第29話 チャールダーシュは踊れないの巻・後編
それらの準備を、わたしが先行している間、「でっかいものクラブ」の中でも「高身長」を誇る古谷に、いい機会だと、少し手が届かなくて、そのままにしていた時計を外してもらい、電池を変えてもらったり、女子にしては背の高い部類に入る、そんなわたしでも(約167㎝)高いところの用事を片付けてもらい、桃山が、お布団やお風呂の準備をして、用事を終えた古谷と一緒に、全員で料理に向かい合っていました。
桃山は、彼ピの愚痴と一緒に、レタスをちぎりまくり、「熱い熱い! こんな日に限って、お惣菜がないなんて! カノッサの屈辱なみの苦労!」などと、バカすぎる上に、不信心なことを言いながら、ふかしたジャガイモを潰して、マヨネーズやらなにやらと、ボウルの中で混ぜ、冷蔵庫の「冷蔵室」ならぬ「冷凍室」に投げ入れて素早くイモを冷やし、わたしや古谷が用意した色々なその他具材を混ぜて、ようやく大盛りのポテサラは完成し、唐揚げもカラッと揚がり、まあ、出来上がってみれば、なんてことのないメニューではありましたが、とりあえずの夕食の支度は終わり、古谷は、ようやく下のガスコンロから物の消えた換気扇に、素早く早歩きで寄りつくと、やはり素早く一服していました。
それから、みんなで箸をすすめていると、「この梅干し最高においしいよ。強欲なモネは、この高級な梅干しを、特売日に必死でポチッて、買いだめているんだって」「そう……あ、本当においしい……」「いまは出てないけどさ、モネは、おいしい味噌も持ってるから、明日の朝は和食で、お味噌汁つきだといいね」「…………」桃山のそんな少しと言うには、かなり図々しい言葉を聞き、「明日の桃山の皿は、捨てようか悩んでいた、削れかけた変な模様の皿にしよう」と、考えながらも、わたしは、やはりなにかで手に入れた、企業名の入っている「ショットグラス」に、ほんの少しだけ入れたワインを飲んで、首を傾げておりました。
「おいしくないの?」当然、そんなことを、たずねられていましたが、「普段アルコール飲まないから、あまりよく分からない。おいしいんだけれど、なんて表現したらいいのか分からない……」そんなことを言いながら。
実は、このワイナリーの「別のワインを飲みたかった」そんなことを言っていると、「同じワイナリーでも、全然別物だよきっと……ワインは同じ種類でも、年度で味が違うって言うし……」そんな哀れみに似た言葉を発した桃山は、「どれどれ……」そんなことを言って、持って来た2個の新しいグラスに、古谷は少しでいいと言ったので、ちょっぴりだけ古谷のグラスに注ぎ、残ったワインを勢いよく自分のグラスに注いでいました。
古谷も、「甘くておいしい。でも、わたしも、ほぼ飲まないから、詳しいこと言えない……」そう言っていました。
桃山はと言えば、なにか、「ワインの専門家」「舞い降りたソムリエール」そんな風に、目をつぶり、ゆっくり味わってから、「強い甘みながら、くどさはなく、喉ごしも……これ、おいしい! まるで、ぶどう味の最高級の梅酒!」(なんだそれ?)と、表していたので、やはり、まったくあてにならず、とにかく、一瞬でなくなったワインは、「甘くておいしいワインであった」そんなワインには、申し訳ない評価でした。(購入者ガチャに外れた素敵なワイン……ごめんなさい……)
夜中、「古谷の家」とは違い、せま苦しい部屋で、みんなで寝そべっていると、「鈴木(知り合い)が“でっかいものクラブ”に入りたいって」「どう見積もっても155cmないから、丁寧にお断りしておこう。キリがない……」「キリがないくらい、申し込みされたことなんて、ないけどね」とか、「まだ小説書いているんだったら、うちのおばあちゃんが懐かしがってる“渡り番頭”とかいう話の続きを、ぜひ書いてやって欲しい。テレビでやってたって……」「一応調べてみるケド、多分、ソレしたら恐らく、一発アウトだと思う」「残念……」そんな、どうでもいい話をしたり、聞いたりしたりしながら、ゴロゴロしていたわたしは、やはり今度、『エスターハージー・テソロ』を買おう。
そう思いながら、チャールダーシュは、当然踊ることもなく、部屋干しした洗濯物の下で、明日しっかり用事のある古谷は、さっさと眠り、「彼ピと仲直り」あるいは、「新しい好きピを探す」算段でもしているのか、桃山はタオルケットの中で、スマホをずっと触っており、わたしはわたしで、「明日バックアップとろう」……そんなことを考えながら、「カクヨム」で、最近は、「厳禁行為」とされている直打ちに、目を血走らせて励んでいたのでした。
翌朝食べた、ふたりのお土産の桃は、おいしかったです。
例の蓋も素敵な薔薇も、まだ生き延びています。そのうち「渡り鳥が連れてきた番頭」とかいう、ずるい短編小説を思いついたら、いつか読み切りで書いてみようかと思います。
***
・追記:1
「エスターハージー」ワインとは、もちろん、テレジア奇譚に出てくる「エステルハージ侯爵家」生産品で、下記イメージ画の右上の人が、ワイン製造元のご先祖様設定です。(現在、爵位制度は廃止されているとのことです)
https://kakuyomu.jp/users/momeaigase/news/16817330653402041752
***
・追記:2
桃山の名誉のためにつけ足すと、なぜ桃山がいつも「あんなご様子」なのかといえば、彼女は彼女なりに、抱えるものがあり、それが、そうさせていて、そんな彼女といえば、わたしが本当に辛くて、誰も好き好んで、近づきたくはない。実の母ですら眉をひそめる。そんな酷い状態のときにも、見捨てずに寄り添ってくれた、数少ない友人でもあるのです。
***
あと、画像があるので、飲んだのでしょうが、全く記憶にないビール画像を発掘しました。そのときレポートしてたかも? これが甘かったビールかもしれません。(違うかもしれませんが)
・ダルマイヤー ヴァイスビール(多分)
https://kakuyomu.jp/users/momeaigase/news/16818093083532741608
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます