第25話 「ふるやのいえ」の巻 (前編)

『ふるやのもり』ならぬ『ふるやのいえ』のお話です。フィクションです() 長くなったので、分けました。2024年8月ごろのお話で、近況ノートに貼った写真は後編に出てきます。


※ルッキズムや、最近のコンプラ、SDGs的に、配慮がないといえばない、そんなお話なので、お気をつけ下さい。そういうのは絶対に無理な方は、そっと閉じて、見逃してやって下さいませ。あと、小説をご拝読頂いただいている方には、「ああ、あの……」そんなかすったことが、ほんのり現れる話でもあります。


***


※登場人物、『でっかいものクラブ』に所属する3人→このクラブは冗談から発生し、「身長165cm以上であること、何らかの黒帯(段位に相当する資格)を所持していること、性別は女であること、必ず会員の紹介であること」というのが入会条件ですが、なんの活動もしていないので、名ばかりのクラブです。何人いるかは秘密です。(元ネタは、「おじゃる⚪の」ちっちゃいものクラブ)


(今回も、ちろん全員仮名)


・わたし→モネ(生物学的分類:女)若くして? 脳溢血になったトラウマで? サウナで整えない状況に陥っている。気づかぬほどに持ち合わせていた膝の不具合を、自業自得に悪化させてしまい、体調の物理的な下り坂状態の中、ナントカせねばと足掻いている。亡き祖父母だけが可愛さを認めた、一般的には、美人カテゴリーではない顔面の持ち主。多分、一般人。


古谷ふるや→友人A(生物学的分類:女)友人紹介でよく多用される? 気遣いが生み出す「美人」ではなく、「うちの会社のポスターに!」「モデルになりませんか?」などと、いくたびも申し込まれたり、ストーカーや妄想男に、結構な割合で悩まされたりする、いいんだか悪いんだか、微妙な人生を歩いている。素敵な雑誌に載っていてもおかしくはない、選ばれし「特別製の美人」で、物理的には、強者よりながら、ごく普通の一般人。


桃山ももやま→友人B(生物学的分類:女)桃太郎バーガーに突撃してる人。その昔、古谷のたちの悪すぎるストーカーを、一緒になって、こともある物理的な強者。基本的に善人ではあるが、いろいろと問題児でもあり、燃費が悪い。他人の恋バナが好物。南国の鳥のような髪色の持ち主。動かず騒がず、壁際で静かにしていれば、美人枠に入る人物。一応、一般人。


***


「ここ、ほんとに市内だと思う!?」

「だよね……」


 夏の暑い盛り、ちょっとした休日の早朝に、わたしと桃山は、リュックを担いで、古谷の住む「ふるやのいえ」もとい、「古谷の家」がある、一応は市内のとある駅に、たどり着いていました。


「古谷の家」ときたら、その駅からも、かなり距離があるのです。駅からのバスはあるけれど、1日数本しかなく、辺鄙とはいえ、少なくとも5分に1本は、電車がやってくる、わたしの住まいと同じ市内ながら、なかなか通勤通学には、気合がいる土地ではあるのです。


「だから車出してって言ったよね?」


 わたしは、そう言いましたが、桃山は嫌な顔で、「ぐぐったら、あそこ坂道は急だし、道は狭いし、側溝は広いから、絶対にいや!」そんな返事を返してきました。


 そう、「古谷の家」は大きいのですが、そこにつながる道路は狭く、その上、急なグネグネ坂道なのです。わたしはといえば、金メダル色のペーパードライバーでなので、桃山に、文句を返す権利などなかったのでした。


 なぜ、古谷が地元でもないのに、大きな家ながらも、かなり気合のいる土地で、ひとり暮らしをしているかといえば、元はといえばそこは、彼女の遠い親戚が持っていた空き家で、「もう、売ってしまおうか」そんな話になっていたらしいのですが、色々と条件の兼ね合いで、売ろうにも売れず、身軽な古谷が、それを聞きつけて、ここぞとばかりに、血のつながりをアピールし、小さめの冷蔵庫をひとつ、大き目の冷凍庫をふたつ購入し、何だかんだと持ち込んで、ヤモリのように住み着いているのです。


 普通に宅急便は来るし電波も届く。彼女は、大型バイクを乗りこなすので、別に普段、困ることもないと言ってしました。しかしながら、やはり困りごとは起こったのでした。


「詰まった雨どいを修理するのを手伝ってほしい。一通り、ネットで調べたけれど、簡単ながら、ひとりでは無理がある。で、代わりと言ってはなんだけど、新しくソフトクリームの機械を買ったから、好きなだけ食べていい」


 それが、彼女からもたらされた話でありました。


「ソフトクリーム食べ放題、素人でよければ……」

「……やぶさかではない」


 わたしと桃山のふたりは、そんなこんなで、のこのこと誘い出され、 「ソフトクリームの機械だって!」「食べ放題だってさ! 子どものころの夢がいま!」と、ひとしきり興奮してから、「久しぶりに顔も見たいしね」そんな言葉を、言い訳がましく付けくわえ、電車に乗って、彼女をたずねていたのです。


「バス、まだまだ来ないよ……待っているより、歩いた方が早いかも」

「そうかもね、バス停から古谷の家まで、どうせまだ歩くしね」


 駅前のコンビニで、3人分の弁当やパンを購入し、リュックを背負い、遠くにこんもりとした小さな山「ふるやのもり」、ならぬ、そして、「古谷の森」でもない(そもそも意味が違う)ギッシリ大きな緑が見え隠れする、坂の上の「古谷の家」がある方向に向かって歩きながら、方向音痴のわたしは、「しまった、なにか飲み物を買うべきだった」と思いつつ、すぐにカラカラになった喉で、桃山のあとを歩いていました。

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