1-1-3-2 ハジュンの集会
「まずは想像させてあげよう。君たちの真の姿はこのようであった!」
そこに集まった何百億という人々、曼荼羅にいる三千世界の無数の人々、数えきれない世界の無数のものたちが、自分の姿に驚いた。
「私はこんなにも素晴らしい姿だったのか……」
「すごい!」
「すごい!」
「すごい!」
「すごい!」
「何と素晴らしい!」
「何と美しい!」
「何と懐かしい!」
多くの人々が喜び叫び合った。
永遠と言える時の中、多くの世界で生きてきた自分達の姿が素晴らしいものであったことを思い出したのである。
ハジュンの話が続く。
「私は、さらに話そう!」
感動した人々には、話が整理できる状況ではなかった。
「私は君たちが誇らしいと思う。
みんな1兆や1京ではなく、はるかに多く、はるかに長く、無数の世界のどこの世界も救ってきた尊い命だ!
私もその1人だ。
今、私はみんなの前にいる。
そして、たった1つの、今、生きているこの世界で堂々と生きている!
誇らしいことだ!
私たちはこの世界に生きている!
他の人々と殺し合い、生活を破壊し合い、他の生命を支配しようと争い合っている。
私は君たちの姿を見て楽しませてもらっている。
楽しいことだ!
この中で、みんなが堂々と100億年以上生きていることは何と素晴らしいことだろうか!」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
人々は感動していた。ハジュンの話に感動していた。だが、人々は自分たちがハジュンの話の何に感動しているのか理解できなかった。
「何であんな人間に対する挑発的なことを言われているのに、みんな感謝して喜んでいるんだよ……」
とラージュは手を握りしめた。
「人の考え方の違いだ。みんな素晴らしい世界を実現してきた。今の世界も素晴らしいと思っているんだ。それを間違いだという君が間違いだとは思わないか?それに、みんな素晴らしい人々だった。それは認めよう」とアーリマンは言った。
「そうだな。みんなすごかった。みんなすごいんだよな」
とラージュは言う。
ハジュンは話を続ける。
「私の思い出を話そう。
私は異世界で滅ぼし合う人類の姿を見せてもらい、すごく嬉しかった。
喜んでいたんだ。
みんな光に包まれて、ある人々はある人々を憎しみながら、泣き叫んでいた。
だがすぐに死んだ。
あの姿は本当に面白かった。
笑ってしまった。
またある所では、双方が争い合うことを憎みながら、自分たちが争い合うという姿を見せてもらい、とても面白かった。
今ここにいるみんなと同じだ。
人というのは、どの世界でも人だ。
今君たちは、永遠とも言える命を得て生活を共にしている。
1つのこの世界で平和に生活することもできない。
ある人はある国を疑い、ある勢力を疑って人を殺し、ある人は自分は死んでもいいと言いながら、自らの見下している存在に殺されることを嫌がる。
ここはそんな世界だ。
みんなは他の世界でどれだけ長い時間、どれだけの命を幸せにしてきただろう。
それは数えきれないほどだ。
みんな素晴らしい人々だ。
今生きている世界で、異世界のように、戦争や互いの滅ぼし合いになることを誇らしく思う。
異世界の人々は素晴らしかった。
互いの対立のために互いを貶め合う。
その姿は、人類の叡智を尽くした姿だ。
とても美しく、楽しませてもらった。
多くの世界で平和な世界を実現してきたが、元生きていた異世界で文明崩壊を起こし、そして今生きている世界でも同じことをしている素晴らしい人々が、君たちなんだ!
素晴らしい!
素晴らしいことなんだ!」
それを聞いている人々は泣いていた。
中にはこのような人々もいた。
「何もできなくて悔しい……。私たちは……私たちは、あの世界に生きていたんだ!」
「私は家族を失い、敵を憎み、悔しくて泣いていた。それを見てあの人は笑っていたのか……」
「何で自分たちの今生きている世界で、これまでの生き方ができないんだ!
どうして別の世界では、とても幸せな日々を送ることができた俺たちが、この世界で笑われながら体を粉々にされなきゃいけないんだ!」
「あいつのせいで、今生きている世界が不幸なんだ!」
ラージュは「悔しいと思う人たちもいるんだな」と言う。
マリアは「でも本当にその悔しさでこの世界は良くなるのかしら……」と言う。
ハジュンは話を続ける。
「さあ、続けて1人ずつ口唱したまえ。
私たちは他の世界では他の人々の幸せのために生きて、自分も幸せに生きていたが、今生きている世界では自分も誰かも絶対に幸せに生きさせることはない!」
「私たちは他の世界では他の人々の幸せのために生きて、自分も幸せに生きていたが、今生きている世界では誰かを絶対に幸せに生きさせることはない!」
「私たちは他の世界では他の人々の幸せのために生きて、また自分も幸せに生きていたが、今生きている世界では自分も、そして誰かも絶対に幸せに生きさせることはない!」
この口唱のために過ぎた時間は計り知れなかった。
ステラの番になる。
彼女は黙して、俯き涙を流していた。
真っ黒な虚空に涙が落ちる。
それは大勢の人々の涙を誘った。
誰も言葉は出ない。
ステラも分かったことがある。
それは自分が他の世界で多くの人々の幸せのために生きていたこと。
そして、自覚したことがある。
分かったからと言って、今生きている世界では何もできずに、ただ何かを変えようとしては行き詰まりを迎えることを何度も繰り返していることを……。
「私たちは他の世界では他の人々の幸せのために生きて、また自分も幸せに生きていたが、今生きている世界では自分も、そして誰かも絶対に幸せに生きさせることはない!」
ステラは小声で言った。
ラージュも言う。
アーリマンも言う。
スジャータも言う。
アイニーも言う。
ボンも言う。
桜も言う。
かつて死んだ人々もそこにはいた。
そしてフトもその1人として言った。
ステラの父も兄も言った。
ハジュンも涙を流していた。
だがしばらくすると笑っていた。
「これは現実だと理解しただろう。いかにどのような世界を生きていたとしても、今自分たちの生きている世界は、何により、生きているか。それが真実だ。この集会の意味はそこにある」
集会が終わる。
そしてハジュンは「それじゃあまた、滅ぼし合う姿を見せてくれたまえ」と笑いながら言う。
大勢の命が流した涙はある地上に落ちて、地上を包み込むほどの水溜まりを生むほどだった。
だが、すぐにその涙は蒸発してしまった。
地上から声が聞こえてくる。
「今度は喜びの涙でこの地上を覆ってほしい……」
そして人々は、また今生きている世界で何も無かったように生きていく。
つながる世界を求めて生きるステラたちについての話 @srismimsk55
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