NO END NO FUN

Zホホ

第1話 貴方は体感した


 貴方は不快さと圧迫感を感じ目を覚ます。


「何だこれは?」


 どうやら布のような物で全身を包まれ横たえられているらしく、目の前は相変わらず真っ暗で何も見えない。


 貴方は自身が何故こんな事になっているのか、寝起きであまり回っていない頭で考えるがこんな事をされる身に覚えがなかった。


 取り敢えず拘束されたままは嫌なので、思いっきり動いて破こうとするが、拘束は1ミリも緩んでくれない。

 その様子から貴方はドッキリなのか本当の誘拐なのかは分かっていないが、自身の自由を侵害されていることに強いストレスを感じていた。


 来るかも分からない救助を待つより自身で動いた方が良いと思い、何とか脱出しようと試行錯誤する。


「くぅ、硬い…………!」


 暫く頑張っていた貴方だが、布のような物が思いのほかしっかり巻かれており、しかも心なしか酸素が薄くなってきた様に感じたので自力脱出は諦めざるを得なかった。



ーー カツン カツン



 そんな時、貴方の息遣いしか聞こえなかった空間に異音が混ざったのに気付いた。


 耳を澄まして良く聞いてみると「 カツン カツン 」という何かが歩く音が確かに聞こえて来る。


 貴方は音の主に助けを呼ぶか迷っていた。

 もしかしたら、自身をこの様な状況に追い込んだ犯人なのでは?と思ったからだ。


 しかし、犯人ならば此処で何かしようとも結果は変わらないと考え直し、意を決して助けを求めた。



「助けてくれ!ここだ、ここに閉じ込められているんだ!!」



 貴方は、布の所為でくぐもって相手に上手く届いていないかもと不安になりながらも、懸命に声を上げる。



ーーー カツン コツン カツン カツン



 果たしてその努力は報われたのか、歩く音が一瞬止まったかと思うとまた歩みを再開させて今度は段々と此方に近づいて来ている事が分かる。

 

 そして歩く音が貴方の直ぐ側で止まったかと思うと、チョキチョキという切るような音が聞こえた。



「……あ、ありがとう。此処は苦しかったんだ」



 ずっと無言なのに不信感を抱いていたが、取り敢えず拘束は解いてくれるようだ。

 よく分からない状況ではあるが、何とか助かりそうだと貴方は喜び安堵する。



ーーー チョキチョキ チ"ョキチ"ョキ



「ーあ"ぁ?え"ーー、あ"ぁぁぁ?!」



 油断していた貴方は腹の辺りで生じた熱とに一瞬疑問を感じ、暫くしてそれが切られた故のモノだと理解し叫ぶ。



ーーー チ"ョキチ"ョキ ヂョキンヂョキン



「止め"て"ぇぐれ"!ーーお願いだ!何て"こんな事を"ー?!誰か"助け"てぐれ!!」



 布と一緒に間違えて切られたのではなく、故意で切られていた。証拠に貴方が泣き叫び絶叫し、ゆるしをおうとも何者かは切るのを辞めない。



熱い、痛い、熱い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、何で、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い



『いっひっひっひっひ』



 嘲笑う悪意に満ちた声が響く。


 貴方はこの嗤いを聞きながらゆっくりとゆっくりと丁寧に切られ、裂かれていく。

 不思議と痛みと絶望で正常に働いていない頭でも、自身が裂かれている感覚は鮮明に分かっており意識は覚醒し続けている。


 貴方はこの時、この悍ましい行為は死ぬまで終わらないのだと理解した。




『ひゃひゃひゃひゃひゃ』



 どれだけの時間が経ったのだろう。

 

 拘束する役割を終えた布は邪魔だと言わんばかりに捨てられ、辺りは盛大に飛び散った血で現代アートのようにさえ見える。



「ーー」



 身体はボロボロ。

 既に痛みに生物的な反応をしなくなって久しい。

 

 そんな貴方は、自身の鼻を血濡れたハサミでグニグニとグチャグチャと頑張って切る、顔を狐面で隠した小さな少女を唯々見ている。


 頭部まで切り裂かれ、最後に頭蓋を割ろうと少女がハサミを勢いよく振り下ろすその時まで、貴方は死者を彷彿とさせる瞳で見ていた。


 死ぬまで、死んでからも。





       you died

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