第2話 新たな人生

あれからどれだけ経ったんだ。

 気がついた頃には寝ていたらしい。赤ん坊なら仕方ない。

 

 はあ。一度思考を整理するか。

 

 まあ確定して言えることは俺は1度死んだ。

 

 そして生まれ変わった。

 

 ここで言うなら転生した、という表現が正しいか。

 

 新たな名は、リバイア。

 随分かっこいい名前だ。

 

 母親は金髪で綺麗な女性。

 俺が日本人ではなく生まれ変わったのは確かだろう。

 

 ここは、海外か?確かめる術はないが。

 

 不思議と言葉は分かる。

 

 母親が俺を抱き上げる。

 「リバイア、よく生まれてくれたわ。」

 綺麗な女性だ。

 死んで生まれ変わるのが一瞬過ぎてなんとも言えない感覚だ。

 

 言葉も何故か、分かる。

 そして、思考も前世の俺だ。

 

 そして記憶はもちろんある。

 

 ここまでが、今んとこ確定している事だ。

 

 俺は転生した。

 

 そしてどこの国かはわからないが、日本ではない。

 

 なぜか、言葉はわかる。

 

 そして問題は、だ。

 

 目の前に意識を集中させる。

 

 ステータスというやつだろうか。ゲームでしか見たことがないようなデータのような画面が映し出される。

 

 リバイア・ガードナー

 男。0歳。ヒューマン。

 ユニークスキル︰バリア

 

 パッシブスキル︰精神攻撃耐性、毒耐性、属性耐性、神からの祝福、能力値上乗せ、言語自動翻訳

 

 アクティブスキル︰回避上昇

 

 全く、なんだこれは。

 めっちゃくちゃゲームじゃないか。

 ステータスというかスキルチェックといったところか。

 

 見たところHPみたいなものは無い。

 さっきは混乱して一瞬しか見ていなかったが、自動翻訳なんて持っていたのか。

 

 それで謎の言語を聞いたこともないのに分かっている、ということか。

 

 それにしても属性だの、耐性だのってここは本当に俺の知ってる世界か?

 

 いや、いい加減認めるしかないか?ここは異世界って判断した方がいいのか?

 

 だが、まだ判断できないんだよな。

 俺が転生して自分の加護?みたいのが見えるようになったと考えられなくもない。

 

 謎の言語についても俺はたかが高校生だし、全言語話せる訳でもない。英語はまあ少しわかるか、そんなもんだ。だからこの世界については確定は出来ないな。

 

 くそ、また眠気が。少し考え事しただけでこれか。困った体だ。

 

 翌日、周りの会話を注意深く聞いてみた。

 寝たりしながらだが。

 

 わかったことは俺がいる今の建物は、父親の所有している家ということだ。

 

 まだ目が眩しくて見えづらくてわからんが、病院ではなかったのか。

 

 かなり大きな家であると言える。

 そして金持ちなんだろうな。

 

 使用人か何かが多くいることが分かる。

 

 母親の名前はリッツ、父親はサーベル。

 なんだか本当に聞き馴染みがない。カタカナが多くて覚えられるか心配だ。

 

 使用人からは度々『守り手』様と俺らの一族は呼ばれている。

 

 どこの世界の貴族になったんだ、俺は。

 

 また父親はガーディアンの仕事というのをしているみたいだ。

 

 ガーディアンだの、守り手だの、守ることになにか特化しているのだろうか。俺らの苗字?ファミリーネームもガードナーだしな。

 

 決めては俺が待つスキルがバリアってのも気になるがな。

 

 まだ赤ん坊だし、何も出来んが。

 

 今日わかったことはそれぐらいだ。

 

 そんなこんなで俺は身体が発達するまでは情報収集を徹底させた。

 

 そしてーーーー。

 

 気がつくと俺は5歳になっていた。

 

 この数年、体が成長するのに合わせて、本を読んだり、父親に連れ出されたり、そんなこんなで世界のことは分かってきた。

 

 ああ。認めよう。

 

 ここは、異世界だ。

 ニュールドという名前の星らしい。

 ニュールドの誇りにかけて

 という言葉もある。

 

 魔族を滅ぼした時の勇者の言葉らしい。

 

 この世界にはモンスターや魔族は存在しない。

 かつてこの世界に現れた勇者に一掃されたらしい。

 

 勇者は世界が危機の際に現れる。あまりの徹底した戦いぶり、敵に対する慈悲のなさから一部の地域では破壊者、なんて呼ばれている。


 生まれ変わったものの勇者だの、異世界だのとんでもない所に生まれてしまった。

 

 そして予想通り、魔法が発展している世界だ。

 

 ニュールドの生命体には生まれた時から神よりギフトが送られるらしい。

 それは平等に訪れる幸せ、らしい。

 与えられるのは種族とスキル。

 

 俺がスキルチェックと呼んでいたものはこの世界の人間にとっては幸せらしい。

 

 そして種族の誇り、神からのスキルを元に人生を彩っていく。

 

 それがこの世界。

 

 俺はヒューマン。まあ普通に人間だな。

 

 父親にヒューマンはどう生きるのか聞いてみた。

 

 「ヒューマンか?もう将来を考えているのか?まあ良いか。息子が賢くて驚きたぞ。母さんも俺も頭良くないからな。・・・まあそんなことはどうでもいいか。」

 

 父親のサーベルはお世辞にも賢い感じではない。でも男らしくてかなりイケメンだ。そして頼りになる。髪色は茶色っぽい。肉体はよく鍛えられており、筋肉が服から浮かび上がっている。

 

 サーベルは髭を触りながら少し考え、話し始める。

 

 「まあ、俺はお前に好きなように生きてもらいたいが。家柄、出来ればガーディアンを目指して欲しいと思うぞ?王族を守る戦士のことだ。ガードナー一族は王族を守った栄誉が認められて貴族となった。・・・かなり、昔の話だがな。正直自由をさせてやりたいが大国間はいつ戦争が起きるかわからない。宗教問題や種族間の差別は未だある。ガーディアン、パラディン、セイクリッドはどこの国もいるに越したことはない。」

 

 ガーディアンは王族を守る戦士及びボディガード、パラディンは主に戦争に駆り出される騎士・国にいる時は警察の役割を担う。セイクリッドはスキルや魔法を専門とする神官や神に愛さられているものなど未だ戦争の原因のひとつの職業だ。

 

 サーベルの話を総合すればどれかの職業につき国を守る。それが生き方のようだ。

 

 どこの世界でも戦争や差別は存在する。

 

 だが、この世界は魔法があることでその風潮が強い。

 力の差が明確となるからだ。

 

 俺はサーベルに感謝の気持ちを伝える。

 

 「ありがとうございます。お父様。」

 

 「・・・おう。まだ時間はある。そんなに焦らなくてもいいと思うぞ。10歳からなにかしらの教育は受けてもらうが、それまでは好きに過ごすといい。」

 

 「・・ガーディアンが守るべきは王族の方のみなのでしょうか。」

 

 「いいや。そういうわけではない。命は平等だ。守る力があるなら、大切な人を守ることに使う。それで間違ってないぞ。その先が王族を守るってことになってるだけだ。中には貴族を守ったり、用心棒で働いている奴もいる。旅に出てのんびりな。」

 

 「・・・学校には行きます。でも、ひとつだけ、お願いがあります。僕、自由に生きてみたいんです。」

 

 「冒険がしたいってのか?・・・勇者がいた時代はそれで食っていけたが、今は他国との問題が多い。村も減ってきてるし、外は差別が更に進んでいる。自国でやりくりして、のんびり暮らすってのも出来ると思うぞ?」

 

 確かに言う通りだった。

 

 差別は嫌いだ。きっとこのままでもやっていける。

 

 でもどうせなら。

 

 どうせ生まれ変わったのなら。

 

 「・・・5歳にこんな頼み事されるなんてな。どうなってんだ。俺はバカだけどよ。さすがに、分かるぜ?お前、普通じゃないだろ?」

 

 ・・・警戒されてる、当たり前か。

 

 子供がこんなこと言うなんて、ありえない。すこしやりすぎたか。

 

 「・・・まだ研究は進んでねえが、こことは違う別世界があると、数年前から噂されてる。勇者は常にそこからやってくる、ってな。世界がピンチの時、どこかの国が儀式を行うとその勇者とやらは現れるらしい。そしてその世界は俺らより上位の世界に存在してるらしい。戦争も滅多に起きない。平和な国、技術は発展してるってな。」

 

 こいつ、俺をほかの世界から来たって思っているのか?

 

 「まだ言葉も教えてなかった頃にどんどん話し始めて、最近は本なんて読み漁ってる。そして今度は将来?どう考えても別の世界から来てこの世界のことを調べようとしているとしか思えねえ。息子だし、多めに見てやる。目的を話せ。」

 

 すこし目付きが鋭くなる。さすが、大国を任されている戦士だ。圧で体が震えそうになる。・・・精神耐性のおかげかそこまで怖くはないが、以前の俺ならチビっていただろう。

 

 これは観念するしか無さそうだ。

 いくら、この世界がわからないからって、動きすぎたようだ。

 素直に話して、了承を得よう。

 

 「・・・そうです。確かに僕はこの世界の人間では無いです。別の世界で死んで気がついたら生まれ変わってました。特に目的はないです。でも、僕は前世で多くの差別を受けてきました。でもこの世界ではその心配は少ない。・・・だからせっかくの第2の人生、楽しく、自由に、生きてみたいんです!」

 

 俺は思いの丈を正直に伝えた。

 

 するとサーベルは怖い顔から一転、明るく笑顔を弾かせる。

 

 「・・・。そうか。わかったよ。はあ。スッキリしたわ〜。俺の子供にしては変だと思ったんだよ。・・。いいぜ、自由に生きても、別の世界で生きてきたのなら、心配はない。だが、この世界のことは知る必要がある。そして稼ぐすべも、だ。そして何より見込みと証明が、今のお前には足りない。セイクリッド曰く、転生した人間はかなり強いらしい。だからなにかあるはずだ。10歳の入門前だ。その時に俺と戦え、そこで勝てば、学校卒業後、全力でサポートするし、自由に生活して構わない。」

 

 「もし、負けたら?」

 

 「俺の後を継ぎ、最強のガーディアンとなってもらう。俺はガーディアンだが、パラディン、セイクリッド、と育成を受けてきた。バカだから、必死に努力して強くなろうと思ってな。ま、学術的なとこはてんで雑魚いが、戦闘については俺はこの国1番と言っていい。そんな俺を倒せないようじゃ、世界を回るなんて認める訳には行かん。俺の元で確実に強くなって、この国を守ってもらう。これが条件だ。」

 

 とんでもねえぞ。この父親。

 自称最強の男と戦えってか。

 それを自分の子供に言うか?普通。

 

 だが、サーベルの目はマジだ。

 

 どちらにしろ、ここでどうにもならないならサーベルの言う通り、国に仕えてのんびり暮らした方がいい。

 

 これは今後の俺の人生を決める上で大切な戦いだ。

 

 この話、俺にとってメリットしかないじゃないか。

 

 頭良くないってのは本当なんだな。

 

 「わかりました。その条件飲みます。」

 

 「息子の成長が楽しみだ。」

 

 これが第2の人生のスタートか。

 

 まずは打倒父親ってとこだな。

 

 中々面白いじゃないか。

 

 差別されてきた毎日。

 

 今は努力すればするだけ可能性がある。

 

 自由な人生の為に俺は強くなってやる。

 

 目指せ、異世界でのんびりマイペース旅!

 

 

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