幸せの在処

@bluepasta_222

第1話

 「ぁ」とほんの少しだけ口を開くと、途端に僕の身体は動かなくなる。

 どうやら僕の身体は、一度に2つ以上の部位を動かせなくなってしまったらしい。それを自覚したのは1週間前のことだった。朝、布団から出ようと身体を起こした瞬間、腰以外の全ての動きが止まってしまったのだ。腰を曲げている間、目も見えず耳も聞こえない状態になった僕は心臓が止まるかと思うくらい驚いた。

 そしてある日、気がつくと僕はいつの間にか広い草原の上にいた。思うように体を動かせない僕がどうやってこの場所まで来たのか全く覚えていないが、そんなことが気にならないくらいにここは楽しい場所だった。目を開けば僕の隣で幸せそうな子供たちが踊っているし、耳を澄ませば楽しげな音楽や笑い声に包まれて、つられて僕も楽しくなるのだ。

 最初こそ気持ちの悪い感覚だったが、慣れてしまえば意外となんてことない。むしろ、働かなくても勉強しなくても誰にも咎められることのない状況が、もはや天国のようにも思えた。

 こんな場所がこの世にあるなんて知らなかった。ここに来るまで、毎日希死念慮に襲われて何度も自殺未遂をしていたというのに、今はこんなにも楽しく幸せになれている。

僕は生きていて本当に良かった!

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