第2話 貴方は覚えていない

 貴方は不快さと圧迫感を感じ目を覚ました。


「………?」


 どうやら布のような物で全身を包まれ横たえられているらしく、目の前は相変わらず真っ暗で何も見えない。


 貴方は此処で違和感を覚えた。この状況をまるで一度体験したことがあるかの様な、異様なを貴方は感じていたのだ。


 何か重大そうな事を忘れている。そんな気がしてならないが、その理由を寝起きであまり回っていない頭ではどれだけ考えても出てこない。気の所為なのだろうか?


 取り敢えずこのまま拘束されているのは嫌なので、思いっきり動いて破こうとするが、拘束は1ミリも緩んでくれない。

 その事に貴方はタイムリミットが近づいて来るかのような、えもいわれぬ焦りを覚える。


 「……クソッ!何だよこれ!」


 頑張って拘束を取ろうとする貴方だが驚く程しっかり巻かれており、内から力を掛けるだけでは悪戯に時間と空気を浪費するだけの行為でしかなかった。


そんな時、とうとうその音は聞こえて来た。



ーー カツン カツン


 

 貴方は何故かこの何者かが歩いているだけの音を聞いていたくなかった。

 この歩く音を聞くだけで息が詰まるような恐ろしい不安に襲われ、ありもしない記憶が刺激される。


 現状を打開するのは、此処で助けを求めた方が良いのは分かっているのだが、まるでそれ以上先の未来に向かう事を拒絶しているかのように身体はピクリとま動かせない。


 いや、正確には動かそうと思えば無理矢理にでも動かせるが、外を歩く何者かが怪しいのは事実なので無理に身体の拒絶に逆らう必要性がない。身体の拒絶にはそれ相応の理由があると貴方は


 

ーー カツン


 貴方は息も止めて過ぎ去るのを待っていると歩く音は何ごとも無く段々と離れて行く。

 耳を澄まして音の主が完全に離れていったと確信した貴方は、大きな大きな安堵の溜息を吐く。


 そして、それと同時に貴方の中にあった不安も起きた時からあった既視感も全く感じれなくなった。




 状況はイマイチ掴めないが、貴方は凄い偉業を成し遂げたかのような達成感を暫くの間浸るのだった。





     the road opened

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NO END NO FUN Zホホ @admjgpt580777

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