第31話 アイル②
勇者ルディウスが死んだ。
話したことはあるし、知り合いなんだから悲しいかどうか..と言えば..
そんなに悲しくはないな。
「お前可笑しいだろう?」そう言うかもしれないけど..本音だ。
だって、暫くしたら転生しているからね。
まぁ僕は魔王討伐の際の特典に「前世の記憶」を貰っているから前世の記憶がある。
多分、他の勇者はそんなの貰ってないから、記憶は無くなるだろうけど..
時間軸のズレで数十年後になるけど、赤ん坊からスタートだ。
まぁ勇者では無いのかも知れないけど、勇者になったもので転生しない事は無いから大丈夫だ。
剣聖も同じだ。
次の人生が約束されているんだから..悲しむ必要は無いだろう。
(次の人生は幸せに)
それだけ願ってやれば良いさ..
アイルに魔族の事について聞いてみた。
「こんな姿にされたんです..憎いです..だけど、もう関わりたくはありません」
「そうだな..もう忘れる事だ..これからは一緒に面白可笑しく過ごそう..嫌な事は全部忘れるくらいにな」
「そうですね、今は毎日が楽しいです..こんな幸せ今まで無かったですから、きっといつかは忘れるそう思うくらいに..」
「スカルか?」
「はい..この姿にされた時の恐怖が頭から離れません..ですが、何時かは忘れられると思います」
「マモンは?」
「私は薄情なんでしょうね...一対一で正々堂々と戦ったのだから、ルディウスの死を仕方ないと思ってしまいます。しかも最後に勇者は私たちを見捨てて逃げようとしました、そして私の仲間もです」
「仕方ないさ、怖かったんだろうな?」
「それでも、逃げて欲しくなかった..無理な話でしょうが勝って欲しかった..そうすれば私はこんな姿に成らなかった..死んだ者にそう思ってしまう私は..優しくないのでしょう」
ユリアに聞いたらアイルも凄い美少女だった..それが僕にとって此処までの美少女に見えるという事は「凄く醜い姿にされた」という事だ。
悪いが、アイルの美しさは他の三人の比ではない...「これ以上美しい女性は絶対に居ない」そう思える程だ。
という事は「これ以上醜い女はいない」そこまでにされてしまった..そういう事だろう。
「おかげで、アイルが傍にいてくれる、そう思ってしまう僕も酷い男なんだろうな」
「まったく、セイル様は可笑しな人ですね、昔の私ならいざ知らず..こんな..化け物女に傍に居て貰いたいなんて..頭が可笑しいんですか? 目が腐っているんですか!」
正解だ、とは言えないな。
また、嘘を重ねるしかないな...
「僕は酷い奴なんだよ..一人になるのが怖いんだ..君たちなら絶対に離れていかない、だから凄く大切に思っているそうなんだ」
「それはどういう事ですか? 解るように教えて下さい」
「僕にとって一番重要なのは「傍にいてくれて離れていかない事」なんだ、美しさは二の次だ、もし絶世の美女が居ても離れていく可能性のある人なら、他の人を選ぶ位にね」
(これって、普通じゃないですか? 好きな人に傍に居て欲しい..離れないで欲しい、当たり前のことだ)
「それって、遠回しに私に一生傍に居て欲しい..そういう事ですか?」
「そういう事だよ..好かれたいから優しくするし..楽しく一緒に過ごしたいから頑張っている..打算的だよね」
(それを打算なんて言うなら..打算的じゃない男なんて居ませんよ..というか、セイル様は、本気で私たちが好きなんだ..納得したわ、恋人みたいにじゃなくて本当に恋人のように思ってくれた、そういう事だ)
「他の方は知りませんが、そういう事言って知りませんよ? 私もうセイル様から離れませんよ!」
「手放す気は無いよ」
(凄く嬉しい反面、ユリアに殺意が沸きました..此処まで人の気持ちを壊してしまって良いのでしょうか? こんな美少年が「離れて行かない事が一番」そう思うくらいにユリアはセイル様に孤独と絶望を植え付けたのですね? ファイヤーボールで燃やしてやろうかな..まぁしませんが)
「だったらもう死ぬまで一緒ですね!」
「ありがとう」
(これは三人にも教えてあげません、本当はセイル様が私たちに異性として恋しているなんて..特にユリアには黙っておきましょう)
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