆トイレに入った。侍が小便器に向かって放尿していた。

「伯耆さんを殺したのはあなたですよね?」

「藪から棒になんだよ。伯耆なんて人、俺は知らねーよ」

「嘘はやめましょう。僕はしばらく前にあなたの店にガソリンを入れに行ったんです。そのとき、あなたが伯耆さんに怒鳴られてるのを見ちゃったんです」

「チッ、見られてたのか?殺し屋ってのは嘘で本当はサツなのか?」

「いえ、嘘じゃありません。あ〜そうそう。仁科だけど無事、始末しましたよ」

 侍は仁科を殺すように依頼してきた人間だ。

「ニュースになってないから、怖気づいて逃げたのかと思ってた」

「死体を特殊な薬で溶かしましたからね?」

 侍は財布から五千円札を出して俺に渡した。

「これで黙っててくれ。警察にチクったらオマエも伯耆みたくするぞ」

「ありがたく頂戴しますよ。けど、どうして伯耆さんを?」

「アイツは正真正銘の鬼だぜ。しょっちゅう俺を殴るし、売り上げが盗まれたことを俺の仕業にしたこともあった。それだけじゃない、アイツは5年前に小美玉で起きた幼女殺人事件の犯人だったんだ」

 すげーことを知っちまったな?

 俺は膀胱がヤバかったから侍を見逃してやった。

 小便器に大量に放尿した。

「ふ〜間に合った〜」


 🔖偽義経、恵子とは高校時代の同級生。

 4月18日 - 日本ハムの新庄剛志外野手が、今季限りでの引退を表明。

 俺は虚ろ舟を探すために愛車を疾駆させていた。

 車は釧路市南部を走らせていた。鹿行大橋に差し掛かる。橋の下は北浦。直進すれば行方市に入る。

 半魚人が車の前に立ちはだかった。

 まだ、俺は1人しか殺していない。残り2人殺さないと不死身にはならない。半魚人は車を持ち上げようとしている。そこに恵子と清範が助っ人に現れた。  

 恵子はデリンジャーで半魚人を射殺した。

 俺と恵子は高校時代の同級生だ。

 恵子は膝丸を身に着けていた。

「藤原さんのお陰もあって鉾田警察署に潜入することが出来た」 

 🔖半魚人を倒したってことは恵子は3人殺してる。

「さっきの化け物は清範、オマエの仕業か?」

「今回は俺じゃない」

 そのとき、行方市側から怪物がたくさん現れた。ゾンビ、狼男、ミイラ男。

 頭上から何かが降りてきた。

 🛸

「UFO!」

 恵子はピンクレディーのあの曲を口ずさんだ。

「音痴」

 俺は耳が腐りそうだった。

「もしかしたら虚ろ舟かも知れんな」

 俺は確信した。

 虚ろ舟はすぐ近くに着陸した。

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源義経の事件簿③ 鉾田市殺人事件 鷹山トシキ @1982

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