第29話 話し合い

「それで又、奴隷を買ってきたのね...」


「うん、そうなんだ、ミノの串焼きを買ってきたから、食べながら話そう」



「スワニーは肉が貰えるなら問題無いわ」


ふぅスワニーは楽で良いな、大概の事はご飯で済ませられるからな。



「私はセイル殿のやる事に文句は無い..主に文句を言う騎士等居ないからな」



「そうか助かるよ」


エルザは騎士の考えが強いから比較的僕のやる事に文句は言わない。


問題はユリアだ。



「まぁ良いわ、美少女でも買ってきたなら、泣きが入る位文句を言うけど、どう見ても違うわね」



僕にとっては究極の美少女だとは言わない。


「そうだね」


「それで彼女はどういう人なの?」


「それが寝ている状態で引き取って来たから解らないんだ」



「なに? それ、奴隷にするなら身元位は..あっごめん!」


(まだ、私の事が尾を引いているのかな...)



「何を思い出したのか何となく解かるけど、それは気にしなくて良いよ...ただ、僕は」



「贅沢で寂しがりや何だろう? セイル殿は、それじゃ仕方ないな」








暫く、彼女が起きるのを待った。


余程辛い事があったのだろう、彼女は泣いていた。



「ここは..私はいったい、そうだ私は..ひぃあれっ魔族じゃない..」


「酷いわね、貴方は私以上の化け物じゃない!」


「化け物? 賢者たる私が化け物?..えっ..鏡、鏡、鏡を頂戴..お願いお願いよ!」



「そら鏡だ、鏡がどうしたんだ!」



嘘、これが私なの! 本当だった..本当だったんだわ..あははははははぁぁ


こんなの私の顔じゃない..こんな醜いなんて..何でよ、何で..こんな思いしなくちゃいけないのよ..


本当に、本当に改造されちゃったんだ、魔族だって顔を背けるようなこの姿..夢じゃなかったんだ..


こんな姿でどうやって生きて行けばいいのよ..私より醜い者なんて、もう何処にも居ないわよ..


あははははっ駄目だ私..人生終わっているわ。



「おい、大丈夫か?」


私は賢者、賢者..落ち着かなくちゃ。


「貴方達はいったい誰なんですか?」



「私はセイル殿のパーティーでエルザと言う..」



「私はどうして此処にいるんですか?」



「それは僕が話す」



僕はこれまでの経緯を解りやすく話した。



「ははははっ...奴隷ですか..奴隷、賢者迄なった私が、醜くなって奴隷なんて、なんてあははははっそうなのね..」


「賢者? 貴方賢者なの?」


「そうですよ! この姿じゃ誰も信じないでしょうけどね!」


「という事は貴方がルビナスなのね」


「何で、私の..まぁ賢者だから知っていて当たり前か」


「それもあるけど、もしかしたら仲間になる相手だったからね」



「まさか? 私は賢者なのよ?」


「元でしょう? 私だって一応は元聖女だわ」



「嘘でしょう! ユリア聖女なら死んだ筈ではないですか」


「生きているわ! まぁこの通り醜くなったけどね」



「貴方がいれば、こんな事には..」



「関係ないわ..私は教会を追い出された身なのですからね」



「ですが、まぁ言っても仕方ない事ですね..それでこの仲間は何の仲間ですか? 見世物小屋ですか?」



「違うよ..僕たちは冒険者パーティーだ..しかし、賢者だったんだね..それでどうしたい?」


「どうしたいとは..私はもう貴方の奴隷じゃないですか?」


「いや、もし仲間の所に帰りたいというのなら解放するよ」



「無理だわ..この醜い姿では何処でも相手はしてくれない..死にたい位だわ..まぁ貴方がどうしてこんな化け物を奴隷にしたのか知りませんが」



「それは仲間にしたいからだよ」



「仲間?..誰がこんな私を仲間にしたいの? ねぇ..私化け物よ..魔族やモンスターすらまだ私に比べたら真面だわ」


「そうね、言いたいのはそれだけ? 確かに貴方は群を抜いて酷いけど、此処に容姿に恵まれた者など居ないわよ」



私は、周りを見た。



どう見てもハーピーにしか見えない鳥人間。


老婆の顔を潰したような無駄にスタイルだけは良い女。


聖女と名乗っている、顔が溶けた女。



「確かに、皆が酷い容姿だわ」



「あんたもね!」



だけど、何でこの少年はこんな化け物女みたいな者ばかり集めているのか解らない..


見れば見るほど綺麗だ、賢者の時の私だって彼から告白でもされたら拒み切る自信はない..



「それは解ったけど、その、なんでご主人様は..こんな仲間で冒険者をしているのでしょうか?」



「それはね」



「セイルは良いから、少し外に出ていてくれる?」



「何で?」



「女の子同士の話し合いだから..良いよね」


ユリアが凍った笑顔の時は逆らったら怖い。



「解った、それじゃちょっとギルドに顔を出してくる」



「ありがとう」











「態々、ご主人様を追いだしてまでの話なの?」



「まぁね..話すとちょっとセイルにとって嫌な話になるから..」


「そう?」



私は自分の話からセイルの考えについて話した。



「成程ね..心に傷を負って..ずっと一緒に居てくれるそういう仲間を探していた訳だ」


「そうよ」



「確かに、こんな姿だもの、行く所は無いし、あんだけの美少年がそばに居て大切にしてくれるなら居たいよ..まぁそれ以前に、彼程の美形なら賢者の時だって充分付き合いたいと思うわ」



「そうだろう、私もそう思うぞ」


「貴方は?」


「姫騎士だった..エルザという」


「嘘、姫騎士?..なんで此処にいるのよ」


「わけあってな」



「それはそうと、ユリア、貴方最低ね..だけどそのおかげで、今の私にも居場所がある訳ね」


「それは自覚があるよ..自分も含めて周りがこんななんだからさ..セイルなら普通に綺麗な彼女を作って幸せになれるのに..私が可笑しくしちゃったのだから」



「そうね..まぁ考えても仕方ないわ..だけど、貴方達は大丈夫なの?」


「何が?」


「彼、他に女が居て、浮気したりしないわけ」


「無いな」


「無いね」


「セイルはスワニーが大好きだからね」



「まぁ、私は奴隷だし、行く所もないからお世話になるわ」



「それじゃ、セイルの所に行こうか?」


「そうね..うん、ちゃんと挨拶しないと」



しかし、凄い絵面だな..正直四天王より凄いわね..自分も含んでモンスターの小隊みたいだわ。




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