第11話 Episode2-6 東京頂上決戦《転》
21 突破
「こちら
大型トレーラー4台が強行突破! 四ツ
警察無線専用の通信機が叫んだ。
「なんだと!」
第二小隊隊長
「
機動隊の空中監視班からも
「なぜこのタイミングなんだ!」
G7首脳が
(目的が何であれ、間違いなく敵は俺たちより「ルール」を知っている……)
いや、俺たちにだけルールの一部が伏せられていると言うべきか。
「フライング・スピッツよりペットショップ2へ」
本部指令を受けて
「10分後に到着予定。
「なんだ……」
それは、と
「次から次へと!」
「済まない。緊急事態なのだ」
作戦課課長
「こちらブリーダー、よく聞け。G7首脳が乗り込む客船『
「海上で?」
どうやって、と
「沿岸警備隊を」
「依頼した。だがせいぜい装備は機銃一丁だ。まともに戦えん」
「海自は」
「間に合わん」
「出航を遅らせるわけには」
「要請はした。返事はない。滞りなく進むものとして対処しろとのことだ」
「東京湾底には常時哨戒の潜水艦がいるんじゃないのか」
「襲われるとすれば出航直後だ。水深が足りない。そもそも
「
「切り札を運ばせた」
「切り札?」
「見ればわかる。そのままフライング・スピッツに、切り札と共に迎撃用のガードナー一機を運搬させろ」
「こちらフライング・スピッツ」
「ペットショップ1、フライング・ダックスは即応可能か」
「こちらフライング・ダックス」
第二小隊のヴァルキュリス
「現在突破トレーラー群およびドローン群迎撃のため空中待機中、どうぞ」
「フライング・ダックス、フライング・スピッツに合流してガードナーを運べ」
数秒の沈黙が
「……そいつはヴァルキュリスで扱えないのですか」
「無理だ」
「それができればやっている。ガードナーでなければ使えないのだ」
「待ってください! ではこちらの対応は!」
今度は第一小隊隊長
「残ったガードナーを合流させる。地上機だけで何とかしてくれ。そちらに向かっている奴等の目的は、間違いなく我々の足止めだ」
「残ったガードナーというは第二小隊の、ということですか」
次は
「当然だ。他にいない」
「俺はどちらも嫌だ!」
「空に吊られるのも、アイツに指示されるのもごめんだ!」
「どちらかを選べ。他に選択肢はない」
しばらく下を向いていた高所恐怖症の
「スヌーピー、遊覧飛行の準備だ!」
「あ、はい!」
蹴飛ばされたように走り出す
「……ところで、そんな情報がどこから入って来たんです?」
「それは聞くな」
「急げブルテリア! 敵が来る!」
「うるせえよ!」
☆
おりしもテントの外では、
技術主任の
「……あれか……
一見大型のライフル銃だが、銃身が異様に長い。その銃身も筒ではなく、上下に潰れた細長い箱のような形状をしている。そして銃床からは太いコードが伸びていて、それは一緒に懸下された鉄道コンテナほどの大きさの取手の付いた金属の箱に繋がっていた。箱の側面に「ANAHASHI/RR44」の文字が見える。
「あれはいったい……」
それを見るために出てきた
「携行型電磁加速銃RR44、いわゆるレールガン……いや、レールライフルよ」
「レールガン?」
「なぜそんなものを」
「次世代兵器の筆頭だもの。我先にと密かに開発しているのは
「砲身に強力な電磁場を発生させて、弾丸を
「一発?」
「バッテリーを一瞬で使い切るのよ」
「外したら終わりじゃないですか!」
「当てて」
「そんな……」
「じゃあ、外したら
それで済むものか、と
「May The Force Be With You」
祈ってくれるのは嬉しいが、それなら「あなたならできるわ」の方がまだマシだと
聞こえてくる爆音に空を見上げると、もう一機のヴァルキュリスが低空でこちらに向かってくるのが見えた。
〈作戦情報が更新されました。
「……テックセッター」
☆
近隣住民の緊急避難を知らせるパトカーの絶叫とサイレンが、あちこちから十字砲火の如く聞こえてくる。大通りには出ないでください。幹線道路からなるべく遠い頑丈な建物に避難してください。車を使ってはいけません。落ち着いて行動してください。
その中心、交通規制のかかった
ブルドーザーベースに上半身を乗せた、片手は大型ダイヤモンドカッター、片手は油圧ブレーカーの
それらが
「三機で四台を止めるんですか?」
「いや、二機で四台だ」
「え?」
「おまえはドローンを撃ち落とせ、ウィペット」
「弾倉は持てるだけ待っているな」
「はい……」
「よし、巻き込まれないように下がれ。敵の標的はわからない。臨機応変に対応しろ」
「了解」
と言うしかない。しかし、まとめて飛来する七機のドローンを全機撃墜できるとはとうてい思えない。しかもこれまでの例なら、ドローンには
「まるで妖怪大進撃だな」
駆けつけたトレーラー「ケージ1」から飛び降りたガードナー002の
「ケージ1、ウィペットを乗せてやれ。その方が移動は早い」
「ふん」と
「俺が指示したのはウチのケージ1だ。お宅の隊員には何も言ってねえ」
「屁理屈を」
22 共闘
「作業急げ!」
着陸したヴァルキュリス0022の
「ワイヤーに余裕があってまだよかった。これでもかなり危ないがな……そこ、強度大丈夫か!」
インカムを付けた整備主任
「大丈夫なんですよね?」
「さあな。やれるだけやるだけだ」
聞かなければよかったと思いながら、
「……重いな」
「気のせい」
思わず呟くと、すぐさま
「
「でも重いんですよ」
「視覚から来る錯覚ね」
言いながら、
(だとしたら、いったい何を作ろうとしているんだか……)
確かに操作はより直感的にはなるだろうが。それは人と機械の境界線がより曖昧になることでもある。
(……
それにしても、さっきから
「この蓄電ボックスはどうすれば」
「俺が持とう」
「持つ?」
「アウター・バディモード」
「地上でも変われるのか」
「機械メーカーってのはいろんな機能を付けたがるのよ」
「作業完了!」
後者作業車の整備員がガードナーから離れながら叫んだ。
「お願いします」
〈現在高度20…30…〉
「そんなことは教えてくれなくていいよ」
「ビーグルスカウト、出撃します!」
そして思う。「フライング」はわかる。なぜ自分だけ「スカウト」が付いているんだろう?
☆
先頭に進んでくるのは四足歩行運搬車両と資材移動用ドーザー。
〈状況を確認。第三レベル戦闘モードに移行。正面の重機四機を目標に設定しました〉
両機の
「止まれ! これ以上近づけば撃つ!」
肩のスピーカーを開いた
「止まるわけがないよなあ」
「気をつけろ、無策で突っ込んでくるとは思えない」
「無策なのはこっちの方だろうがよ、グレートデンさん」
「002が殺しの番号だったら、迷わず
「そうしていいならとっくにやっている!」
と、ガシャガシャと四本足を動かしながら前を走る運搬車両が、荷台前方の機構から何かを発射した。いきなり車体の姿が白煙で包まれたかと思うと、次の瞬間、チェーンに繋がれた物体が宙を走って
「言わんこっちゃねえ!」
「色男、金と力はなかりけり、ってなあ!」
「弾丸を無駄にするな」
ようやく起き上がった
「
「嫌いなんだよ」と
言いながら左手に巻きついたままのチェーンの残骸を投げ捨てた瞬間、目の前に迫っていた鉄の恐竜の頭部、巨大なペンチがくわっと口を開けたかと思うと、一気に首を伸ばしてその左手に噛みついた。
「しまった!」
装甲が軋み、砕ける音が聞こえた。
〈左下腕装甲破損。駆動機構損傷。可動率……〉
と、
〈左肘関節破砕。左手可動率0%。シールド脱落。左腕給油機構停止……〉
一方、
「くそっ!」
倒れ込みながら、
「……人のことは言えねえじゃねえか」
ふらふらと立ち上がるガードナー002の
「大丈夫か、ブルテリア」
〈左肘部破損、左手作動不能です〉
「腕の一本くらいくれてやらあ」
見ると、
「問題は元々二本しかねえことだ」
その
「何回倒れりゃ気が済むんだ! コントじゃねえか!」
言いながら
「俺もコントかよ!」
悲痛な叫びを上げて解体車に対峙する。
「警棒! ロング!」
既に学習している
「姓は
「おいグレートデン!
呼びかけても返事はない。スクリーン下のオンラインモニターアイコンには、ヘッドセットが外れたまま首を傾げて目を閉じている
〈001、生体状態グレー。意識混濁と推測〉
「こんなに面白くねえコントは初めてだ」
☆
第一小隊
結局
大勢残っているはずの政府職員や報道関係者は既に退避を終えたらしく、辺りは都会の真ん中とは思えないほどしんとしていた。人の姿が見えるのは第一小隊の臨時指揮所、
(指揮所を狙ってくる可能性もある)
「こちらJA18MP」
緊急発進した警視庁のテロ対策用ヘリコプターから通信が入る。
「飛行物体七機、自爆型ドローンと確認」
「こちら
「JA18MP、了解」
「こんなロボットを作るより、空中でドローンを捕獲する網とかを開発した方が遥かに役に立つんじゃないか」
沈黙していた
〈目標群、距離200〉
来た。
その時だった。
〈目標群、分散。うち三機、4時方向に変針します〉
「しまった!」
「ウィペットよりケンネル、直ちに防空体制を!」
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