オークは超巨大隕石を愛した

邪悪シールⅡ改

永遠へ

「ゴブリンくん。俺は人間女騎士や人間シスターに性的興奮を抱けぬ駄目なオークさ……」

 殺風景な部屋に招待された日、開口一番に明かされた事柄がこれである。

「まぁいいじゃない。そも異種族とのファ〇クを推奨する風習が奇怪なんだ」

「それによる村八分の日々は辛いよ」

「でも君、二次元の人間は好きだろ」

「生き物特有の生暖かさを感じずに済むもんで」

「ならば君自身の頭で空想した架空美少女をおおっぴらに愛せ。二次元人間が実在するかの如く振る舞い、君が異種族ファ〇クオークであると周囲に誤認させるんだ」

「僕、想像力が無いから名前しか浮かばないよ。既存のキャラは恥ずかしいし」

「素敵な名前だけ決めれば良い。姿形なんて、後からついてくるさ」

「……それならば……『ホープ』という名はどうだろう」

「いいともさ。君の決めた愛する名前だ」

「ホープ……ホープか」

「素敵な名前だね」

「……どのような方なのだろう」

「ははは」

「ありがとうゴブリンくん」


      〇


「会いたいなぁ」


      〇

 数ヶ月後。


「殺せ~ッ! 殺せ~ッ!」

「別に何もしないよ。シスターさん」

「お嬢さん、薄着の人間が単身でオーク&ゴブリンの巣穴に忍び込むとは笑止だぜ」

「うるせ~ッ! 殺せ~ッ! ケダモノはニュース観ね~のかッ!? どうせあと一時間で隕石落ちてこの星は終いよぉ~ッ! シスターもオーク&ゴブリンの巣穴に堂々押し入るわッ! ボケッ!」

「「……隕石……?」」

「そうだよッ! マヌケ共ォッ! 『超巨大隕石ホープ』で私ら全員あの世生きよぉッ! 死こそ希望ってさぁッ! ヒャヒャヒャ……」

「ホープ……ホープさんが!」

「おい、オークくん?」

「ホープさんが……! ホープさんが来てくれた……ッ! 俺に会いに来てくれた……! 俺の……!」

「オークくんッ! どこへ行くんだ! オークくん! オークくん!」

「ヒャヒャヒャ……」

「オークくんッ!」 


    〇


 如何なる手段を用いたか? この星を一撃で木っ端微塵にブチ砕く威力を有した超巨大隕石は、星の重力から外れ彼方へ去った。

 オークの性欲と暴力の強大さについては、今後もありとあらゆる文献で語られ続けるであろう。

 だがもしそのパワーを別の方向に向けたとき、如何なる奇跡が起こるか?

 ゴブリンは己の頬に伝う水の名も知らぬ。だが。

「神よ。俺はゴブリンだが……今日ばかりは……友の安寧と幸福を……今日ばかりは願わせてくれ……孤独を何よりも恐れた友の……」


 希望を信じ愛したオークは、もう二度と戻らなかった。

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オークは超巨大隕石を愛した 邪悪シールⅡ改 @33jgyujgyugyabb

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