日の花

安形 陸和

第1話

一人公園で耽る夜が増えた。遠くの方では若者たちが花火をやっている。夏の暑さも佳境に入っているが、それでも夜はその暑ささえ忘れるほどに涼しかった。本来あるべきはずの夏に戻った感じがする。

何とも言えない孤独感が襲ってくる。仲の良かった友人も一生の友情を誓い合った親友もいなくなった。いなくなったと言うよりは自分で遠ざけた。彼らはとても眩しく、 自分とは到底違う世界に住んでいると感じたからだ。結婚式の招待も、同窓会も何もかもを断った。気づいたら私は一人だった。一人でいることはさして私にとっては問題では無かった。ただ一つ問題だったのは突如襲ってくる孤独感という魔物だ。

私はそれの埋め方が全く分からないままここまで来てしまった。だから今日も一人で耽る。この答えはどうやったら見つかるのだろうか。

翌日になって、ふと地元の花火大会に出かけて見ようと思い立った。決して昨日公園で花火を見たからではなく、自分の意思で行こうと思った。地元に帰るのは何年ぶりになるだろう。最低でも五年は帰っていない。久しぶりの地元は何も変わらない風景の連続で、とてもつまらなかった。友達と帰ったあの道も何も変わらずに残っている。

田舎なのにも関わらず花火大会にはたくさんの人が参加する。喧騒が煩わしくなってきた私には、とても苦痛だった。人がいなさそうな場所に腰をかけ、上を見上げた。美しさは一瞬で、とても儚い。虚しくなって下を見る。花が花開くと同時に周囲が照らされる。誰もいないと思っていた場所に突然現れたように感じた。

その人は透き通っていて、花火の光を反射して、さらに光を増していた。けれどそれも一瞬の出来事だった。花火が散ると同時に、周りには街灯も無かったので、真っ暗になった。次に花火が上がった時、彼女はもうそこにはいなかった。

なぜだか答えが見つかるような気がした。

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日の花 安形 陸和 @yudouhu79

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