第38話 騙し...

王都に最近、高札が掲げられていた。


内容は(銀嶺なる者よ、もしこの世界に生まれているのなら余は会う用意がある)そういう内容だった。


「銀嶺」とは僕が勇者だった時の呼び名だ。


転生の軸がずれているのか、この名前はもう言い伝え程度にしかこの時代には伝わって無い。


だが、明かにこれは僕の事だ。


この国の領主は既にゾルバになっていた。


上に魔王が居るのだ領主という言葉が一番正しいだろう。


国中、いや世界中を探されては困った事になるかも知れない。


先に、こちらから出向く事にしよう。



「ちょっと王都まで行ってくる」



「また、セイル様は1人で行かれるのですか?」


「そのつもりだけど?」


「何故、私達に頼ろうとしないのだ..私は騎士だ」



王都で会うのは恐らくゾルバに魔王は確実だ。


他に四天王のマモン、そして謎の彼奴が居る。


だから、場合によっては死ぬこともありうる..だから今回ばかりは今迄以上に連れて行く訳にはいかない。



「静かに聞いて欲しい..今回の旅は自分の過去と向き合う旅だ..だからどうしても一人で行かなくてはならない」



「理由はあえて聞かないが..どう考えても危ないのだろう?」



「本音で言うと解らない、だが危なかった場合は、姫騎士に賢者に聖女が居ても役には立たない」



「命が掛かっているならセイル様、私はついていきます」


「私もだ」


「スワニーも行くわ」


「絶対についていくわ」




「そうしたら、僕は危なくなった時に戦えない..だから駄目なんだよ」



「どうして、駄目なんだ!」


「セイル様..可笑しいよ、その考えは」



「どうしようも無い位に皆が大切だからさ、今の僕には命より大切なんだ、例え僕は腕が切り落とされても足が無くなっても戦える..だが君たちが人質に取られたら..もう死ぬしかない、だから待っていてくれないか?」



「気持ちは解るが、それでも」


「スワニーは待っているわ」


「私もそこまで言うなら待っています..セイル様ならきっと無事で帰ってくるはずです」


「そうね、私も信じる事にするわ」




「それじゃ行ってくる」



「「「「待っている(わ)」」」」




さてと、王都に行くにしても手土産が必要だ。


こういう時に「不死身」というのは便利だな、掘り起こして持って行くとしょう。



「スカル...元気か?」


「おおおおお前は..何故、掘り起こした..どうするつもりだ」


もう体が胸の上まで生えてきている..もう一度切断しよう。


「なっ、また..」


「気にするな、持ち運ぶのに便利だからまた首だけにするだけだ」



アイルには悪いが、スカルは何かあった時の交渉に使う..



そのまま、王都に向い..僕は進んでいった。













「なぁ何故だ! お前達はセイル殿を愛していないのか? あの顔は事情は解らないが何かに巻き込まれている..なぜ」



「エルザ、あの場合はああ言っておかないと埒が明かないわ..女心と秋の空..私は気が変わりましたこれからセイル様を追いかけます」



「私もそうね、気が変わったわ..王都に買い物に行こうかな? スワニーも行くわよね」


「スワニーも王都に肉を食べに行くついでに、セイルを助けるわ」



「そのつもりだったのか?」



「これだから騎士は真面目すぎて困るわね」



結局4人は少し遅れてセイルを追いかけていった。




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