第40話 魔獣大隊

結局、僕は魔王に仕える事にした。


四天王は五魔(いつま)と名前が変わり5人目の幹部として仕える事になった。


魔族側から、反発が起きるかと思われたが、何も起きなかった。


今では仲間となったマモンやゾルバ曰く「魔族は力が全て、強ければ尊敬される」との事だった。


案外すんなり、受け入れて貰えた。


マモンの肝を食べたせいか殆どの魔物と意思疎通が出来てしまう。


こうなると、もう魔物を狩る事が出来ないと思う。


最もダンジョンですら敵が襲って来ないので、最早散歩にしか過ぎない。



4人の仲間はと言うと特に問題無く受け入れて貰えた。


「私は騎士だ、仕えているのがセイル殿だから問題無い」


「正直、複雑ですが..こうなってしまったら受け入れるしか無いでしょうね..スカルさんも詫びていましたし、何よりこの姿がセイル様にとって絶世の美女なら問題ありません」



アイルは絶対に受け入れないそう思っていたがそうでも無かった。

スカルが最初、責任を持って元に戻すと約束したが、「だが、そうした場合はセイルががっかりすると思う」と口を滑らした。アイルが詰め寄り目の秘密がバレた。その結果、アイルは治療を拒んだ。

目の秘密はアイル以外はまだ知らない..

「私だけが知っているセイル様の秘密うふふふ..」

あのスカルが恐ろしい物を見るような目で見ていた。




「此処に居れば一番安全だし、爵位で言うなら公爵や侯爵になったみたいな物だから出世なのかな..」



「スワニーは仲間が増えて嬉しいけど、もうミノやオークが食べれないから複雑だわ..まぁ牛がもっと美味いから良いんだけど」



これから先、少しづつ受け入れて貰えるだろう...と思ったら。



「ここに住んで良いの?」


ゾルバ直々に案内されてきたのは旧公爵の屋敷だった。


「マモンは一か所に住むのを嫌いそこら辺で寝ているし、スカルは城の研究室にいる、俺も昔の騎士団長室に居るから使って無いんだ」


これに気を良くした、ユリアは。



「魔王様の方が素晴らしいわね、もし魔王討伐が出来ても良くて子爵、下手すら騎士爵だから..今思えばケチだわね..しかも聖女じゃ贅沢は出来ないし」


「私も、宮廷魔術師として飼い殺し..この方がよっぽど良いわ」


「騎士爵から...公爵婦人か侯爵夫人、大出世だな」


スワニーだけが余り解らず首をかしげている。



「使用人も明日から来るから安心するが良い」



しかも、中に入ると美術品や財宝もそのままだった..



勇者なんかより余程待遇が良いじゃないか...




一旦、アルマンに帰り、ファングやエドガーさんケムさんにも報告位しないと...


そう思ったが、何故か隠れるようにしているファングを見かけた。



「ファングどうしたんだ?」


「なっ..なんだセイルか? 何かあったのか?」


「お前なら良いか?..実は悪事がバレてな今は逃走中なんだ」


「もしかして、冒険者を殺していた事か?」


「知っていたのか?」


「まぁな..それで、皆はどうしたんだ?」


「とりあえず、この王都に逃げて来たんだ..此処は魔族に支配されたから、アルマンの冒険者ギルドの威光(?)も届かない」



ファングやエドガーさんにケムまで居ないならもうあの街に帰る必要も無い。


ファング達が幾ら人を殺しても無視していた。


僕たちに住みよい街をくれた、僕の為に本気で怒ってくれて、仲間を紹介してくれた。


大切な人間の前には「自分達を嫌う人間」の命など価値は無い。



「なら、僕の屋敷に来ないか? 今後の話はそれからで良いんじゃないか?」


「屋敷って何だ..」


これまでの事を話した。


「すげーな..それ」


「旧公爵館に後で来てくれ、エドガーさんやケムさんももし連絡がつくなら一緒にな」


「恩にきる」



「恩なんか要らない..仲間だろう」


「...そうか..そうだな」




エドガーさんやケムさんも合流して今後について話あった。



僕からも幾つか提案をさせて貰った。


1. 全ての罪を許され冒険者を続ける


この街のギルドの所属になり、僕が後ろ盾になれば可能だろう。


貴族の後ろ盾がある冒険者みたいなものだ。



2. 僕の家臣になる事


正直、仲間を下に見るのは嫌だが信じられる仲間は欲しい。


他で悪人であっても僕には本当の親友と呼べる人間はこのメンバーしか居ない。




「信じられない程の提案だな..良いのか?」


「エドガーさん、これは恩返しだ気にしないで欲しい」


「なら、俺は家臣になるぜ! 貴族のお抱え、ある意味冒険者としてゴールだ」



「俺も良いのか?」


「ケムさんのお陰で仲間が増えたんだ..当たり前だ」


「だったら、俺も家臣だ..安定した生活が送りたいからな..これで嫁さんも貰えるだろうから」


「そうか、だったらそっちも」


「要らない」


「いや、その位は」


「要らない..その他は最高だが..女は..そのなすまない」


「いや、良い..そうだな..」




「ファングはどうする?」


「セイル、俺はお前にとって必要か?」


「ああっ親友だろう..大切な仲間だ」


「なら、俺も家臣になろう」



この仲間を中心にセイルは魔王軍の第五の勢力「魔獣大隊」を作り上げる。


更なる忠誠を誓う事で仲間は全員魔族になり..力をつけ、次の勇者も葬りさった。


これが世にいう..暗黒世界の始まりだった。




FIN




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