第10話 サステナブルと自業自得の悲劇

※これでも精一杯オシャレぶって背伸びしております。



 その日、わたしは珍しく、アフタヌーンティーのテーブルについて、無言で説明を聞いておりました。


「セイボリーは、サンドイッチと、味噌のディップのついた……うんぬんかんぬん……そして、こちらから順に秋の新作……」


『え? ちょっと待って! 朝昼のごはんは、念のために抜いて来たけど、まあまあのサイズの三段セイボリーに加えて、ケーキやらタルトやらが、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ……いつつ~~?!!! 入るかな? ぎりぎり……無理かな?(むっつだったかもしれません。)』


『まるで坂東屋敷……』


 そう、今日も今日とて自主性のない、主張をすることが、かなり得意ではないわたしは、とあるお祝いにと、少し足を延ばして(引きずられて?)その日は、おしゃれで隠れ家的なお店(店舗の前は、普通のどこかのおしゃれ雑貨店を偽装? しているので、本当に隠れ家! にて、数名の店員さんを引き連れた、とってもシュッとした店員さんに、本日のアフタヌーンティーのメニューについて、すました顔で説明を受けていたのです。


 メイクとおしゃれが必要なのは、こんなときですよね!


 もちろん、まつパ事件のときと違って、今回はばっちり。そして、お気にいりのワンピースにパンプス。なにが入っているのか、たまに聞かれることもある謎に大きなバッグ。


 そういえば、「装いはなんのために? だれのために?」そんな議論? をたまに見かけますが、それは、こういう時に必要なんでございます。


 そう、自分でも他人でもなく、おいしくておしゃれな甘味を味わうために、おしゃれは必要なのです。お店に入れてもらえないとかの悲劇が、稀に発生する場合がございます。


 ※でも、なんだかんだ言いつつ指折り数えて、この日を密かに楽しみにしていました。


 それでも、それでもです。セイボリーだけでも結構な質と量。加えてあの量のケーキとタルトは絶対に食べきれない……。


 そんな風に、脳内で焦っていたわたしに、救いの声が聞こえました。


「当店は、をモットーにしており、先にケーキ類は数種類、選んでいただき、あとで追加も可能で……」


『追加も可能! つまり初めは少なく言えばいいのね! み、みっつくらいにしよう! どうしよう? どれもおいしそう……』


 そのときです。向かいに座った美しく華奢な友人が、メニューを手にしたまま、きりりと言い放ったのは。


「全部、全種類置いていって! あと紅茶はとりあえずこれで!」

「はあ……」


『え?!』


 上品な数名の店員さんは、「大丈夫かな?」そんな表情と、大量の甘味をテーブルに残して消えてゆきました。


『忘れていた。……この子には入る量だった……。わたしはいけるかな? 食べるスピードを上げれば、満腹中枢に指令が到達する前に、あるいは……なんとか食べきれるかもしれない……』


 こうなると上品もなにも、あったものではございません。しかしながら、時代はサステナブル。お残しは禁止でございます。地球環境にやさしく! 無駄は厳禁です。


「あのさ……食べるの早いね……もう少し味わったら?」

「……そう?」


『誰のせいでこうなっていると~~~! しかし、しかし、サステナブル!』


 そうこうしている間、数十分も経過したころでしょうか? そんな言葉を全種類のケーキ類と共に、いただく数杯目の紅茶で、ぐっとお腹の中に閉じ込めていました。


 そしてその日、様々な甘味を完食したわたしは、「脳みそまで砂糖漬けになっていそう……」そんなことを考えながら、よろよろと夕焼けの中、おうちに帰りましたとさ。


(※お店の名誉のために付け加えますと、どれもこれもおいしゅうございました。)



※後日談


 禍福は糾える縄の如し……それから数日後、なんだか急に歯が痛み出し、歯医者に駆け込んだ末、頬が腫れあがった感覚を抱えたまま、何度も通院するはめになった自業自得のわたしは、ときには、はっきりとモノを言うことを、この年になりようやく覚えました。


 2023年秋、まだ少し残る歯痛に四苦八苦しつつ、柔らかく煮た素うどんを抱えながら









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