第39話 魔王と

王都に着いた。


途中、盗賊に会ったが、大した数で無いので返り討ちにしただけだ。


(これが今の王都か!)


今の僕には天国にしか思えない。


人が普通に見える。


多分、魔族なのだろう、衛兵はよくいる厳つい男だし。



八百屋のおばさんも綺麗だ。


最も1/4だけで3/4は以前と同じ化け物だ。


僕の目から見たら、魔族は美しく見えると言う、そう言う事だ。


隠れてコソコソしていても仕方ない。


そのまま、城に向った。


凄くイケメンな門番に声を掛けた。


「銀嶺が来たと伝えて貰えないだろうか?」


「お前が銀嶺? どう見ても冒険者にしか見えない」


「今の僕は冒険者だ..勇者じゃ無い」


「ならば少し待て」



門番はオーブを取り出してかざして見せた。


「目が赤い..解った、此処を通そう..銀嶺殿、王都へようこそ」


「....」


「変な顔をしているな?この後は知らんが、今は客人だ..礼位は尽くすさ」



門を通り過ぎると、他の兵隊が引き継ぎ案内してくれた。


此奴もイケメン..メイドも可愛い子ばかりだ..良いな此処に住めば普通の生活が送れる..


昔、戦った魔王の中で世界の半分という取引きを言ってきた魔王が居たけど..今ならこの城を貰うだけで手を打ちそうだ。


但し、家来やメイドつきで。


「どうしたのだキョロキョロした顔をして」


「いや、イケメンや美女揃いで驚いているんだ」



「ほう..やはりな」



「どうかしたのか?」


「いや詳しい事は魔王様から聞いてくれ」



「解った」



そのまま大広間に通された。


そこには、マモンにゾルバ、謎の四天王に...魔王が居た。



今はゾルバは此処の領主..そう考えたら膝をつくのが当たり前だ。



「銀嶺..ことセイル、召喚に応じて参りました」



「ほう、久しいの銀嶺..言われて見れば面影はある」


ゾルバがしげしげと見ている。


僕はこの中でゾルバだけは面識がある..



「そいつが銀嶺なんだな..前の時は俺の方に来なかったからな..なかなか強そうだ」



「お戯れを」


「どうだ、少し俺と遊ばないか?」



今の僕じゃ普通に死ぬよ。



「まぁ良い、そう固くならんでも..普通にして良いぞ」


「そうですか、それは助かります」



「それでじゃ、儂はお前に聞きたかったのだ..儂の祖先が掛けた呪いはどうじゃ?」


「魔王の呪いだけに凄まじい物ですね、世界が変わって見えた」



「そうであろうな..それでその目で見た世界はどうだった」



「最初は恨んだが..違うな..本質がようやく解ってきた、魔族も人間も変わらない..いやこの目のせいか魔族が美しく見え、人間が醜く見えるせいか魔族の方が好きになりそうだ」



「その目はな、実は呪いでも何でもない、儂の祖先の目じゃ..今の儂以上に醜い者を愛し美しい者を嫌ったという最も醜い魔王。そして、これは眉唾だが、伝承によれば、醜女で見た物は恐怖で死ぬという「死の女王コーネリア」ですら愛でたという話すらある。今お前に見えるのはその祖先から見た美醜感覚だ、その醜さは戦った其方の方が詳しかろう」



「そうか..確かにあの時の魔王は「勇者よ、お前の目から見たらさぞかし、我らは悍ましく映っているのであろうな..だが、余からすればお前達の方が醜いのだ」 そう言っていた」


「それでどう思った」


「少なくとも今の僕には、あなたは老人に見え、マモンは歴戦の戦士に見え、ゾルバは知将に見える..僕は偏見に満ちていた、少なくとも問答無用で斬りかかって良い存在じゃない」



「そうか、それを知ってくれたんなら、祖先も本望だろう..なら、その目を元に戻してやろう」



「必要ない..僕はもうこの目に慣れた..このままで良い」



「それでどうする、また余の敵になるのか?」


「多分、もう知能の高い魔族は殺せない..ゴブリンやオークのオスですら殺すのが辛いんだ」



「そうか、マモン..」



「魔王様..嫌だ、あれは」


「マモン!」


「ちっ、解ったよ..だがな銀嶺、此処までして今度敵になったらただじゃ置かないからな」


そう言うとマモンは腹を指で斬って中から内臓を取り出した。


「いてーよ、痛っ..悪いが俺は一度退席させて貰う」



「さぁ、食すが良い」


「これは?」


「マモンの肝だ、これを食えば、魔物は襲ってこないし意思の疎通も出来る」



正直、食べたくない、だがマモンが腹をかっさばいて用意した物..無駄にしたら不味いだろう。


僕はそれを食べた..



「体が熱い..騙したのか..」


「騙してない..体になじむ為だ」



「ハァハァ..嘘じゃないようだな..」




「それでじゃ..実は最近四天王のうち一人スカルが倒されたのだ..空きが一つある、四天王に任ずるから世に仕える気は無いか?」



忘れていた。



「すみません..スカル、いやスカル殿をお返しいたします..いや..すみません、忘れていました」





俺は袋からスカルを取り出した。



「どうするつもりだ人間..えっ魔王様..」



「いや、ただ返すだけだ..」






「そうか、スカルを倒したのはお前だったのだな..魔族は力の世界、言った言葉に二言は無い..しばらくは王都に滞在して考えてくれ」


「解りました」



「そうだ、話も円満に終わったし、其方の仲間の4人も返そう..今日は宴を開くゆえ、仲間と存分に楽しむが良い」



怖ええ..流石魔王だ、温和に見えても..これだ。


もし、敵意を見せていたら..全員殺されていたかも知れない。





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