第35話 ohanasiにならない
私は自分の不死が恨めしい。
魔族だから暗闇は怖くない。
だが、これから自分に起こる事を考えたら恐怖でしかない。
箱に閉じ込められた挙句、奇形になり死んでいく..
私はこの地獄を大昔に体験した。
その時は、苦しさから「心から死を望んだ」
人の命を弄ぶのは好きだが自分がされると苦痛だ。
あの時、あの女を殺すか、情けを掛けていれば起こらなかった。
今となっては何時解放されるか解らない恐怖の中で此処にいるしかないのだ。
「何であんたが邪魔をするの?」
「あたりまえでしょう? セイル様は私の為に命がけでスカルと戦ってくれたのですからね!」
「今は、私が話があるのよ!」
「どう見ても怒っていますよね? 私の髪からつま先まで全部セイル様の物です。そんな私の為にセイル様は命がけで戦って下さいました。あとは差し上げられる物は心しかありません!」
「何が言いたいのよ!」
「つまり、私の全てはセイル様の物なのです! 私の全てを捧げているセイル様に暴言を吐こうとするユリアを捨て置く訳がないでしょう?」
「怒るのは当たり前だわ、たった一人で危ない事して死んだらどうするのよ..それが言いたいだけよ? 私が間違っているっていうの!」
「言い方の問題です、「貴方が心配だからもうしないで」それだけで済む事でしょう? それをネチネチと女の腐ったみたいな言い回し..見てて愉快じゃありませんよ!」
「エルザ、貴方からも言いなさいよ!」
「エルザ、貴方もセイル様に仇を討って貰いましたよね? しかもセイル様の騎士ならどちらに着くか解りますよね?」
「私は..」
何で私に振るんだ..
「私は、セイル殿の味方だ、だが危ない事は余りして欲しくない」
「あらっ、エルザさんはセイル様を信じてないのかな? 私はセイル様なら魔族如きに遅れなど取らないと信じていますがエルザさんは違うんですね!」
「私は信じている」
「可笑しいなぁ? 信じているなら危ないなんて言わないでしょうに..」
「そうだな..うん、そうだ」
正直どちらも正論だ、私には振らないで欲しい。
「だけど、セイルは勇者でも剣聖でもないのよ..死ぬ事だってあるわ!」
「確かにあるよ、だけど、人類最強のセイル様に、心配なんていらないと思います..そうよねスワニー」
「セイルは強いわ」
「ほらね?」
「人類最強って何よ、セイルはセイルはね..普通の男の子だわ!」
「剣聖も、勇者も、沢山の騎士も四天王には敵わなかった、勿論私もね..だけどセイル様は倒しました..確信しました、セイル様こそが賢者たる私が真に仕える方なのだとね」
アイルは凄い..あのユリアが言い負かさられている。
このまま見ていたいけど..後が怖い。
「皆、心配かけてごめん!僕が悪かった」
「セイル様が謝る事はありません、ユリアを除き此処に居る物は全員セイル様の物なのですから」
「その言い方、妙に引っかかるわね..私だけ仲間外れにする気なの?」
「そんな気はありませんよ! 私達は奴隷ですから、それこそ身を捧げるのが当たり前なのですよ、セイル様さえ良ければ夜の相手もするのが当たり前、最もセイル様程のお相手ならこちらからでも喜んでします..まぁユリアみたいなおこちゃまと違う関係なのです」
「おこちゃま! ふざけないで!」
「ねぇエルザ..貴方はどうなのかしら?」
「私はセイル殿が望むなら喜んでするな」
「スワニーはもう相手しているわ」
えっ、この鳥女..もう経験済みなの?
待って、先越されたの?
嘘だろう..
「「「セイル(殿)(様)どういう事(なのかしら)」」」
「待って話すから」
事細かに事情を話した。
「そう一線は越えてないのね」
「ですが、裸で、そうですか? それじゃ今夜は私が」
「添い寝か..そうだな、私もする事にしよう」
また更に揉めそうだ。
元の話に戻すとしよう。
「もう一度言うけど、もう危ない事はしないから安心して欲しい」
「約束するならもう良いわ..はぁ二人の時は良かったわ、ここはアウェイだから誰も味方がいないし..」
「本当にしないから機嫌なおして貰えないかな、頼むよ」
「それでセイル様は魔王を討つのですか? やるのなら賢者の私が」
「聖女の私が手伝うわ!」
「ユリア、私にかぶせないで下さい!」
「えっ戦わないよ? 勝てないもの」
「だけど、セイル様はスカルに勝ったじゃないですか?」
「アイルには申し訳ないが僕はそんなに強くない、多分、マモンと戦ったら秒殺だと思う、そんな僕が魔王軍と戦う何て自殺行為だよ」
「ならば、何で戦ったのですか?」
「アイルの為だよ..こうでもしないと夜泣きが止まらないかなと思って」
「私だけの為..」
「そうだよ..前から言っているじゃん、僕は勇者じゃない、此処にいる4人や友達が大事なだけだ..例え何万人死のうがどうでも良いんだ」
「勿体ない、英雄にでも成れるかも知れないのに..」
「そんなもの興味ないよ..英雄になれても、此処にいる誰かが欠ける未来なんて要らない..世界が魔族に飲まれようと此処の4人やファングたちが生きれる世界ならそれでいい..そう思っている」
「ありがとう、セイル様」
「どうしたんだアイル」
「私の為に、戦ってくれて、やはり私はアイルになって良かった...」
「それはどういう事?」
「だって、アイルって「愛してますセイル」の略ですから」
アイルの顔はほんのりと赤くなった。
「やっぱり、そうだったのね!、その名前変えてきなさい!」
「無理ですよ? もうギルドで登録しちゃいましたから」
「うぐぐぐ..アイルなんて大嫌いだわ」
「奇遇ですね私も同じです」
だが、これで口争いは終わった。
それは4人ともセイルがどう思っているか気が付いたから。
「そうだよ..前から言っているじゃん、僕は勇者じゃない、此処にいる4人や友達が大事なだけだ..例え何万人死のうがどうでも良いんだ」
「そんなもの興味ないよ..英雄になれても、此処にいる誰かが欠ける未来なんて要らない..世界が魔族に飲まれようと此処の4人やファングたちが生きれる世界ならそれでいい..そう思っている」
(セイルは天然すぎるのよ..何万人の命より世界より私が大切なのね..)
(世界より大切..これはセイル様のプロポーズなのでしょうか?)
(これで落ちない女がいる訳が無い..セイル殿..世界より大切なのか私は..)
(周りのメスも気がついたのかしら..セイルは元からそうだわ)
「どうかしたの?」
「「「「何でもない(わ)」」」」
無自覚とは怖い、そうセイルが気が付くのはその日の夜だった。
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